鉄道マニアから子供まで幅広い人気を誇る名鉄パノラマカー。根強い人気の秘密を確かめるため、列車に乗車してみた。初代パノラマカー7000系はことし12月に通常運用から引退することが明らかになっている。年季の入った車両で景色を楽しめるのも残りわずかなのだ。
「パノラマにこだわる。そんな一人旅もまた一興かな」。パノラマカーというだけに、一番先頭でなければその醍醐味は半減。今回は、時刻表を片手に必死に“最前列”にこだわって旅してみた。展望席は列車の先頭から180度外の景色が見渡せる。しかし指定席ではなく、席に座るにはほかの一般座席同様に早い者勝ち。そのため、すぐ後ろには座席の空き待ちが出るほどだ。
まずは、一番早い朝6時42分東岡崎発犬山行きのパノラマカーをねらう。そのため、5時47分名鉄名古屋を東岡崎に向け準急で出発。これだけ朝が早いなら最前列もらくらくゲット…とはいかなかった。すでに数人が並んでいた! 予想外の競争率に動揺しつつ、最前列が空かないまま終点の犬山に8時52分到着。こんどは名鉄岐阜11時13分発須ケ口行きのパノラマカーをねらい、同駅まで移動するが…。
またしても座れなかった。しかしあきらめるのは早い。この電車は終点の須ヶ口で折り返し、元の名鉄岐阜に戻る。到着直前に車内を歩いて最後尾(反対側)の展望車へ移動しておけば、折り返すときは先頭になっているはずだ。
この作戦が見事的中し、須ヶ口12時9分発の最前列をゲット! もっとも、上には上がいる。最初からあえて一番後ろの席に座り続け、そのまま最前列をゲットする猛者もいたのだ。ちなみに、展望車の窓の上には成田山のお守りが飾ってあった。
名鉄岐阜から先ほど通った犬山に普通電車で戻り、途中下車。天気のいい日は名古屋駅のセントラルタワーズまで見えるという犬山城天守閣からの“パノラマ”を楽しんだ。近くのレストラン「ことぶき家」で食べた、アユのほろ苦さと独特の甘味が絶妙な味わいのある鮎釜めしもうまい。
帰途、犬山駅発のパノラマカーで2度目の最前列。ただし、夜のため絶景というわけには行かなかったが…。乗ったまま名古屋を通り過ぎ、21時29分東岡崎に到着。同42分発の折り返しパノラマカーで名鉄名古屋に帰ってきた。ここでも最前列には座れず。時刻は23時1分。早朝から始まった長い旅が終わった。
最前列を取れたのはこれだけ乗って、たったの2回。そのなかで、一番の絶景は名鉄岐阜駅〜須ケ口駅(写真)。久しぶりに見る木曽川などの大自然に癒された。東岡崎駅〜犬山駅間で拝める布袋大仏も一見の価値あり。実はこの大仏、1954年に江南市在住の個人が制作したものなのだ。しかも、高さは18mと奈良の東大寺の大仏よりも2m高い。朝から晩までパノラマにこだわった一日だったが、雄大な景色に包まれ、気のせいか少しだけ大きな人間になった気がする。
ちなみに使用したのは「まる乗り1DAYフリーきっぷ」(3000円)。名鉄電車全線(モノレール線を含む)が1日乗車でき、10:00〜16:00は特別車(座席指定不可)も乗れる。11月末は0系新幹線もラストラン。昭和の名車乗り納めの旅に出かけることをおすすめする。【東海ウォーカー/原】
※パノラマカーは検査等の事情により、時刻表どおりに運行しない場合もあります