SNSを通じて数多くの反響を呼んできたデジタルネイティブ世代のアーティスト、田中かえの初個展「かえちゃんのチョコレートボックス」が、阿佐ヶ谷のTAV GALLERYにて開催される。期間は3月3日(土)から18日(日)まで。
田中かえは幼少期に読んだ手塚治虫の影響により、アーティスト活動を開始した。多摩美術大学を卒業後、これが初の本格的な個展となる。インターネットを活動の場としている田中かえについて、TAV GALLERYのスタッフは以下のように語っている。
「インターネットが持たらす問題としてあるのが、コンテンツが作り出す物語からは、対人関係から作られる物語が排除される事だと言える。それが、かえの生み出すキャラクターたちの表情が無機質にパターン化された理由の一つであり、飄々と立つ手足が太く描かれた彼女たちは、かえにとっての "実在感" の追求であり、少女を経て自立してゆく、2010年代とその先を生きる女性たちの象徴記号=キャラクターである。
キャラクターを主体とするかえの作品の幅は広く、様々なコンテクストが登場する。"目や顔が歪んだキャラクターシリーズ" は、かえの関係性に置いて嫌悪感や恐怖感を得た対象である当事者たちの顔を、シリコンで立体に起こし、鉄球などの重りで思念を込めた "制裁" を下した後、ランダムに伸ばした表情をモチーフとする。
"妖怪たちがキャラクターを囲うシリーズ" は、長らく共に時間を過ごしてきたペットの死から着想を得たという。時折登場する彼らは、従来の妖怪とは反転し、"モノノ怪" に反した『ヒトノ怪』として、キャラクターたち の側に寄り添っては、無機質な表情で慰労してゆく。これらのコンテクストを踏まえ、かえは自身や女性をモチーフとしたキャラクター生成と恐怖との関係を図りみるアーティストであるといえる。
初の個展となる『かえちゃんのチョコレートボックス』は、かえの今後の展望にあたって、人間の機微や感情をトレースする為の必要なプロセスとなる。本展覧会ではキャンバスを支持体とした幽霊画を中心に、和紙を支持体とした画家・あけたらしろめとのコラボ ワークによる5mの百鬼夜行(妖怪たちの行進)など、新作、過去作品を含めた計50点程の作品が出展される。」
新しい世代のアートを鑑賞してみては。
末次延蔵