1人の男の、0才から99才までをつづった一大叙事詩「99才まで生きたあかんぼう」。年齢、性別、人種、宗教を超え、百年のいのちの輝きを原作・脚本・演出を手がけた辻仁成が描く、舞台「99才まで生きたあかんぼう」。3月20日(火)、福岡市民会館にて行われる本作について、辻仁成に話を聞いた。
原作小説は見開きで一年の出来事が描かれている。これが0才から99才まで約200Pに渡り一人の人生を綴った作品。普通の小説とは違う書き方について「自分の年齢から読み始めることができる本を作ってみたいという思いがずっとありました。30歳の人が30歳ページから、40歳の人が40歳のページから読み始められる本って、どういう形がいいんだろうと考えた時に、見開きで0歳から1歳…と始まって99歳までだったら、99×2が約200Pが、一冊の単行本のサイズになる。それで99歳にしたんです(笑)」。まさかの企画からのスタートだったという。
また辻仁成は、映画監督としても知られており、数々の受賞歴もある。この小説を映画ではなく演劇というメディアを選んだ理由を尋ねると「この物語を舞台上で動かしてみたいと思ったのがきっかけです。演劇は限られた空間の中で行われるライブエンターテイメントなので、演者の息づかいが観客の中に刻まれるし、観る側にインパクトを与えてくれる。こんな風に人生というのは流れているんだよ、そして観終わった方が外に出たときに、あ、明日頑張ろうと思えるような、そういう作品を若い役者たちで演じてみたいなと思いました」。
本作の語り部は“神様”というのも、興味をそそるひとつだが、その理由を尋ねると「僕は本当に波瀾万丈な人生を生きてきて、しかも小説家、ミュージシャン、映画監督、演出家、色んなことをやりながら、その度に賞を頂いたり、批判されたりもありました。人生自体も山あり谷ありの連続でした。で、気がつくと今息子と2人でパリに住んでいて、気がつくとお弁当を毎日作っていて、気がつくと遠くの空を見上げながら、俺の人生なんだったんだろう?って思うんです(笑)」と、まず自身の人生を振り返り、さらに「僕は宗教は持っていませんが、でも天というのはあると思うんです。天が見ているということを人間は感じているはずなんですよ。だから悪いことをしようとすると、何か見られているような感じがするでしょう。僕みたいに無宗教でも、これは親に申し訳ないとか感じてしまう。そういう天から見られている感じを、天の側から、この作品では解りやすく神様と言っていますけど、神様が見ているドラマにしたらどうかなと」小説家らしいアイディアの源を教えてくれた。
最後に福岡公演を楽しみにしているファンに向けてメッセージをくれた。「原作は読んで来なくても大丈夫。今回のキャストたちは弾ける力がすごくてエネルギーに溢れています。そういうエネルギーは年代を問わず元気にしてくれるんです。フレッシュなキャストが揃って、めくるめく人生を描きます。今生きている人生は、あなたのものだよ、と表現している作品です。彼らのエネルギーとともに、物語が豊かになっています。ぜひ楽しんで欲しいですね」。
舞台「99才まで生きたあかんぼう」は、3月20日(火)福岡市民会館にて19時よりスタート。チケットは絶賛発売中なので、要チェックだ。
文乃