博多は第2の故郷!二代目松本白鸚・十代目松本幸四郎「六月博多座大歌舞伎」会見レポート

九州ウォーカー

2018年6月、博多座(福岡市博多区)で上演予定の「六月博多座大歌舞伎」は、二代目松本白鸚(はくおう)と十代目松本幸四郎による襲名披露公演だ。3月上旬、来福した二人に襲名への思いと博多座への意気込みを聞いた。

歌舞伎座、御園座に続き、6月に博多座で襲名披露を行う二代目松本白鸚と十代目松本幸四郎


「久しぶりに博多にうかがえて、うれしいようなドキドキするようなホッとするような感じでございます。1、2月東京・歌舞伎座で、私と息子と孫の3人で襲名をさせていただき、私は松本幸四郎という名前から二代目松本白鸚という名前になりました。博多座で息子の十代目松本幸四郎とともに襲名興行ができようなんて考えておりませんでした。自分としては奇跡のような感じがいたします」と松本白鸚丈。

続いて松本幸四郎丈は「歌舞伎座で十代目松本幸四郎を襲名し、父、倅とともに三代同時に襲名披露興行をさせていただきました。母が博多出身で、私の体の半分は博多できてございまして、博多は私にとりまして第2の故郷だと思っております。私は博多のお菓子が好きです。鶴乃子、松露饅頭、鶏卵素麺、今は鈴懸さんのいちご大福がおいしい時期…それで育ち、血となり肉となり、この体になっております」とユーモアを交えて挨拶をした。

【写真を見る】『ラ・マンチャの男』以来6年ぶり、歌舞伎は『加賀鳶』以来7年ぶりの博多座出演となる松本白鸚丈


今回の襲名は親から子、子から孫へと名前を譲り、譲り受けることになった。これについて白鸚丈に聞くと「かつて染五郎が『伽羅先代萩』で政岡を演っていたときに、見事だと舌を巻きました。そのとき染五郎という器から芸があふれ出ていると感じました。そこで器を幸四郎に変えれば、新たに十代目幸四郎としての芸を詰め込めるのではないかと思いました」。

6月の博多座への出演は叶わないが、松本金太郎改め八代目市川染五郎については「息子の染五郎は背も大きいし、声変わりもして子役はもうできません。大人の役ができるようになるまで舞台には立てないとは思いますが、そんなときに襲名の機会をいただいたのは本人にとっていいスタートだと思います」と幸四郎丈。1日でも早く歌舞伎の戦力になってほしいと期待を込めた。

昼の部で幸四郎丈は『伊達の十役』を勤める。スーパー歌舞伎の生みの親・市川猿翁(三代目猿之助)が復活させた、立ち回りあり、宙乗りありの歌舞伎味もしっかりある大スペクタル劇だ。夜の部では「毎日、鏡獅子を踊っていたいと思えるぐらい好き」という舞踊の大曲『春興鏡獅子』を踊る。

「振り返ったときに大変だったと思えるぐらい、大変なことを自ら探して積極的に大変にしようというのが襲名披露公演のテーマです。博多座でもその思いで勤めたい」


白鸚丈は夜の部の『魚屋宗五郎』を演じる。「襲名であることも、高麗屋の芸を披露することも大事だけれど、やはり一番大事なのはお客様に喜んでいただける演目であることです。『魚屋宗五郎』は大変面白い芝居でございます。…一見、簡単そうに見えるのですよ、『伊達の十役』や『春興鏡獅子』に比べるとね。ところがこれがそうはできない。(独特の)世話物の“間”がね。『伊達の十役』何するものぞ、『春興鏡獅子』何するものぞ、と。まあご覧なってください。『魚屋宗五郎』が一番面白かったと思わせますから(笑) 」。

役者は子や孫、祖父であってもライバルだと語る白鸚丈。一方、幸四郎丈から見た白鸚丈とは。「父は挑戦者という感じがします。私の芝居を見て喜んでくれるんですけど、喜び方がだんだんしつこくなってくる。悔しがっているように聞こえてくるんですね。(そういうところがあって)ともすると他人の椅子に座りかねない、そんなチャレンジャー的なところを感じます」。

これからも父・白鸚丈の背中を追い続けるという幸四郎丈。『伊達の十役』では特別に、三浦屋女房を三浦屋亭主に変え、白鸚丈が演じる。共演が楽しみでならない。

「いい舞台をお目にかけたいと思います」と白鸚丈


他に夜の部は片岡仁左衛門らが出演する『俊寛』もあり、襲名披露らしい華やかで見ごたえのある演目が並ぶ。

「六月博多座大歌舞伎」は6月2日(土)から26日(火)まで。チケット一般発売は4月14日(土)からスタート。5月30日(水)には恒例の船乗り込みも行われる。初日を前に足を運べばさらに歌舞伎熱が上がること、間違いなし!

【九州ウォーカー編集部/取材・文=山本陽子】

山本陽子

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