映画『坂道のアポロン』公開日の3月10日(土)、福岡・Tジョイ博多にて舞台挨拶が行われた。主演の知念侑李、共演の中川大志、小松菜奈そして三木孝浩監督が登壇し、まずは初日を迎えた思いから語った。
知念は「初日から福岡で舞台挨拶ができてとてもうれしく思っています。観てもらったということで……映画、楽しかったと?」と突然の九州弁(?)発言。これに対して中川から「あれ?映画の中で方言は一言も……」と突っ込みが入ると、「(僕の役は)標準語しか喋ってないので、だからこそ使いたかった」と知念。会場は一気になごやかなムードに包まれた。
本作は昭和30年代の長崎・佐世保を舞台に、転校生の西見薫(知念侑李)が、バンカラな少年・川渕千太郎(中川大志)と幼なじみの迎律子(小松菜奈)と出会い、ジャズを通じて心を通わせていく青春ストーリーだ。
「この映画はもう、九州あっての映画です」と中川。撮影のメインは佐世保だが、西見薫の家は柳川の邸宅を借りて撮影。また商店街は大分の豊後高田市で撮った。劇中に出てくるピアノは福岡で探したものが多かったそうだ。
それぞれに印象に残ったシーンは?と聞かれると「僕は最後の律っちゃん(小松菜奈)と二人で教会まで歩くシーンです」と知念。途中、律子が呼び止めるがその位置を「ちょっとボコっと(高く)なったところで呼び止めてもらってました」とあらかじめ小松にお願いをしていたのだそうだ。「もう一回見ていただいたら、もしかしたらわかるかも知れないです(笑)」。
中川はジャズバーのシーンを挙げた。「外国のエキストラさんと(当時流行っていた)ハンドスピナーを回しながら盛り上がって、あの一体感が生まれました。ハンドスピナーのおかげですね」。小松は「糸電話のシーン。子役の幸ちゃんがかわいくて。対する知念くんの答え方、優しさにも癒されました」と述べた。
その小松は方言で少し苦労したようで『そいやったら引き受けんかったらよかったとに』の一言が大変だったそうだ。「『よかったとに』が言えなかった。よかったとに(⤴︎)とかよかったとに(⤵︎)、とか。だんだんわかんなくなってくるんだよね」と監督。
方言のセリフはなかった知念だが、授業中に英語の教科書を読み上げるシーンで苦心していたことを中川から指摘されると一瞬、がっくりといった様子で座り込みながら、「あそこは大変でした。教科書を読みながら千太郎が声かけてくるタイミングにあわせてセリフも言わなきゃいけない。緊張しすぎて教科書がボロボロになりました」と裏話を披露した。
最後に「とても温かい作品になっております。みなさん、また大切な人と観にきていただければと思います」と知念がメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。
【取材・文=山本陽子、撮影=長崎辰一】
山本陽子