右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験を漫画として発信してきたキクチさん(
@kkc_ayn
)さん。母親の介護と看取りを描いたコミックエッセイ『20代、親を看取る。』は大きな反響を呼び、2023年には書籍化された。そんなキクチさんが描く『父が全裸で倒れてた。』は、母を見送って約2年後、今度は父の介護と向き合うことになった自身の記録である。今回は、父の容体に明るい兆しが見え始める一方で、キクチさん自身の体に異変が訪れたエピソードを紹介する。
父からの言葉に救われた日
父の保険手続きを進めるためには、本人によるサインが必要だった。ICUの個室へ移ったと聞いていたキクチさんは、意思疎通すら難しい状態かもしれないと覚悟していたという。ところが予想に反し、父はしっかりとサインを書いた。それだけではない。感謝や労いの言葉まで伝えてくれたのだ。
「ICUの個室に移ったことということは、以前より何かしら状態が悪くなっているということ。なのでこの日は保険屋さんに行ったことだけ報告して、サインはまた今度でいいやと思っていました。ですが私の予想はハズレて、ヘロヘロながらもサインを書き、さらには思いもかけず感謝と労いの言葉ももらって、とても心が高揚しました。つらい日々もありましたが、粛々と頑張り続けて良かったなと思えました」
先の見えない毎日の中で交わされた短い言葉は、キクチさんの心を大きく支えるものになった。
支えてくれた人たちの存在
その後も「限度額適用認定証」の申請をはじめ、さまざまな手続きを進めていくキクチさん。しかし、介護や入院に伴う制度は複雑で、初めて知ることばかりだったという。
「父が倒れてあらゆる手続きをする度に『なんて自分は無知なんだろう』と、ありありと実感しました。ですがその度にたくさんの人に助けていただいています」相談に乗ってくれた寺院、支えてくれた夫、保険会社の担当者、父の勤務先の年金窓口。さらに知人からは高齢者向け住宅についての話も聞くことができた。
「備えられたら安心ですが、全てを備えることは難しい。だからこそ、時には人のつながりや優しさに頼り、感謝することが大事だと改めて感じました」介護は家族だけで抱え込むものではない。そんな実感がにじむ言葉である。
ようやく見えた回復の兆し
そんな中、主治医からうれしい報告が届く。「抗がん剤が効いている」「一般病棟に戻れる」不安な知らせばかりが続いていた中で聞いた希望の言葉だった。
キクチさんは久しぶりに心から安堵したという。大好きなインドカレーを食べることもでき、「このままよい年末を迎えられるかもしれない」と感じていた。
今度は自分の体が悲鳴を上げた!?
しかし、張り詰めていた緊張の糸が切れたのだろうか。父の容体が好転し始めた矢先、今度はキクチさん自身がインフルエンザに罹患してしまう。
「久しぶりに良い経過報告で、本当に嬉しかったです。大好きなインドカレーも食べることができ、良い気持ちで年末を迎えられると思っていました。そんな時にまさかのインフルエンザ。おそらく毎日病院に行っていたので、多くの人の菌に触れていたことと、疲れと安堵から免疫力が崩壊したのでしょう」さらに当時は能登半島地震も発生し、心身ともに大きな負担を抱えることになった。
父の体調が回復へ向かう一方で、自身の体は限界を迎えていた。介護を続ける人がつい後回しにしてしまう“自分自身のケア”の大切さも伝わってくるエピソードだ。
■取材協力:キクチ(@kkc_ayn)
※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。
製品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。