大阪松竹座「ワンピース」観劇ルポ、右近ルフィ全力投球!

関西ウォーカー

WEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.50をお届けします。

4月1日(日)、初日開演前にロビーで行われた囲み会見より。左から中村隼人(サンジ)、 尾上右近(サディちゃん)、市川猿之助(ルフィ)、坂東巳之助(ゾロ)、坂東新悟(ナミ)


スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『ワンピース』が、2年ぶりに大阪松竹座で開幕した。昨年秋、東京公演で左腕を骨折した市川猿之助も元気に復活だ。猿之助休演の約2か月、若手公演“麦わらの挑戦”でルフィとハンコックを演じた尾上右近が見事に代役を果たした。初日の会見では、サンジ、イナズマ、マルコを演じる中村隼人や、東京公演から『ワンピース』に初参加し、ナミ、サンダーソニア、サディちゃんを演じる坂東新悟は「立派に船長を勤めてくれた」と口々に。

今回、その右近が昼公演、猿之助は夜公演とWキャストでルフィとハンコックを演じる。猿之助は「今回は代役でもなく、若手公演という守りもない。全部責任を負って、どうなるか楽しみ」と期待する。松竹座では日替わりで4パターンの配役だ。ゾロ、ボン・クレー、スクアードと2015年の初演から不変の3役で「周りの人が変わってくれると気分が変わる、新たな気持ちで楽しみたい」と漫画「ONE PIECE」ファンの坂東巳之助。また、松竹座公演からミュージカル界で活躍中の下村 青が初参加、日替わりでイワンコフ、全公演でブルックを演じる。

今回初めて市川猿之助とWキャストでルフィを演じる尾上右近。3月、大阪の取材会にて


先月の取材会で、「(昨秋の東京公演は)お客様に楽しんでいただくことを絶対条件として、無心でただひたすらに、という感じでした。体力的にもギリギリで1日1日をやりきるという日々の連続で。今回は、あの2か月を乗り越えた情熱はそのままに、また新たな気持ちで取り組んでいきたい」と語っていた尾上右近。今回の再演では是非とも彼のルフィを観ようと、開幕2日目の昼の部を観劇した。

桜吹雪舞う晴天の日。多くの外国人旅行者が訪れる道頓堀で、『ワンピース』の麦わらの一味のイラストが飾られた大阪松竹座の劇場前。観客はもちろん、「Oh!」と言いつつ写真を撮る通りすがりの外国の人たちも。さすが、3億5000万部超えの世界的大ヒット漫画。い~や、漫画を知らなくても大丈夫。存分に楽しめる!

【物語】

「海賊王に、俺は、なる!」と言うルフィと仲間の“麦わらの一味”。ひとつなぎの大秘宝ワンピースを探す大いなる航海を続けるが、海軍との戦いで散りぢりに。ルフィは兄エースの処刑宣告の知らせを聞き、海底監獄へ救出に向かう。が、エースは海軍本部へ移送された後。海軍本部を舞台に海賊と海軍の壮絶な決戦が始まる!

超ヒット漫画「ONE PIECE」の大人気エピソード“頂上戦争編”。その世界観をそのままに、市川猿之助はスーパー歌舞伎の手法を駆使して一大歌舞伎エンターテインメントに仕立て上げた。今回はLED映像などの最新技術を用いた新演出で、よりダイナミックにパワーアップ。上演時間は、堂々の約4時間だ。物語を追いかけながら、その見どころを観劇ルポで紹介。

【Cパターン 配役】

ルフィ・ハンコック:尾上右近 イワンコフ:下村 青 サディちゃん:坂東新悟

マルコ:中村隼人 シャンクス:市川猿之助 

【1幕(約50分) 見どころ】

劇場に入ると、舞台の幕前にルフィの人形が迎えてくれる。ルフィたちのそれまでの物語に続き、開幕。シャボンディ諸島の奴隷市場。捕らわれた仲間を助けるべく、映像でルフィの長~く伸びた手が暴れ回る。そう、ルフィは悪魔の実・ゴムゴムの実を食べてゴムの身体になった少年だから。そのルフィを先頭に、麦わらの一味9人が名乗りの後、勢ぞろいして見得。『白浪五人男』風にカッコ良くキメて、拍手~! 海軍との戦いで仲間はみな吹っ飛ばされ、ルフィは女ケ島アマゾン・リリーへ。島の女帝ハンコックが花道からゴージャスに登場。右近、ルフィとハンコックの2役を早替わり! 宴会で披露するゴムゴムの伸びる腕ダンス。右近、踊ります。振付のアイデアに笑いながら「そう、来るかぁ~!」。最後はハンコックの愛が巨大な炎と化し、舞台空間に真っ赤な衣裳がワア~ッと広がる! 昔、紅白歌合戦で見たことあったなと思った瞬間、舞台左右からキャノン砲で金テープがバシュッ! 見得切って、幕。すげ~、ド派手~!

休憩:25分

【2幕(約60分) 見どころ】

大監獄インペルダウン。囚われたエースをピンクの鞭で拷問するサディちゃん、イケてます。侵入したルフィはオカマのボン・クレーと再会、看守と戦いながらエースを探すうち絶体絶命の危機に。その時、革命戦士イナズマと共に革命軍の大幹部イワンコフが現れ、ニューカマーランドへかくまい、ルフィ復活! 

そしてニューカマーの人々の華やかなダンスレビューが始まる。ここからはもう下村 青ショー。すごいメイクで歌い、踊り、弾けまくる。劇団四季時代をほうふつとさせる『オペラ座の怪人』風音楽とシャンデリアまで登場し、しかもちゃんと壊れるし! え~、ここまでやる~!?(驚&笑)の下村オンリー・バージョン。私の席の斜め後ろで、作・演出の横内謙介さんも大笑い。この日が下村イワンコフ・ショーの世界初演だった。LED照明で派手さ倍増、生身ではラインダンスも。笑っているのは今のうち。ここから2幕最後までは、怒涛の快進撃だ。

赤幕が振り落されると階段状の大滝の装置が出現。客席「わぁ~!」。10トンもの本水の中、壮絶な大立廻りが繰り広げられる。

「松竹座はコンパクトな分、観やすい。演舞場では前から5、6列目まで、ここは真ん中以降でもものすごい水しぶきが来た。とても迫力があるよ」(猿之助)。

ザーザーと音をたて水煙で出演者が見えなくなるほどの滝。1階席後方まで漂う水の匂い。客席前方の人は急いでビニール袋を着用。ドシャー! バシャー! 附け打ち(歌舞伎で使われる効果音)がパパンパンパン! と、これでもか!と鳴り響く。本水での立廻りの後、ボン・クレーは花道をオカマ六方で引っ込む。“六方”とは、『勧進帳』の幕切れに弁慶の引っ込みで使われる歌舞伎の手法だ。

そして“ファーファータイム”に突入。波乗り姿で宙乗りし、客席を舞うルフィ。荒波を越えてエース救出へ。音楽は北川悠仁が手掛けた「TETOTE」。今回は、ゆずの2人が歌っている。曲が流れた瞬間、観客が立ち上がる。手には新アイテムのスーパータンバリン。そして手拍子と大合唱。劇場全体、大盛り上がり! 3階まで飛んで行くルフィを見上げ、影を追う。~To be continued~

休憩:30分

【3幕(約80分) 見どころ】

 海軍本部マリンフォード広場。舞台中央に盆が回り、白ひげ海賊団がババ~ンと登場。ルフィとエースは再会を果たすが、海賊VS海軍の戦いは一進一退。3階後方から不死鳥姿で花道へ舞い降りる、白ひげ海賊団一番隊隊長マルコの逆宙乗り! 空中で宙返りし、斜め宙乗りで飛び回る。さらに、真っ赤に燃える圧巻のマグマの戦闘シーン。エースはルフィを守って死ぬ。

そこへ大海賊船団を率い、赤髪のシャンクスが登場、休戦に導く。めっちゃカッコよく現れた猿之助に大拍手。

戦いで疲弊し生きる気力を無くしたルフィは、アマゾン・リリーにいた。ハンコックらの必死の想いに応え、再び立ち上がるルフィ。ここも2役早替わりで。そしてラストシーン。サウザンド・サニー号が出現! 決めセリフ「海賊王に、俺は、なる!」。船の上で麦わらの一味と共に見得。幕。カーテンコールへ。

歌舞伎ファンだろう着物姿のオバ様から、若い女性、そして子供たちまで。観客席の雰囲気は通常の歌舞伎とは違う。劇団☆新感線の観客に近い、と言うか…。そして、ルポをこれだけ書いても生の舞台の魅力は伝えきれない。装置や衣裳、照明の豪華さ、花道を高速バック転で引っ込む技のすごさ、あの大滝の中で立廻りを見せるパワーも。歌舞伎の技術を詰め込み、舞台機構を駆使した演出で作り上げた「ワンピース歌舞伎」。まさに、歌舞伎を超え、一大エンターテインメントに仕立て上げたスーパー歌舞伎だ。さらに今回、改めて思った。前を向いて生きること、友情を大事にすること、夢を持ち続けること…『ワンピース』には今の私たちに響くいいセリフが多い。漫画「ONE PIECE」と歌舞伎の華麗なるマリッジは、間違いなくスーパー歌舞伎Ⅱの代表作となった。若い漫画ファンにとって観劇料金は高いかも。が約4時間、これほど内容濃く、楽しませてもらえる舞台はそうそうない。4パターン全部観たい! グッズも大人買いしたい!

【お楽しみ情報】

① イヤホンガイド(700円) ※税込 以下同

俳優・谷原章介がスペシャル解説。あの、ええ声で。登場キャラクターたちの背景や能力など、漫画を知らない人にとってはありがたく、おもしろさ倍増。また、2回の休憩時間中もイヤホンは外さないこと! “いろはにワンピース”と題し、アニメの声優(モンキー・D・ルフィ:田中真弓 ロロノア・ゾロ:中井和哉 サンジ:平田広明)たちによる、キャラクターの名セリフ、そして舞台の感想を素顔の声で。これは、レアもんです! ほかに麦わらの仲間や海の航路グランドラインの解説など、お弁当を食べながら聞いて楽しみたい。

② 公式グッズ34種類も販売!

チケットファイル(300円)から歌舞伎絵掛軸(32,000円)まで、たくさんあるのでグッズ購入申込書を記入してから買う。オススメはパンフレット(1800円)はもちろん、2幕で使う「スーパータンバリン」(900円)。東京ではイエロー1色だけだったのが、今回はブルーとピンクが増え3色に。原作の尾田栄一郎直筆の商品名と、描き下ろしイラストがプリントされ、劇場限定で販売。これがあれば、より一層気分がアガる!

③ ゆずのニューアルバムも発売中

4月4日(水)にリリースされたばかりの、ゆずのニューアルバム『BIG YELL』も劇場ロビーで好評発売中だ(3080円)。北川悠仁と市川猿之助の絆が生んだ、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の主題歌「TETOTE」(YZ ver.)も収録された全13曲。お土産に買って帰れば、いつでも生の舞台の興奮が甦る!

演劇ライター・はーこ

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