好きな人の何気ない一言で舞い上がり、少しそっけないだけで「やっぱり脈なし?」と落ち込む。そんな片思いの“あるある”を、驚くほど生々しく描いた「付き合えなくていいのに」。スマートフォン・PC向けマンガ配信サービス「
サイコミ
」で連載中の本作は、第1話がSNSで1.4万いいねを集め、「今まで読んだ中でズバ抜けて現実すぎる漫画」などの声が寄せられている。王道の恋愛漫画なら「もしかして、この先!?」と期待してしまう場面でも、現実はそう簡単には進まない。そんな絶妙な距離感を描いた作者のイララモモイ(
@iroiro_kangae
)さんに話を聞いた。
「指、きれいすね」で恋が再燃!?でも彼は覚えていなかった
主人公の清水えりこは、大学で出会いを求め、友人の美鈴と軽音部の新歓へ参加する。そこで再会したのが、中学時代の同級生・北山くんだった。
えりこにとって北山くんは、ただの同級生ではない。かつて「指がきれいだね」と褒めてくれた相手であり、その何気ない一言を今も大切な思い出として覚えていた。再会後、好きなインディーズバンドが同じだとわかり、一気に距離が縮まったように感じる2人。新歓の帰りには、バンドにまつわる場所を2人で歩きながら語り合う。そして北山くんが、再びえりこの指を褒める。「指長くてきれいすね」。あの日と同じ言葉に、えりこの心は一気に加速する。これは運命なのかもしれない。
しかし、ここで待ち受けていたのは少女漫画のような展開ではなかった。北山くんは、えりこが中学時代の同級生だったことすら覚えていなかったのだ。
「私だけ覚えてた」
この設定についてイララモモイさんは、「この設定自体は、取材でも経験談でもないです」と明かす。そのうえで、「もともと、片思いをする女性の話が好きなので、思いを寄せる相手に全く覚えられてないのに舞い上がっちゃう女の子って可愛いよなと思いながら描いていました」と語った。
「中学の時の同級生と運命的に再会する」という設定は、サイコミの担当者と相談しながら決定。「昔、同級生に指を褒められた」というエピソードは担当者の提案だったという。えりこは恋愛経験が「あまりない」という設定。そのため、北山くんの何気ない一言や行動が、えりこの中では特別な意味を持ちはじめる。
本人にとっては普通の言葉でも、好きな相手から言われれば話は別。期待して、妄想して、少しのことで落ち込む。そんな片思いの暴走が、妙にリアルなのだ。
「もしかして脈あり!?」その一言で心が大渋滞
北山くんは、ときどき「もしかしたら脈ありかも?」と思わせるような言葉を口にする。そのたびにえりこの期待は膨らみ、恋心はさらに深まっていく。だが、片思いはいつも期待どおりには進まない。「私自身は基本的に『可愛いなあ、この子たち』と思いながら描いているので、ちゃんとキュンキュンしてるのですが、リアリティがあると言ってもらえるのも、とても嬉しいです」とイララモモイさん。
読者には、自分の経験と重ねて読む人もいれば、フィクションとして楽しむ人もいる。「人それぞれの楽しみ方をしてもらえたらいいなと思います」と話す。大学を舞台にしたのは、イララモモイさん自身が学生であり、担当者も最近まで学生だったことから。「リアリティが出せるかな」という思いで、学生たちの片思いを描くことになったという。
クズ?それとも、ただの“かわいいやつ”!?
物語の煽り文句は「なんで私は、クズばっか好きになっちゃうんだ??!」。思わせぶりな北山くんは、本当にクズなのか。「実際にクズかそうでないかは、読者の皆さんに考えていただきたいです。クズって、定義がすごく曖昧だと思うので…(笑)」とイララモモイさんは答える。
一方で、作者自身は「北山もすっごく可愛いやつだなと思っています」と語った。本作では、大好きな片思いを描きながら、恋愛にまつわる問題も投げかけ、笑える場面も盛り込みたいという。「私の好きな片思いの話を描きつつ、問題提起もしていきたいし、笑わせるところは笑わせたいなと思っている欲張りな作品なので、そのあたりを楽しんでもらえたら嬉しいです!」。
北山くんとバンドを組み、同じインディーズバンドが好きという共通点から、少しずつ距離を縮めていくえりこ。彼の一言で天国へ行き、次の瞬間には不安の底へ落ちる。笑えて、苦しくて、ときどき「わかる…」とうなずいてしまう。そんな“現実すぎる片思い”の行方に注目したい。
■取材協力:イララモモイ(@iroiro_kangae)
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