夜仕事が終わって、ぼーっと部屋の壁を眺める。もしこの世界から「色」が全部なくなったら、どれだけ味気ない空間なんだろう。
創立145年を迎える日本ペイントが原宿で開催したイベント「COLOR IS LIFE」は、そんな普段あまり気に留めない「色」のおもしろさを再発見させてくれる場だった。
1300色以上の世界。貝殻を混ぜた特殊塗料も
日本ペイントでは、なんと1300色以上の塗料を用意しているという。
なかでも興味深かったのが、砂状にした天然の貝殻を配合した特殊塗料「ニッペ ジキトーン シェルサンド」だ。実は近年、ビルやマンションの外壁タイルの「剥落リスク」が問題視されており、落下の危険が少ない「塗料」でタイル並みの高級感を表現するニーズが高まっているのだという。
人工物には出せない天然素材ならではの自然なゆらぎがあり、見る角度や光の当たり方によって表情がふんわりと変わるのだそうだ。
2分で色が変わる!豪快な調色・塗装ライブ
一番見ていて楽しかったのが、自動調色機と塗装のパフォーマンスだ。白い液体に原色を注入し、ガッチリ固定して360度高速回転!わずか2分で鮮やかな色に変わる様子は、見ているだけでワクワクする。
作られたペンキが会場パネルに塗られていく様子を見て、思わず見入ってしまった。塗りムラが一切なくて、まるで「最初からその色でしたけど?」と言わんばかりに、ごく自然にその場になじんでいる。
あとから塗ったはずなのに、もともとそこにあったかのような圧倒的な一体感。単に「ペンキを塗る」というレベルを超えた美しさに、感心した。
建築家が明かす「色の仕掛け」
トークセッションには、建築家の中山英之さん(東京藝術大学教授)、グラフィックデザイナーの田部井美奈さん、建築家の藤原徹平さん(横浜国立大学大学院Y-GSA准教授)という、第一線で活躍する豪華なクリエイター陣が登壇。それぞれの視点から色や空間にまつわる裏話が披露された。
建築家の中山さんから語られたのは、モネの展示を手掛けた際のエピソードだ。壁の映り込みや額縁の影まで細かく計算し、あえてカーペットで音を吸う空間を作ったという。さらに「黒と白」の挨拶文であらかじめ瞳孔を開かせ、その後の暗い部屋をより明るく感じさせるという、視覚テクニックには思わず唸らされた。
グラフィックデザイナーの田部井さんからは、立体だけでなく「平面のデザインや装飾」にまつわる話が明かされた。家具など日常の身近なものからインスパイアされた色使いや、空間の中に「あえて少し間違った解釈や、微かな違和感を生み出すような仕掛け」を施してみたという話も興味深い。
建築家の藤原さんは、神戸の垂水図書館の建築を手がけた際に、街に泊まり込んで「街でよくつかわれている色」「特徴的な色」を採取したエピソードを明かした。プロジェクトごとに、光や物質、そしてそこで営まれる人々の生活のなかで色をどう扱うかを深く考えているという言葉には、大きな気づきをもらった。
クリエイターたちの緻密な計算と熱量があるからこそ、私たちが空間に立ったときの感動が生まれるのだと深く納得させられた。
疲れた夜こそ「色」に癒やされたい
世界には、モノクロがあり、色彩がある。色にかかる影があり、むらがある。時間の経過やその場所へのなじみ方、違和感、さまざまな要素が、あらゆる形を成して日常に鎮座している。
生まれたころから当然のように周りにある「色」について触れ、美しい発色を眺めていると、少し頭のもやが晴れたような気持ちになってきた。
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