心臓に病気を抱えた夫との闘病生活を描いた漫画「危ない夫の心臓」。かわいらしいタッチで病状や当時の心境を伝え、読者からは励ましや共感の声が寄せられている。Instagramやブログで作品を発表している作者のやよいかめ
(@yayoi_kame)
さんに話を聞いた。
陶芸を原点に、現在は幅広い分野で活動
現在はコミックエッセイやイラスト、コラムなどを手がけるやよいさん。大阪芸術大学の陶芸コースを卒業しており、もともとは陶芸を得意としていた。しかし、結婚後に夫の仕事で転勤が続き、窯や作業場を維持するのが難しくなったという。「だからこそ、今できることを一番得意なものにしていこうと、コミックエッセイやイラストを描き始めました。
SNSやブログのおかげで、どこにいても世界に向けて作品を発表できる場所があるのはとてもありがたいです」と語る。また、夏休みには福島県で絵画教室の講師を務めるほか、青年海外協力隊の経験を生かし、JICA(国際協力機構)経由の出前講座で小中高生に異文化交流について伝える活動も行っている。これまで約30校を訪問したそうだ。
自身の闘病経験が、夫の病気を描くきっかけに
やよいさんが病気をテーマに漫画を描き始めたのは、自身の「鼻腔ガンになった話」がきっかけだった。「母親や父親など、子育て中は忙しすぎてみんな病院にすぐ行けないんじゃないかなと思って描き始めました。育児がきっかけで大きな病気が発見されず、手遅れになってしまうことがあったら悲しいなぁと思って、自分の体験を漫画にしました」と振り返る。
作品には予想以上の反響があり、「Instagramのメッセージで『漫画をきっかけに受診したらガンだった』という人が数十人もいて、私でも人の命を助けるお手伝いができるんだと分かりました」。その経験から、前作の終了後に夫の闘病生活も描くことにしたという。
夫の心臓病が判明し、家族の生活にも変化が!
夫に現れた「ご飯を食べられない」「体が動かない」といった症状の原因は、心房細動だった。心臓が不規則に収縮することで全身に十分な血液を送れず、心不全を引き起こしていたという。「危ない夫の心臓」では、夫の症状や医師の診断だけでなく、やよいさんと2人の子供たちが家族の病気に向き合う姿も描かれている。
病気が判明した当時については、「まさか心臓が悪いとは思ってもみなかったので、びっくりしました。夫の体も心配でしたが、10日後には引っ越しを控えていたので途方にくれました」と明かす。
その後は夫の体調をこまめに気にするようになったものの、生活を病気中心にしすぎないことも意識している。「でも体に負担をかけないことばかり考えていると何もできないので、予定を詰め込みすぎないようにしながら旅行やイベントなどを楽しんでいます」。一方で、「遊園地やテーマパークの乗り物がほとんど乗れなくなってしまったので、一緒に楽しめないのがさみしいです」と、家族で過ごす中での変化も語った。
「漫画を読んでいたから救急車を呼べた」という反響も
作品を描き始めて約1カ月後には、心に残るメッセージが届いた。「『昨夜、母が旦那さんと同じ症状に。漫画を読んでいたからこそ、救急車を呼んだ方がいいとすぐに判断でき、緊急入院することになりました』とメッセージがありました。ガンだけではなく、心不全の方にも役立ったんだなぁとうれしく思いました」。病気の経験を漫画にすることで誰かの役に立てると実感したことが、現在の創作活動を支える原動力になっている。
特に反響が大きいのは、治療の痛みやつらさを描いたエピソードだという。「同じ病気を経験した人たちからの反響が毎回大きいです。『私も痛かった!』『血が漏れて大変だった』など。そういう苦しかった病気の経験は普段なかなか友人とも共有できないので、話せる場所があるというのはいいんじゃないかと思いました」。
自身の経験を公表することへの考え方も、漫画を描く中で変化した。「描くことで誰かの命が助かるきっかけになるなら、自分の恥ずかしかった闘病生活の部分もネットにさらしてもいいかなと考えるようになりました」。夫は「めんどくさいタイプの理系。しかも頑固」だそうだが、闘病生活を公表することには同意しているという。
病気の経験を、これからも漫画で届けていく
「危ない夫の心臓」は1日おきのペースで更新予定だという。「フォロワーのみなさんの反応を見たり、1話から通して読んだ時のストーリーを考えつつ、その時感じていた思いを織り交ぜて描いています。なので、完結がいつになるか自分でもまったく分かりません」と、今後の展開を語る。
大変だった病気の経験を、誰かの気付きや支えにつなげようと作品にしているやよいさん。「危ない夫の心臓」では、夫の検査が始まってからの出来事も描かれている。家族が病気と向き合った記録が、どのような物語として描かれていくのか注目したい。
■取材協力:やよいかめ(@yayoi_kame)
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