「自社の広告が、事件の記事や過激な投稿の隣に表示されてしまう」。近年、こうしたブランド毀損のリスクが高まっている。背景にあるのは生成AIの普及によるコンテンツの急増だ。もはや人の目による確認では、膨大な掲載面の精査に対応しきれなくなっている。
そうした課題に対し、メディア品質の検証を手掛けるのが、グローバルソフトウェアプラットフォーム「DoubleVerify」。同社は、“広告がどのようなページに表示されたか”を計測し、ブランドイメージに合わない掲載面を避ける仕組みを提供している。
ブランド毀損リスクを掲載前に弾く仕組みへ
2025年6月、総務省が「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」を公表。不適切な広告掲載やアドフラウド(広告詐欺)への対策は、「現場任せではなく経営層が関与すべき課題」とされている。
対策を考えるうえで押さえておきたいのが、「ブランドセーフティ」と「ブランドスータビリティ(適合性)」という、2つの言葉の違いだ。「DoubleVerify」は、ブランドセーフティを「誰にとっても不適切なサイトから広告を守る」基準、ブランドスータビリティを「各社の価値観に照らして掲載面を選ぶ」基準と説明する。後者は企業ごとに答えが変わり、運用の設計が難しい。
その設計は大きく2段階に分かれる。一つは、広告配信取引が成立する前に掲載面を評価し、リスクの高い面を自動で除外する「入札前(プレビッド)」の「制御」。もう一つは、配信後に広告がどんなコンテンツの隣に出たかを分析する「入札後(ポストビッド)」の「計測」だ。
日本とインドで同時に広告を走らせたTDKの事例
TDK株式会社(以下、TDK)は、この2段階を採用。1983年の「第1回世界陸上(ヘルシンキ大会)」から「世界陸上」のオフィシャルパートナーを務めている同社は、2025年9月に開催された東京大会に向け、日本とインドでソーシャル広告を展開していた。
その際、課題となったのが「言語」だった。特に、インドでは英語とヒンディー語が混在しているため、投稿を人の目で確認して回ることも、あらかじめ作った除外リストだけで防ぐことにも限界があった。
そこで「DoubleVerify」は、両市場で入札前の制御を有効化。AIが多言語のコンテンツをリアルタイムで解析し、リスクの高い動画への広告掲載を自動で除外した。さらに日本では入札後の計測も導入し、約100万件の不適切なコンテンツを特定。次回以降の設定に活かせるデータを蓄積した。
その結果、ブランドスータビリティの違反率は、導入前の15%から5%まで減少。違反率はコンテンツ単位の指標だが、金額で見ると総広告予算の約9.6%が、無駄になっていた掲載面から品質を確認された面へと振り替えられた。なお、同キャンペーンのブランドリフト調査では、日本での広告想起率が5.8%、インドでのブランド認知度が4.9%向上したと報告されている。
このことについて、TDK 戦略本部 広報グループ グローバルブランドマネジメントの井上剛さんは、「ブランド毀損を防ぎつつ、広告費の最適化を実現する最新アドテクノロジーの重要性は、今後さらに高まると考えています」と述べた。
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