サステナブルな陸上養殖システムの開発・普及で、持続可能な食料供給や日本の食料自給率向上に貢献する「株式会社Niterra AQUA」

東京ウォーカー(全国版)

「海をまもり、持続可能な食料供給を」をテーマに、水質センシング陸上養殖システムと、水質のコントロールをすることで、味や鮮度、食感に特徴を持たせた「うるみえび」の販売を手がける「株式会社Niterra AQUA」。その陸上養殖システムについて、主管の長原充幸さんと、藤川由茉さんに話を伺った。

陸上養殖で育てるエビ「うるみえび」


「Niterra AQUA」の陸上養殖事業は2019年、自動車のエンジンまわりの部品を製造する日本特殊陶業株式会社が新規事業として考案。車載用センサの開発で培ったセンシング技術を使い、水質をモニタリングしながらの陸上養殖システムを開発した。このシステムを新たな社会事業として企業や自治体などへ提案するため、2024年に子会社として「株式会社Niterra AQUA」を設立。モデル事業として「うるみえび」の陸上養殖に取り組み始めた。

養殖にエビを選んだ理由について長原さんは「現在、日本のエビは90%以上を海外から輸入しています。海外ではマングローブが自生する場所で海水を利用してエビを養殖するケースが多く見られ、マングローブの木を伐採して養殖場を広げているため、養殖ができる場所が少しずつ減少しています。このような現状が進むと将来的に海外からの輸入が厳しくなるため、持続可能な生産方法である陸上養殖でエビの国内自給率を向上させるとともに、ほかの魚介に比べて小規模で養殖ができる特性を活かして養殖の普及に貢献できることから、この取り組みをスタートしました」と話す。

「うるみえび」の陸上養殖場は岡山県倉敷市にある。「岡山県玉野市でヒレナマズを中心とした陸上養殖を手がける企業に、この場所で水槽のろ過技術を学んだことがきっかけで、場所をお借りして養殖システムを設置しています」と長原さん。「当初は小規模のものでしたが、養殖の研究内容が進むにともない、設備も拡大していきました」と話す。

岡山県倉敷市にある陸上養殖ラボ

水質を管理し、エビの状態を確認しながら「うるみえび」を養殖


「Niterra AQUA」の陸上養殖は、高度なセンシング技術で水質や水温をコントロールし、外部環境に左右されずに安定生産を図る閉鎖循環式陸上養殖システムだ。特徴的なのは、工場や発電所などの廃熱、温泉や地熱などの熱源など、未利用熱を再利用すれば、水温にかかるランニングコストを削減できる設備であること。「うるみえびの養殖に必要な水温は約30度。未利用熱を利用すれば、より効率のよい養殖を目指すことができます」と長原さんはいう。

また、完全閉鎖型の養殖システムでは、水の循環利用によって水の使用量や排水量を削減することができ、排水による海洋汚染リスクを低減。安定した環境で飼育するため、生産物の供給も安定しやすいほか、工場の跡地や駐車場スペースなど、空き地を活用してできるのでイニシャルコストの削減も可能になる。

さらに誰もがこのシステムを取り入れられるよう、養殖の作業フローをマニュアル化しているのも大きな特徴だ。

「陸上養殖は国の成長戦略の1つであるフードテックにも選定され、成長産業としての期待が高まっています。現在、愛知県蒲郡市のえびせんべい屋さんで当社の陸上養殖システムを設置し、地域での活用が検討されています。このような活動が地域を盛り上げるものとして、取り上げていただくことも期待しています」と長原さんは話す。

未利用熱を活用した閉鎖循環式陸上養殖システムのモデル図

愛知県蒲郡市のえび煎餅店に設置された小型の閉鎖循環式陸上養殖システム


こうした養殖技術によって育てられる「うるみえび」は国産で鮮度がよく、加熱調理をした際に身縮みが少なかったり、殻ごと柔らかく食べられたりするのが大きな魅力だ。味については「海外の企業と協業で味を設計し、国内メーカーからエサを仕入れて与え、クルマエビのような甘味や旨味を再現しました。陸上養殖で育てることで魚介特有の臭みがなく、みずみずしさや食べ応えのある弾力もあります。抗生物質は一切使用せず、クリーンな環境で育つため安心して食べていただけます」と話す藤川さん。

その言葉どおり、世界トップクラスのシェフやソムリエが審査員を務める国際味覚審査機構(ITI)で優秀味覚賞を受賞。世界に認められるエビとなった。

ITIで、味や食感は90%超えの三つ星相当。トータルスコアとしては88.9%を獲得

倉敷市の寿司店「鮨屋 和可奈」では「うるみえび」を使ったお鮨をコースで提供

カレーやビスクなど、うるみえびをふんだんに使った加工品をオンラインショップにて販売中

2025年に岡山県日生市で行われた「ひなせカキフェス」で「うるみえび」の釣りイベントを開催


「うるみえび」は養殖場のある岡山で、中央卸売市場に向けて「生きた」状態で出荷するほか、東は東京の豊洲市場、西は福岡の中央卸売市場まで物流を構築。水揚げ後、生きたままのうるみえびが仲卸を通して各飲食店で提供され始めている。一方、うるみえびをふんだんに使用したカレーやビスクなどの加工品を自社のオンラインショップで販売、こちらは一般消費者が購入できる。うるみえびの身はカレーに、頭と殻はビスクに使用され、殻ごと余すことなく活用できるのもメリットの1つだ。

今後は百貨店のオンライン販売や鉄道会社との連携による土産品など、今後もレパートリーを増やしていく予定で、規格外で出荷できなかったものを活用することも検討している。

「来たるタンパク質危機(プロテインクライシス)に対する解決方法の1つとして、『Niterra AQUA』の陸上養殖システムを広めていきたいと思っています。陸上養殖によって各企業や地域のブランド商品を創り出すこと、それが地域活性化や地方創生の一端になることを期待しています」。

【画像】長原さん(写真左)と藤川さん(同右)

「うるみえび」陸上養殖に携わる「Niterra AQUA」の社員

「株式会社Niterra AQUA」本社外観 ※日本特殊陶業株式会社内


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