ホテルのような快適さは欲しいけれど、自然の中で過ごすキャンプの楽しさも捨てがたい。そんな欲張りな願いをかなえてくれるのが、プライベートサウナ付きのアウトドアホテル「Earthboat」だ。今回訪れたのは、長野県上田市、標高約1000メートルのカラマツ林に囲まれた「Earthboat Ueda Onsen(上田温泉)」。独立したすべての客室に薪サウナと温泉露天風呂を備え、食事もサウナも自分たちのペースで楽しめる。実際に1泊してみると、そこには一般的なホテルともキャンプとも違う、森の中だからこそ味わえる時間が待っていた。
森の中に、自分たちだけの小さな拠点
上信越自動車道上田菅平インターチェンジから車で約25分。「Earthboat Ueda Onsen」は、日帰り温泉施設「地蔵温泉 十福の湯」に隣接する森の中にある。
敷地に足を踏み入れてまず感じたのは、施設全体の統一された世界観だ。森の中に佇む客室をはじめ、タープやチェア、薪ストーブ、照明など、一つひとつのアイテムまでセンスよくまとめられている。客室は「Forest Side」「Garden Side」「River Deck」の3タイプ。いずれも独立した一棟貸しで、定員は各3名。自然環境を生かしたアウトドアスペースが設けられている。
一方で、決して気取った雰囲気ではない。敷地内の畑にはさまざまな野菜などが植えられ、その傍らには思わずクスッと笑ってしまうような立札も。そんなちょっとした遊び心からも、この場所をつくるスタッフの人柄が伝わってくるようだ。
大きな窓いっぱいに広がる森も、この部屋の一部
客室に入って真っ先に目を奪われたのが、大きな窓とその向こうに広がる森の景色。ベッドに腰を下ろすと、視界の大部分を木々が占める。まるで森そのものを一枚の絵として切り取ったような、なんとも贅沢な借景だ。
心地よさを感じたのは、景色だけではない。室内には木がふんだんに使われ、扉を開けた瞬間から温もりと香りに包まれる。家具や照明、食器、調理器具などにも統一感があり、どこを見ても「これでいい」ではなく、「これがいい」と選ばれたものが置かれているように感じる。
自分で薪をくべる。だからサウナの時間まで楽しい
「Earthboat」の大きな魅力が、すべての客室に専用のプライベートサウナが付いていること。備えられているのは、自分で薪をくべて温めるフィンランド式のサウナ。もちろんセルフロウリュも楽しめる。ホテルの大浴場にあるサウナとは違い、ここを使うのは自分たちだけ。ほかの利用者を気にする必要もなければ、時間に追われることもない。
まずは薪に火をつけ、ストーブへ。すぐにサウナへ入れるわけではなく、薪を足しながら室温が上がるのを待つ。このひと手間もまた、アウトドアステイの一部だ。十分に温まったところでサウナ室へ入り、熱くなったサウナストーンに水をかける。ジュッという音とともに蒸気が立ち上がり、木の香りに包まれた室内の体感温度が一気に上がっていく。
体が温まったら外へ。インフィニティチェアに体を預け、木々を眺めながら外気浴を楽しむことができる。薪をくべて好みの温度に整え、好きなタイミングで入る。プライベートサウナだからこそかなう自由さが、想像以上に心地いい。
サウナのあとは、森の中の温泉露天風呂へ
さらにうれしいのは、全室に温泉露天風呂まで用意されている点。使われているのは、隣接する「地蔵温泉 十福の湯」と同じアルカリ性単純泉の源泉。温泉で体を温めてから、サウナでさらに汗をかくもよし。水風呂としても利用できるので、たっぷり汗をかいたあと、そのまま水風呂へつかるもよし。自分たちだけの空間なので、森を眺めながら好きなだけ湯につかることができる。
サウナ、水風呂、外気浴、そして温泉。しかも移動する必要はほとんどない。薪をくべてサウナを温めるところから始まった一連の時間をすべて自分たちのペースで楽しめるのは、この場所ならではの魅力だ。
地元の食材を買い込んで、森の中で夕食を
夕食も「Earthboat」では楽しみの一つ。各客室のアウトドアリビングには焚き火台兼BBQグリルが備えられ、室内にはガスコンロや冷蔵庫・冷凍庫、調理器具、食器、カトラリーのほか、塩、胡椒、オリーブオイルなどの基本的な調味料も用意されている。せっかく長野県上田市まで訪れるなら、周辺で地元の肉や野菜、チーズなど、気になる食材を買い込んでおくのもおすすめだ。
森に囲まれたアウトドアリビングで、好きに焼いて、食べて、飲んで、また焼く。レストランの予約時間を気にする必要もない。食材を用意する時間がない場合には食事オプションを利用する方法もある。事前にオーダーしておけばBBQ用の食材などを用意してもらえるので、旅のスタイルに合わせて選びたい。
日が暮れると、森は“音”で存在を知らせてくる
食事を終え、辺りが暗くなってから、この場所のもう一つの魅力に気づく。とても静かなのだ。ただ、まったく音がしないわけではない。じっと耳を澄ませていると、風で木々が揺れる音や、どこからともなく聞こえてくる虫の音に気づく。自然の音に耳を傾けているうちに、日常では鈍りがちな五感が少しずつ研ぎ澄まされていくのを感じる。
昼間は大きな窓いっぱいに広がる景色として楽しんでいた森が、夜になると今度は“音”によって、その存在を感じさせてくる。街で暮らしていると、こんなふうに何かの音を聞き取ろうとして、じっと耳を澄ませることはほとんどない。森の中に自分たちだけがいるような感覚も相まって、一気に日常から遠く離れたような気がした。
前日に届いたパンが、翌朝こんなにおいしくなるとは!
そして翌朝。今回の滞在でもう一つ印象に残ったのが朝食だった。朝食セットは前日のうちに客室へ届けられる。そのパンを見たとき、実を言えば「朝、焼きたてが届くわけではないのか…」と少しだけ残念に思ってしまった。
ところが翌朝、用意されていたダッチオーブンを使って温めたパンをひと口食べて、その考えはあっさり覆された。外側は香ばしく、中はふんわり!森の朝の空気の中で食べることも手伝って、とにかくおいしい。「前日の自分に、このおいしさを教えてあげたい」と思ったほどだった。自分でひと手間かけて仕上げるからこそ、朝食の時間まで滞在の体験になる。サウナと同じように、ここでは「自分でやる」ことが面倒ではなく、楽しさに変わっていく。
ホテルでもキャンプでもない。“自分たちでつくる”森の1泊
大きな窓から森を眺め、自分で薪をくべてサウナを温め、森の中で外気浴をして、温泉につかる。食事も自分たちで用意し、夜になれば森から聞こえてくる自然の音に耳を澄ませる。「Earthboat Ueda Onsen」で過ごしてみて感じたのは、ホテルに泊まるのとも、テントを張ってキャンプをするのとも違う楽しさだった。
快適に整えられた客室がありながら、滞在を完成させるのは自分たち。薪に火をつけたり、食材を焼いたりと、少し手を動かすことで自然の中にいる実感が増していく。一方で、ふと室内へ目を向ければ、計算された照明や家具が配された心地よい空間があり、目の前には一枚の絵のような森が広がっている。
サウナが好きな人はもちろん、キャンプには興味があるけれどテント泊は少しハードルが高いという人にも、この心地よさをぜひ一度体験してほしい。自分たちだけのサウナと温泉、そして森。そのすべてを好きなペースで楽しめることこそ、「Earthboat Ueda Onsen」で味わえるアウトドアステイの醍醐味なのだ。
取材・文=水島彩恵
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