働き方改革が進んだとはいえ、いまだに深夜の打ち合わせはあるし、残業は減らない。そんな職業は存在する。22時からクライアントとの打ち合わせ。土日の仕事が確実となり「何のために頑張っているのだろう」と、むなしさと葛藤を抱えた夜を描く――大町テラス(
@te_rra_ce
)さんの「ご自愛ください」に1.4万を超えるいいねが集まっている。
自己犠牲なのか、それとも優しさなのか。正解のない葛藤を描く
広告制作会社で働く主人公は、金曜日の22時から打ち合わせに参加し、月曜日までにデザイン提案書を仕上げることになった。土曜日に友人の結婚式を控えている部下を気遣い、「方向性だけは自分で仕上げるから」と伝える。自分が新人時代に好きなバンドのライブを諦め、後悔した経験があるからこそ、後輩には同じ思いをさせたくなかったのだ。
本作「ご自愛ください」は、漫画家の大町テラスさんが2021年に「チャンピオンRED」(秋田書店)で発表した読み切り作品。コロナ禍で閉塞感が漂うなか、それでも仕事に向き合い続ける主人公の姿が描かれている。
そんな主人公の姿に込めたテーマは、「自分が受けた理不尽をどう還元するのか?」ということ。大町さんは、「『パワハラ上司に受けたパワハラを後輩に同じようにするパワハラ上司になるのか?』『パワハラは自分の世代で断ち切って優しい先輩になるのか?』みたいなことです」と説明してくれた。かつては徹夜して働くことが当たり前だったとしても、自分が上司になったとき、後輩に同じ苦労をさせるわけにはいかない。だからこそ、自分が頑張って後輩を守ろうとする姿を通して、「パワハラを断ち切るために、頑張る美学」を描いたそうだ。
読者からはテーマに共感する声が寄せられた一方、「主人公の行動が過度に自己犠牲的で不快だ」という意見もあったという。大町さんは、そうした批判への答えを続編「私ごとで恐縮ですが」で描いていると明かす。地味な話だと感じていた作品が、Xへの投稿をきっかけに多くの人へ届いたこともうれしかったそうだ。働き方や後輩との向き合い方について優しく考えさせられる本作を、ぜひ読んで欲しい。
取材協力:大町テラス(@te_rra_ce)
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