沖縄の豊かな自然を未来につなぐため、2025年5月に始動した「つなご・みらいアートプロジェクト」。スターバックス コーヒー 那覇鏡原店と、漫湖・水鳥湿地センター、公園を活用した場づくりを行う株式会社オーエスディーの三者が連携し、漫湖公園を中心に地域住民とともに活動している。
プロジェクトの第1弾として、地域住民も参加し、活動のシンボルとなるオブジェをアーティストの淀川テクニックさんが制作。約1年を経て完成したアートが、26年5月30日にお披露目された。これまでの道のりと今後の展望を紹介しよう。
お披露目の日。アートが語り始めたこと
このプロジェクトの中心にあるのは、「沖縄の豊かな自然を未来につなげたい」という強い想いだ。この想いに共鳴した三者が連携し、まずは、活動への想いを込めたオブジェの制作からスタート。スターバクス コーヒー 沖縄本部町店にある、地域とスターバックスの絆となるアート・もとぶフローミーを制作した淀川テクニックさんも活動に賛同し、プロジェクトメンバーとして彼らの想いを形にした。
5月30日のお披露目会には、これまでプロジェクトに参加した人たちを中心に多くの地域住民が参加。完成したオブジェが披露されると、会場は拍手で沸き上がった。
モチーフは、地域のみんなの投票で選ばれた2種類の生き物。那覇市の蝶に制定されている「オオゴマダラ」と、漫湖に飛来する絶滅危惧種の渡り鳥で豊見城市の鳥に制定されている「クロツラヘラサギ」だ。それぞれの地域名を指すうちなーぐち(沖縄のことば)にちなみ、「うるくぬオオゴミダラ」、「とよみぬクロチリヘラサギ」と命名された。
これらは地域住民やスターバックスのパートナー(従業員)が沖縄のビーチなどで集めたゴミでできている。
風で羽根がふわりと揺れてまるで生きているかのような「うるくぬオオゴミダラ」は、表裏で羽根の柄が異なる。背中側から見るとオオゴマダラのようにモノトーンに見えるが、おなか側から見るととってもカラフルだ。
「とよみぬクロチリヘラサギ」は、白を基調にピンクやブルー、グリーンなどのカラフルな羽根がモザイクのように配されている。
遠目には美しいアート。しかし近づくと、海外の言語やキャラクターが書かれもの、ビーチサンダル、歯ブラシ、ライターなど、ゴミでできていてることがわかる。「これ、自分が出したゴミかもしれない…」そんな気づきが、作品を通して来場者に広がっていくようだ。オブジェの下に潜り込んで観察する子どもたちの姿に、大人たちも未来に想いをはせていた。
アートができるまで。多くの気づきが生まれた1年
プロジェクトの始動から約1年。ともに漫湖公園にあり隣接する那覇鏡原店と漫湖水鳥・湿地センターを拠点に、地域住民や子どもたちにパートナーが加わり、漫湖の干潟清掃や沖縄の海岸でビーチクリーンを続けてきた。
ストアマネージャー(店長)の郡さんは、ゴミの多さに驚いたと語る。
「沖縄の南部は生活ゴミが、北部は海外から流れてきたゴミがとても多くて驚きました。ウキなど漁業由来のゴミもありました」
集めたゴミは、地元の芸術大学の学生と一緒に洗い、乾燥させ、それを材料にして、アーティストの淀川テクニックさんがアートへと再生。淀川テクニックさんは3月から沖縄に長期滞在し、地域とも交流しながら制作にあたった。
制作の合間には、淀川テクニックさんのワークショップ「ゴミジナル工作(R)」を開催し、子どもたちがゴミを使ったアートに挑戦。子どもたちの率直な表現は、大人たちに気づきをもたらしたようだ。
「学校でいろいろ学んでいるようで、海に関する作品を作るお子さんが多かったです。“おなかにゴミが詰まった亀”の作品には、衝撃を受けました」と郡さん。
また、この日、淀川テクニックさんがつぶやいた言葉がとても印象的だったと語る。
「子ども主体のイベントなので『親が手を出しすぎなくてよかった』とおっしゃっていて。未来をつくっていく子どもたちが主体となったワークショップができたことを喜んでいらっしゃるようでした。子どもたちが問題に向き合い、楽しく解決していく姿に期待と希望が持てました」
作品の一部は店舗に展示されている。
プロジェクトのこれから。10年後のゴミゼロを目指して
「うるくぬオオゴミダラ」は那覇鏡原店の屋外に、「とよみぬクロチリヘラサギ」は店舗から徒歩約5分の漫湖水鳥・湿地センターの屋内に、プロジェクトのシンボルとして設置されている。
店舗でオブジェを見た来店客が漫湖水鳥・湿地センターへ足を延ばし、センターの遊歩道を歩いて漫湖の自然に触れる。そんな自然な回遊が生まれていて、ゴミ問題に興味を持ってくれる人が多いことに、パートナーたちは喜びを感じているそうだ。
郡さんは、この1年でクリーンアップ活動のイメージが大きく変わったと言う。
「アートをつくるという目標があったので、楽しみながら活動を続けることができました。みんなで拾ったゴミで大きな作品ができた。それは、一人ひとりが今できることを少しずつやることで未来につながっていくという変化を実感できるものでした」
では、アートが完成した今、プロジェクト名を「つなご・みらいプロジェクト」と変え、取り組みはどのように変化していくのだろう。
目指すのは、“ごみ拾いをしなくてよい未来”だ。
オブジェのお披露目会でも、10年後の2036年5月30日(金)までに漫湖や周辺地域のゴミゼロを目指す「ゴミゼロ宣言」を発表。
郡さんたちパートナーが行きついたのは、「ゴミを出さないことが大前提」という根本的な答えだった。
「だから今後はクリーアップ活動を増やしていくのではなく、ゴミ問題を知っていただいたり、ゴミを出さない、また『ゴミゼロ宣言』に共感いただくことに重点を置きます」と郡さん。テイスティングパーティーを開いて、沖縄の豊かな自然をあらためて知ってもらい、ごみ問題、オブジェやゴミジナル工作について紹介し、湿地センターに足を運んでもらうきっかけをつくるなど、活動の形が拡がっている。
「近所にお住まいなのに湿地センターに行くのは初めてというお客様もいらっしゃいました。実際に生き物を見たり、湿地センターの話を聞いたりする体験は、思った以上に興味深く楽しいものだったとパートナーたちも話しています。ネガティブな話に“楽しい”という感情が混じるからこそ、未来につながるように続けていける。細く長く、この活動を続けていきたいです」
地域を愛するたくさんの人の想いが集まり、完成したシンボルオブジェ。プロジェクトは形を変え、ゆっくり、確実に未来へと進んでいく。
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。