新卒で入社し、初めて配属されたのは「検査課」。女性ばかりの職場と聞いていたものの、そこで待ち受けていたのは、特定の社員が絶対的な権力を握る理不尽な環境だった。契約社員や外国人労働者への差別的な扱いを見過ごせず、声を上げた新人社員。しかし、その行動をきっかけに、今度は自分が職場で孤立してしまう。辰ノたむ
(@tatsuno_tamu)
さんの『正社員で入社した会社を半年でやめたら感謝された件』は、実体験を基に、職場で起こる理不尽さと、そこから生まれた思いを描く作品だ。
出社初日から不穏な空気…お局が支配する検査課
期待と緊張を胸に出社した初日。配属先の検査課に向かうと、まず目に入ったのは居眠りをする課長だった。早くも不安を覚えるたむさんだったが、本当の問題はそれだけではなかった。部署内で強い影響力を持っていたのは、教育係のオツ野さんとボネ山さん。いわゆる「お局」的な存在の2人が、職場の空気を支配していたのだ。
特に目立っていたのが、契約社員や外国人労働者に対する厳しい態度だった。非正規雇用であることを理由に「こんなこともできないの?」と見下したり、休憩室を使わせなかったりと、その扱いはあからさま。働く人の立場によって、同じ職場の中で明確な線引きがされていた。
入社2週間で休憩室を出禁に!
そんなある日、たむさんは契約社員に負担の大きい検品作業を任せていることに気づく。理不尽な状況を見過ごせず指摘したところ、返ってきたのは「新人のくせに」という言葉。さらに、たむさん自身も休憩室を使えなくなってしまった。入社から、わずか2週間の出来事である。
それ以降、休憩時間は契約社員たちと同じようにロッカールームで過ごすことに。すると翌日から、今度は周囲の社員に無視されるようになった。職場の不公平さを正そうとしたはずが、気づけば自分が排除される側になっていたのだ。
それでも、たむさんは「契約社員だから」という理由だけで理不尽な扱いを受けることに納得できなかった。本作については「プライバシーの観点から一部フィクションを混ぜていますが、ほぼほぼ私の体験した実話です」と明かす。いわゆる「悪者を倒してスカッとする」結末ではない。それでも作品にしたのは、「助けてくれる人は必ずいる」ということを伝えたかったからだという。
派閥に噂話…職場の人間関係が生む息苦しさ
たむさんは、女性が多い職場ならではの人間関係についても振り返る。「女性はコミュニケーション能力が高い分、よい面もありますが、その反面グループや派閥ができやすく、そこに入る・入らないで気を遣うことも多いです」と話す。情報共有が活発な一方で、噂話も広まりやすく、ちょっとした行動が話題になってしまう傾向があると感じたそうだ。
その後も陰湿ないじめは続き、たむさんは入社から半年で退職を決断する。ところが、物語はそこで終わらなかった。検査課では退職者が相次いでおり、その状況を不審に思った人事部が動き、内部調査が行われることになったのだ。
声を上げた人が孤立し、職場を去ることになる。そんな苦い経験を描きながらも、本作が伝えるのは絶望だけではない。理不尽な環境に置かれたとき、すべてを1人で抱え込まなくてもよいというメッセージが込められている。
■取材協力:辰ノたむ(@tatsuno_tamu)
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