朝まで開けてはいけない和室のふすま。中には一体何があるのか。そんな疑問を抱きながらも、言いつけを守っていたはずが、庭から少し覗くだけなら大丈夫なのでは?と好奇心を抑えられず、見てはいけないものに遭遇してしまう。大家
(@ksyjkysk)
さんが描く怪談漫画「扇風機の家」を紹介する。本作は、著作権フリーで無料配信されているツイキャス「禍話」の怪談を再構築し、漫画化した作品だ。
ファンが漫画化したかった不気味な怪談
原作となった「禍話」は、毎週土曜日23時から配信されている怪談ツイキャス。PCやスマホから気軽にライブ配信を楽しめるサービスで、ファンによるリライトやファンアートも盛んだという。以前から禍話のファンだった大家さんは、リモートワークや原稿作業中にもよく聴いていたそうだ。「禍話さんはファンの方によるリライトやファンアートなどの投稿が盛んで、私自身も漫画を描くので、せっかくなら参加したいと思ったのがきっかけでした」と、漫画化の経緯を明かす。
なかでも「扇風機の家」は特にお気に入りの怪談だったという。「禍話の中でも特に好きなお話でしたし、不気味な和室など描くのが楽しそうなシーンがたくさんあったので描かせていただきました」と大家さん。作品は「怖いけど読んでしまう」「ゾクゾクした」と反響を呼び、1.2万いいねを獲得した。
漫画化にあたって意識したのは、登場人物の不穏な様子だ。「元のお話の怖いポイントの1つが“何かに気付きつつもそれを隠してる友達”の存在だと思うので、友達の表情や行動に不穏さを感じられるよう心掛けて描きました」と語る。何かを知っているのに教えてくれない友人。その違和感が、物語にじわじわと恐怖を忍び込ませている。
豪邸で食べ放題の留守番バイト、ただし奇妙なルール付き
主人公は実家暮らしの大学生。夏休みにアルバイトをしたいものの、親からは「勉強しろ」と言われ、退屈な毎日を過ごしていた。そんなある日、大学の友人から電話がかかってくる。親戚が留守にする間、豪邸で住み込みの留守番をしているというのだ。
しかも、バイト代だけでなく食費まで支給される好条件。食べ放題、飲み放題、ゲームもやり放題と聞けば、暇を持て余していた主人公が食いつかないわけがない。さっそく友人のもとへ合流し、2人で楽しい夏休みを過ごすことになった。
ところが、このバイトには妙な決まりがあった。夜11時になったら、奥の和室にある扇風機をつけっぱなしにすること。そして、和室のふすまは朝まで絶対に開けてはいけないというのだ。
和室の畳には、射的の景品のような小さなおもちゃが大量に散らばっている。それらを1つずつ立てて並べ、扇風機を風量「強」、首ふりに設定。夜11時から朝7時まで回し続けるのが仕事だという。翌朝には倒れたおもちゃを起こし、再び同じ状態に戻す。作業自体は簡単だが、なぜそんなことをするのかは誰も教えてくれない。
夜中に響く物音…障子の向こうにいるのは?
不気味なルールに疑問を抱きながらも、主人公は友人との生活を続けていた。そんなある夜、トイレに行こうと起きた主人公が和室の前を通りかかると、室内から何かが倒れる音が聞こえてくる。毎晩、扇風機を回しているだけのはずの部屋。そこには何かがいるのではないか。
そう考えた主人公が障子に目を向けると、なんと小さな穴が空いていた。朝まで開けてはいけないという約束は守っている。ならば、ほんの少し覗くだけなら問題ないのではないか。好奇心に負けた主人公は、ついに穴の向こうを覗いてしまう……。
大家さんは「扇風機の家」のほかにも、「アイスの森」など禍話で語られた怪談をコミカライズ。これらの作品を収録した「禍話 SNSで伝播する令和怪談」も発売されている。さらに、SFやミステリーの要素を感じさせる「僕らの夏と灰」や、山奥の別荘を舞台にした「嵐の日の来客」などもおすすめだ。何気ない日常に潜む違和感が、いつの間にか逃げ場のない恐怖へと変わっていく。背筋が冷たくなるような物語を、ぜひ味わってほしい。
■取材協力:大家(@ksyjkysk)
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