美内すずえさん「ガラスの仮面展」インタビュー

関西ウォーカー

「ガラスの仮面」を愛する、すべての人に贈ります!


ゴールデンウイーク中の今、そごう神戸店では「連載40周年記念 ガラスの仮面展」が開催中で、連日多くのファンが訪れている。「ガラスの仮面」は、漫画家・美内すずえさんの代表作で、単行本49巻までの累計発行部数が5000万部を超えるベストセラー漫画だ。演劇漫画の金字塔として不動の人気を誇り、2016年に連載40周年を迎えた。物語は、平凡な少女・北島マヤが、伝説の大女優・月影千草に天才的な演劇の才能を見いだされ、“紫のバラのひと”速水真澄らの応援を受けながら、宿命のライバル・姫川亜弓と幻の名作「紅天女」の主役の座を競い合う、というもの。

300点以上の貴重な原稿等が展示されている


会場では、原画や華やかなカラーイラストなど貴重な資料を300点以上が展示されている。物語の流れに沿って、「女海賊ビアンカ」や「ふたりの王女」など作劇中の演目ごとに構成されていて、とても見やすい。「紅天女」にスポットを当てたコーナーもある。そのシーンを思い出すと同時に、読んでいた頃の自分の想いも再現されて非常に感慨深い。40年の連載は、そのまま自分の人生と重なり合う。「ガラスの仮面」への愛情にあふれた展示は、もう何度でも見たくなる。

作品の世界観を感じることができる


昨年デビュー50周年を迎えた美内さん。「ガラスの仮面」だけでなく、そのデビュー作からこれまでに発表した作品を紹介するコーナーも必見。ご本人が語る動画の前には多くの人が立ち止まっている。

いつ完結するのか、でもずっと読み続けたい。複雑なファン心理を知りつつ、「ガラスの仮面」を描き続けている美内さん。展覧会の初日、会場でサイン会が開催された。長蛇の列となったファン1人1人に丁寧に対応していた美内さんに、「ガラスの仮面展」への想いを聞いた。

美内すずえ先生


原画展で大切にしたこと


原画展に当たり、最初に「キレイに見せることを第一にするのではなく、それよりも楽しかったね、おもしろかったね、と言えるような原画展にしたい」と、お伝えしました。ですからデザイナーさんたちは、いろんな仕掛けを考えてくださったり、いろんな部分にこだわってくださったり。また、ただ絵を見るだけじゃなく、読めるような流れも一部ほしいと言いました。観やすく配置していただき、楽しめる場所に作ってくださいというお願い通りに出来ていて、あぁ良かったと思っています。展示タイトルはガラスの破片をモチーフにした凝ったデザインですし、“紫のバラの部屋”や“白目コーナー”など趣の違う部分も混ぜられていて、楽しくできあがっていると思います。何回も来ていただける、リピーターの方が増えるとうれしいですね。楽しんでいただければ、それが何よりと思っています。

カラー原稿の色彩の華やかさにも圧倒される


作者も楽しむ原画展


楽しいことには自分も参加したくなるんです。ワクワクするような出来事が来ると、一緒になって遊んじゃおうみたいなところがあって(笑)。だから、原画展をやる時は打ち合わせから楽しくて。こんなことやればおもしろい、こんなコーナー作ってくださいって。原画展が来るとお祭り騒ぎになるんです(笑)。だから、けっこう楽しんでいます、自分でも。

「ガラスの仮面」の連載がスタートした、「花とゆめ」1976年新年号


美内先生のメモ


たくさんのこだわりグッズ


グッズの作り手が、漫画の中でこのシーンのものをおもちゃにしてみましたって、ワクワクしながら楽しそうに作ってくれれば、それが読者の方にも響きます。ゲラゲラ笑って「これ、おもしろいよね」って買って帰ると、作り手と買ってくれた人との交流ができるんですよね。そういうものが1品1品、全部に込められていると思っているので、楽しんでます、私も。工夫のあるものがいいですね。私がすごくおもしろいと思ったのは“白目ファイル”。これは発見だな、と気に入ってます(笑)。たくさん買って、いろんな人に配りました。皆さん、おもしろがって、白い紙を入れたり出したり。「青目になった」とか(笑)。でも、こんなもん絶対売れないと思っていたのが、意外と売れてたり。「泥まんじゅう(クランチチョコ)」です。一番人気だそうで、私もちょっと考え違いしてました(笑)。

「泥まんじゅう」をモチーフにしたチョコクランチ


読者のみなさんに


サイン会では「おばあちゃんの時代から読んでます」っていう20代の女性がいらして。三代目の読者の方ですよね。いつかこんな日が来るんじゃないかと思ってたけど(笑)。長くご家族で読んでいただけてうれしいです。赤ちゃんを抱いたお母さんが「この子にも読ませます」って、未来の読者ですね(笑)。長く描いていますから、中断した人もたくさんいらっしゃいます。で、結婚して子供が生まれて、40代になって改めて最初から読み始める。「大人買いして、今夢中で読んでます」という人もけっこういらして。そうすると、その人のお嬢さんがまた読み始める、みたいな感じでね(笑)。漫画に限らず、本というのは自分の人生と年齢によって見方が変わってくるんですよね。1冊の作品の中から、自分の人生と年齢にあわせて違う発見をされる方がたくさんいます。そういう意味では長く楽しんいただけるかな。長い人生の間の好きな時に読んでいただいて、皆さんの元気が出て来ればいいなと思います。

取材・文=はーこ

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