京都の太秦にある商店街を舞台に、クリーニング店の娘・京子と芸人を目指す豆腐店の息子・康太の恋や商店街の暮らしを、地元の人々のインタビューを交えながら描く「京都太秦物語」。山田洋次監督が共同監督として名を連ね、立命館大学の学生と作り上げた本作で、京子役に抜擢されたのが「築城せよ!」('09)でヒロインを務め、今後の活躍が注目される京都出身の海老瀬はなだ。京子について「昔で言う、原節子さんみたいな“一歩二歩下がって男性についていくような女性”で自分とは正反対ですね。脚本を読みながら“何で京子は怒らないんかな?”とか思うくらいでした(笑)」と話す彼女。しかし、本作への出演は夢がかなった瞬間でもあったという。
「1シーンでもいいから山田監督の作品に出演してみたいと思っていて、京都を舞台に京都弁の映画に参加するのが夢だったんです。それに、学生さんと一緒に映画を作る機会なんてめったにないので、私も一緒に映画作りを学べたらいいなと思いました」
そんな期待感の一方で、ヒロインの両親役を始めメインキャスト以外は商店街の人々で、実際の店舗で撮影するなど「地元の方との距離を縮めないと、ぎこちない雰囲気が作品に出てしまうんじゃないか」と、不安もあったという。しかし、学生スタッフが事前に商店街を何度も訪れ、その熱意に応えようと地元の人々も撮影に協力してくれた。
「地元の方と親しくなるために “うちに泊まって”と言ってくだされば、お言葉に甘えました。とても温かく迎え入れていただいたので “本当の家族になれるかも”と思えて、助けられました」と彼女も話すように、商店街に暮らす人々の絆がリアリティを伴って収められ、今年2月に行われたベルリン国際映画祭でも高い評価を得た。
「海外の方からは“観光名所としての京都は知っているけど、人々の暮らしは知らなかったから新鮮”という感想をいただきました。インタビュー部分は地元の人たちが話す本当の言葉なので、私もグッと引き込まれましたね。ラブストーリーが主軸ではありますけど、商店街に暮らす人たちの絆を感じてほしいです」
さまざまな人に支えられ、作り上げられた本作。人との絆の大切さを、身に染みて感じるはずだ。
(海老瀬はな PROFILE)
PROFILE●1985年12/9、京都府生まれ。2006年に映画デビューを果たし、「犬と私の10の約束」('08)など話題作に出演。「築城せよ!」('09)でヒロインに抜擢され、一躍注目を集めた。テレビドラマやCMでも活躍中
(STAFF&CAST)
監督・企画・原案・脚本:山田洋次 監督:阿部勉 脚本:佐々江智明 出演:海老瀬はな USA(EXILE) 田中壮太郎 西田麻衣 北山雅康 ボルトボルズ弓川 アメリカザリガニ 田中泯 ナレーション:檀れい('10松竹)上映時間:90分
※5/22(土)よりMOVIX京都にて公開