6月2日、小島藤子さんの初主演映画「馬の骨」が公開され、東京・テアトル新宿で舞台挨拶が行われた。
80年代後半、BEGINやたまなど、数多くのバンドを輩出し、バンドブームの火付け役となった伝説の番組「三宅裕司のいかすバンド天国」(通称、イカ天)。その番組に出演し、審査委員特別賞を受賞した「馬の骨」のボーカル、桐生コウジさんが自身の体験を基に脚本を書き、自ら監督を務めて制作されたのが、映画「馬の骨」だ。桐生さん自身も「熊田」という役名で出演している。
この作品をより多くの人に楽しんでもらおうと桐生さんが考えたのが「21日間連続トークイベント開催」だった。公開初日、上演後のトークイベントに出演したのは、主演の小島さんと監督の桐生さん、劇中で小島さん演じる桜本町ユカが所属するアイドルグループ「ツキノワ★ベアーズ」のメンバー役として出演した茜屋日海夏さん(i☆Ris)、志田友美さん(夢みるアドレセンス)、河上英里子さん(元A応援P ZERO)、アイドルのユカのファンでシェアハウスの同居者の一人でもある垣内竜二役の深澤大河さん、そのシェアハウスの大家・木田百子役のしのへけい子さんの7人。桐生さんが司会進行役を務め、それぞれが撮影中のエピソードなどを語った。
小島さんは「アイドルとしてステージの場面もあるので、ダンス指導の先生がいたんですが、(ツキノワ★ベアーズの)ほかの子たちは現役のアイドルだから先生もそのテンションで、一回振付したら『はい、やってみて』って。私だけなかなか覚えられなかったんですけど、みんなが優しく教えてくれました」とアイドルの大変さを実感したという。さらに、シンガーソングライターとしてアコースティックギターを弾きながら歌うシーンもあるが、桐生さんが「小島さんのマネージャーさんに、ギターを引く場面があることを伝えたら『小島はギターを持っていて趣味で引いていますし、歌も大好きで得意です』って言われたんです」と話すと、「若者特有の、好きなバンドに感化されてギターを買っちゃったんです。コードがちょっと弾けるくらいなのにマネージャーさんが勘違いしたみたいで」と笑いながら否定。「でもその勘違いが、微妙なヘタウマな感じのユカに合ってました」と桐生さんがすかさずフォローした。
ツキノワ★ベアーズのメンバーを演じた3人は「アイドル役というのを聞いて、実際にアイドルをやっているので『すごくいいじゃん!』って思いました。でも、台本を読んでみたら結構ドロドロしていて『すごく性格悪い!』って(笑)。でも、なぜか演じやすかったんですよね。たぶん、日頃の鬱憤を晴らすことができたのかもしれません(笑)」と志田さんが会場を和ませ、茜屋さんは「タミコ(志田)はケンカっ早くてガツガツ行く子で、ミサキ(河上)はちょっと気弱なところがあります。でも、私が演じたエリはどういう子なんだろう?と最初、台本を読んだ時に思いました。でも、よく読んでみると、タミコにくっついて回っていて、いい感じのポジションにいる子だなって」と演じた役を分析した。「現場でいじめられたりしませんでしたか?」と桐生さんに聞かれたミサキ役の河上さんは「はい、ここはいじめられるところではありませんでした」というジョークで返し、会場から大きな笑いが起こっていた。
劇中で、ユカを困らせる悪い男・垣内を演じた深澤さんは「垣内はユカさんのことを好きになってしまって、それが行き過ぎてしまっただけだと思うんです。なので、垣内は純粋だと思いますし、僕の中では決して悪いヤツではないんです」と語った。そして大家役のしのへさんは「監督から『とにかくご飯をずっと食べててください』って言われました。でも、ご飯だけを食べ続けるのは難しいじゃないですか。友人からもらったタクワンがすごく美味しかったので、『これならご飯を食べ続けられる』と思って、撮影現場に持ち込みました」というエピソードを披露した。
桐生さんは「撮影で使ったシェアハウスは、千葉県の松尾駅の近くにある僕の親戚の家で、小学生の頃の夏休みを過ごしたことのある思い出の場所なんです。新宿JAMというライブハウスも僕が高校3年の時にバンドを組んで初めてライブをやった場所。偶然だけど、去年の12月に撮影をして、その月末に閉店してしまいました」と、思い出がたくさんこの映画に詰まっていることを語った。
撮影中は出演者に「監督」と呼ばせず、アットホームな雰囲気を築いた桐生さん。誰からの発言にみんなでツッコミ、みんなでフォローもする。この日のトークからもその撮影現場の楽しい空気感が伝わってくる。
「撮影現場が実際こんな雰囲気だったので、桐生さんが『監督と呼ばないで』と言ったのと同じように、私もありがたいことに主演をやらせていただきましたが、全く主演だと思わないくらいリラックスして演じることができました。ここまでゆったりと、自分の好きな感じでお芝居に臨める現場は多くないと思いますし、すごくうれしかったです」と、小島さんが締めくくり、初日のトークイベントが終了した。
初日は満員で立ち見が出るくらいの大盛況となった。21日間連続トークイベントはまだまだ続く。6月3日(日)以降もゲストを迎えて、撮影中のエピソードなど、いろんなトークが展開する。
取材・文/田中隆信
週刊東京ウォーカー+編集長 野木原晃一