定年退職を機に仕事一筋だった男が居場所を求めて奮闘する姿を描く映画『終わった人』。その舞台挨拶が6月10日(日)大阪の梅田ブルク7で行われた。主演の舘ひろし、本作のメガホンをとった中田秀夫監督が登壇した。
舘は「『万引き家族』ではなく、こちらを観賞してもらえてよかった」と冗談交じりに挨拶。観客から万雷の拍手で迎えられ「皆さんに楽しんでもらえてよかった」と安心した表情を浮かべた。
「吉本新喜劇や松竹新喜劇などを見ていて藤山寛美に傾倒していた子ども時代だった」と語る中田監督。「『リング』などのホラー映画のイメージが強いけど、初めて人情喜劇を正面から描けて光栄だった」と話すが、観客の反応を知りたくて東京の舞台挨拶では一緒に観賞していたという。笑ってくれるかドキドキしながら見ていて、要所で起きる笑いに上手くできてよかったと一人で感動していたと明かした。
そんな笑いを支えるのが舘のアドリブだったという本作。妻に家を追い出された舘が演じる主人公の田代壮介。人生で初めてカプセルホテルに入ったという舘は台本では「棺桶みたいだな」となっているところを思わず「結構落ち着くな」と呟いてしまったという。これを監督が気に入りそのまま本編に採用したことを語った。
監督は「コメディには身体と言葉のセンスが必要で舘さんはその両方を兼ね備えている。娘役の臼田あさ美さんに秘密にしていたことを見抜かれたシーンでも膝をガクッと落としてしまう。こういったセンスが素晴らしかった」と絶賛。それに対し舘は「躓く芝居ができなくて、誤魔化しただけです」と恥ずかしそうに白状した。
最後に一言コメントを求められた監督は「自分で提案した企画で、自分の年齢的に大学の友人達がもうすぐこの主人公のような状況になると思うと親近感が湧く内容でした」と要領を得ない感じで話し出すと、舘は「監督は東大卒なんで、真面目すぎるコメントですね」とすかさずフォローし、会場は笑いに包まれた。そんな舘のアドリブに監督も安堵の表情を浮かべた。
桜井賢太郎