サッカーのロシア・ワールドカップ(W杯)のグループHの第2戦が、6月24日(日)に行われた。日本代表はセネガル代表と対戦し、乾貴士と本田圭佑のゴールで2-2と引き分けた。
日の出の勢いでキャリアを築き上げてきた本田らも、すっかりベテランである。
今大会のチームの平均年齢は28.26歳で、過去の出場大会で最高齢。平均年齢を上げる側と移った彼らの存在もあって、メディアからは「おっさんジャパン」「年功序列ジャパン」などと揶揄されることもあった。
確かに、若い頃のように左足を振り抜いてゴールを強襲したり、タックルに来た選手を逆にはね飛ばしたりするシーンは少なくなったかもしれない。
とはいえ、年齢を重ねる過程も能力を失うことばかりではなかったはず。代わりに身につけたのが、勝負どころを嗅ぎ分けるような“独特な嗅覚”とでも言えるだろうか。
「やっぱり持っていますね。彼は“W杯に愛された男”じゃないですか」とは、盟友である長友佑都の本田評。78分に乾貴士のクロスから同点弾を挙げたその本田は、匂いを嗅ぎつけたかのように、フリーでゴール前に待ち構えていた。
微妙に跳ねるグラウンダーのパスを、宝物を扱うかのように左足で丁寧に当てた。本人は試合後に、「外していたらまずいシーンだったので、決められて良かった」と振り返ったが、勘所を抑えたポジショニングとさび付かない技術をもって、絶好機にも慌てることなくしっかりとネットを揺らした。
かつての大黒柱にも、今大会ではチーム内での立場に変化が訪れている。出番を待って、ベンチに座る試合が続く。しかし、思いのほか前向きに考えられているともいう。
理由は、「W杯がそうさせてくれていると思う」。
そんな世界中が注目する大舞台で、日本人初となる3大会連続となる得点。日本人記録の通算ゴールも4点まで伸ばした。
「おっさん連中がたたかれ続けたので、格別でしたよ。あれは岡崎(慎司)が前でつぶれて圭佑の前に転がった。ベテラン選手たちが得点してくれたのは、自分のことみたいにうれしいですよ」
そう語る長友も、得点時にゴール前で2度相手GKと競り合ったことでチャンスにつなげた岡崎も、そろって1986年生まれ。批判すらもパワーに変えてしまうような、まさしく“おっさんの逆襲”とも言える一撃でもあった。
たとえ、若さ溢れる瑞々しい鮮やかさはなかったとしても、意地や経験が濃縮された味わい深さがある。そんな匠の技が、日本に貴重な勝ち点1をもたらすことになった。
小谷紘友