スターに感化された男が生む、最高峰のカレーパン

東京ウォーカー

パンにはさまざまな種類があるが、ワンジャンルで盛り上がっているものの一つがカレーパンだ。事実、「日本カレーパン協会」なる団体が存在し、2016年からはカレーパングランプリやカレーパン博覧会が開催されている。その第1回グランプリの東日本揚げカレーパン部門で最高金賞に輝いた店が、今回紹介する「Boulangerie Shima」(ブーランジュリ シマ)。通称「しまぱん」。

一番人気はカレーパンだが、同店には多種多様なパンがズラリ。ペストリーでは「けしの実デニッシュ」(216円~)が人気だ


パン作りとは時間との対話である


Shimaのカレーパンは270円。最大の特徴は注文ごとに揚げてくれること。店側の視点から考えれば、まとめて揚げた方が効率はいい。ただ、それでも揚げたてのおいしさを提供したいというのが同店の信念なのだ。そのため、なるべくお客を待たせずにベストのおいしさを提供できるような工夫が施されている。

【写真を見る】「チキンスパイスカレーパン」(270円)。このほかに毎月第一土日はスペシャルカレーパンデーとして、バターチキンやホテル系など個性的なカレーパンを販売している


パン作りとはすなわち、時間との対話だ。生地は放っておくとどんどん発酵が進む。都度揚げたてで提供するには、生地の発酵をどうコントロールすればいいのか。中身のフィリングはどれぐらいの量がベストで、短時間で生地に熱が通る厚さは何ミリなのか。そういった細部にまで調整を繰り返し、揚げ時間が通常は裏表で5~6分かかるところを、油に沈めて約3分で完成するカレーパンを生み出すことができたのだ。

スターに感化されてフィリングの味が異次元レベルに進化


とはいえ、Shimaのカレーパンが最高金賞になったのは、揚げたてだからという理由だけではない。フィリングのクオリティも異次元レベルでおいしいのだ。それは、とある出会いがきっかけで進化することに。その人とはカレー界の第一人者で“カレースター”の異名を持つ水野仁輔さんである。

店主の島 健太シェフ。水野仁輔さんとの出会いでカレーに目覚め、以来パンのほかにスパイスの研究にも勤しんでいる


2007年にオープンした同店。初期のカレーパンは焼きカレーパンだった。約2年が経ったころ、とある取材で水野さんと邂逅。これを機に連絡を取り合うようになり、水野さん手作りのカレーをごちそうになる機会が訪れる。島さんはこのとき、水野さんのカレーとスパイス使いに大変な衝撃を受け、以来独学で研鑽を重ねて自らの味を進化させる。揚げカレーパンにしたことや、揚げたてで提供することにしたのも、その過程によるものだ。

50種類ほどあり、すべてスパイスやハーブ。パン店でこれだけ用意していることも珍しいだろう。その理由の一つが、カレーパンに使う以外の素材もそろえているから


数年後、また水野さんが同店にやってきた。ただし事前にカレーパンの進化は伝えていない。あえて自分から言うことではないと思ったからだ。そして水野さんは当然の如く、おいしくなっていて驚いた。出た言葉は「僕が最も好きなタイプのカレーパン!」。そりゃあそうだろう。カレースターの味を目指したのだから。

東京ウォーカー編集部

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