花火大会を毎年続けていくには?ハナビスト・冴木一馬が解説

東京ウォーカー(全国版)

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今年限りで開催中止が決まった岸和田港まつり花火大会(大阪府)


2018年6月1日、大阪府岸和田市は、花火大会「岸和田港まつり花火大会」の今年限りでの中止を発表した。同大会は昭和28年から続く歴史ある花火大会で、泉州地区を代表する花火大会であると同時に岸和田市民の誇りでもあった。

また、奈良県の葛城市でも6月22日、例年7月に開催されていた「葛城市納涼花火大会」の中止が発表された。理由は財政難と、来場者の増加にともなう安全確保や交通渋滞などの問題が深刻化したことだという。

1990年代から情報誌などで花火特集が定番化したことにより、花火大会の人気はずっと右肩上がり。年々観客は増加するとともに、ほとんどの市町村で花火大会を行うようになった。その一方で、財政上の問題や安全上の問題、その他さまざまな理由で開催されなくなる大会も見られるようになった。

花火大会の開催目的はさまざまある。市民サービスの一環の場合もあれば、他地域から観客を呼び込み、経済効果を狙うものもある。ただ、いずれの場合にせよ、「有料席」「プレミアムシート」など名称こそ異なれど、“お金を払って花火を見る”というのが今では常識になりつつある。

有料席の最大の利点は、暑いうちから場所取りをしなくても済むということ。人気の花火大会で良い見物場所を確保しようとすれば、それこそ午前中からブルーシートを抱えて場所取りに走らなければいけない。また、有料席にはお弁当やドリンクなども付いていることが多く、荷物も増えないので行きも帰りも身軽でいられるというメリットもある。

大会主催者側は、情報誌などで大きなスペースで扱ってもらうために玉数競争に走り、予算を確保するために次々と有料席を作ってきた歴史がある。しかし、ここにきて観客が増えすぎたことでさまざまな問題が起こるようになってきた。

【写真を見る】大会の規模が大きくなるにつれて、開催・運営にかかるコストもふくれ上がっていく


地域としては経済効果を考えると1人でも多くの人に来て欲しいわけだが、警備費等の増加で逆に運営資金の確保が困難になり中止に追い込まれるケースもある。観客を集めれば確かに経済効果は絶大だが、そのぶん他の諸経費がかさむため割に合わなくなるのだ。

その結果、主催者によっては逆に開催情報を発信しなくなったり、また小さく扱ってもらうために玉数を少なく発表したり、公表しなかったりするケースも出てきた。私のところにも「安全上の問題から紹介しないでほしい」と複数の大会主催者から連絡をいただくことがある。このような公表されない大会はシークレット花火大会として、ネット上で局所的に話題になることが多い。

大会の規模と、開催・運営コストのバランスが花火大会を長く続けるための重要なカギ


ちなみに私の試算では、予算1500万ほどで、5~6万人の観客を呼び込む花火大会がもっとも効率が良い。観客は地域外からの観光客であることが前提だが、交通機関は電車や車を利用し、開催地周辺で宿泊したり食事を摂ったりお土産を買ったりすることで、街には5~6億円の経済効果が生まれる。これを年に10回行えば50億になる計算である。これぐらいの観客数だと、警備員の数も主催者は別として30名ほどで済む計算である。

もちろん、花火だけではなく、開催地自体にもそれなりの魅力がないと計算どおりにはならない。人気の名所や名物などと花火大会がコラボすることによって経済効果は発揮されるのである。

新たな花火大会を開催するのと同じように、花火大会をずっと続けるのにも苦労や問題はつきものだ。それでも毎年変わらず花火大会が行われることを願ってやまない。【取材・文/冴木一馬(ハナビスト)】

ウォーカープラス編集部

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