ベルギーが高速カウンターでブラジルに勝利、偉業を果たして掴んだ32年ぶりのベスト4

東京ウォーカー(全国版)

サッカーのロシア・ワールドカップ(W杯)の準々決勝が、7月6日(金)に行われた。ベルギー代表がブラジル代表と対戦。2-1と競り勝ち、32年ぶりのベスト4進出を決めている。

ベルギーがブラジルを2-1で下し、ベスト4進出


まるで優勝したかのように、喜びが爆発した。

選手たちがピッチにひざまずいて歓喜を噛みしめ、ベンチから弾けるように飛び出してくる。

「私たちは地球上で最も誇り高いね」とは、ベルギーのロベルト・マルティネス監督。興奮冷めやらぬという、上気した表情で会見場に現れると、「選手たちにはかなりタフな指示を与えたけど、最後の一秒まで信じてやり切ってくれたのは驚くべきことだね」と晴れやかに語った。

一方、31分にレーザービームのようなシュートでゴールを打ち抜いたケヴィン・デ・ブライネは疲れ切っていたのか、魂を抜かれたような様子。「ラスト15分は試練だったけど、僕らは勝利に十分なことをやったよ」と、控え目に喜ぶ姿に激闘の痕が残る。

喜び方こそそれぞれだが、やり遂げたのはとにもかくにも偉業である。それも、とびっきりの。

長いW杯の歴史のなかで果たせたのは、クライフのオランダやパオロ・ロッシのイタリア、マラドーナのアルゼンチン、プラティニやジダンのフランスといった正真正銘のスーパースターか、7-1とマシーンのように相手を蹂躙できるドイツといった限られたチームだけ。カナリア軍団と呼ばれるブラジルは、対戦国から見れば黄金のトロフィーの前に立ちはだかる大ボスのような存在である。

しかも、今大会のブラジルはロベルト・マルティネス監督が「最高のチーム」と称した通り、優勝候補の筆頭。プレミアリーグのトップクラブに所属する選手たちをそろえたベルギーですら、ほとんどの時間帯で押し込まれた。

そんな最強のカナリアを仕留めたのは、日本も餌食となった王国の十八番を奪うかのような高速カウンター。スピードや技術に注目が集まりがちだが、ロメル・ルカクが体を張ってボールを運び、最後は長駆したデ・ブライネが右足を振り抜いた一撃は、功名を譲れる犠牲心と仲間がボールを届けてくれることへの信頼があって成り立っていたりもする。

テクニックには覚えがあるはずの選手たちが、必死で体を張り、守備に奔走する。数多の国が挑みながらことごとく跳ね返されてきた、王国打倒を達成した一戦は、ブラジルのチッチ監督も「もしサッカー好きなら、この試合を見るべき。喜びが与えられるだろうからね」と褒め称える内容だった。

90年近い歴史を持ちながら、優勝となると8カ国だけがその栄に俗してきたW杯で、敵将からも太鼓判を与えられた赤い悪魔はどこまで到達できるのか――。

次なる相手は優勝経験あるものの、新鋭キリアン・ムバッペを擁してこちらも新時代の息吹を感じさせるフランス。いずれにしても、新たな歴史がすぐそこに迫っているのは間違いない。

小谷紘友

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