世界も注目!前代未聞の「日本」映画「ピース・ニッポン」中野裕之監督が壮大なテーマに挑んだ理由とは?

関西ウォーカー

 全国47都道府県・200ヶ所以上で撮影された映像を厳選し、日本全国の絶景と日本人の精神の神秘に迫る映画「ピース・ニッポン」。日本のルーツを紐解きながら日本人が知らない「日本の美しさ」をドラマティックに描いている。ありそうでなかった「日本」という壮大なテーマに挑んだ中野裕之監督に話を訊いた。

インタビューに応じてくれた中野裕之監督


釧路湿原の空中散歩、雲海に浮かぶ竹田城跡、最も美しい姿を狙って撮影された富士山、そして熊本地震によって崩落する前に撮影された天空の道など、後世に遺しておきたい日本の景色が詰まった本作。日本の自然感にフォーカスした「日本人の精神」、世界でも類を見ない季節の変化を巡る「日本の季節」、南から北へ、日本列島の奇跡の瞬間を紡ぐ「一期一会の旅」の3部構成で日本の魅力を伝える。小泉今日子と東出昌大が旅のナビゲーターとしてナレーションを担当している。

映画「ピース・ニッポン」メインビジュアル(C)2018 PEACE NIPPON PROJECT LLC


中野監督は映画「FOOL COOL ROCK!ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM」や「TAJOMARU」「SF サムライ・フィクション」の監督を務める一方、今井美樹、布袋寅泰、GLAYら有名アーティストのMVを手がけるなど映像作家としても活躍している。

約8年もの制作期間を経て完成した本作。動物や自然をテーマに映像作品を制作していた中野監督のライフワークとして始まった企画だったが、東日本大震災を機に意識が一変した。「日本を遺していかないといけない。日本を遺す運動を広げていくことが僕の使命だと思ったんです。震災が起こって自分にできることは何だろうと考えたとき、僕は映像作家だから美しい日本を遺す作品を発表することだって思ったんです」

映画「ピース・ニッポン」場面カット 熊本・天空の道(C)2018 PEACE NIPPON PROJECT LLC


美しい日本を遺すためにスタートしたが、日本の名所をカメラに収めることは容易いことではなかった。世界でも自然災害と多いとされる日本。地震や台風などの影響で、昨日まであった場所が突然無くなってしまうことも。その状況を踏まえ中野監督は、作品づくりの垣根を越えて日本を遺すことをプロジェクトにしようと決める。「一般の人たちがスマホなどで撮った写真を地図上にアップしてもらって、検索すれば簡単に閲覧もできる。日本人が日本の大切な場所を遺していくアーカイブとしてのプロジェクトを立ち上げました」

いいものや共感できるポリシーに関して人はシェアをする。そう信じる中野監督は、映像とITを活用しアーカイブ化する「ピース・ニッポン・プロジェクト」を開始させた。本作はあくまでも美しい日本を遺すきっかけにすぎないとも話す。「本作の役割は『喚起』なんです。作品を観て、綺麗な風景が好きな人は本格的なカメラで撮った写真をアップしてくれればいいし、綺麗な写真を撮るのが苦手な人は近所のいい感じの散髪屋さんなどを遺してくれればいい。映画を観ると『なんであの場所は入ってないの?』って思うはずなので、どんどんアップしてほしいです」

映画「ピース・ニッポン」場面カット 北海道・釧路湿原(C)2018 PEACE NIPPON PROJECT LLC


撮影にはドローンを使用。ただ美しい姿を撮影するだけでなく、自然の偉大さなど被写体の本質をさまざまな角度から映し出している。そのことについて中野監督は人それぞれ大事なものは違うと前置きしたうえでこう話す。「風景よりも人に対して興味をもつ人もいる。みんな花が好きだと思っていたら大間違いで、花に興味のない人もいる。男女問わず、それぞれの思い出の場所とか、何処かしら必ず心に響くシーンがあるみたいです」

自然を被写体にしたことで、自然に対する価値観が大きく変化したと明かす中野監督。「マイナス20度の雪山で星空の撮影をしているとき、夜があることって1億年前でも変わりようのないことだってふと思ったんです。空気の変わり目とか風の吹き方で雨が降りそうとか、日本人は自然のさまざまなことを熟知している。そういったことが美と繋がっているような気がして、自然に対する美の感性がみなぎっているのは日本人の特性だと思うんです」

映画「ピース・ニッポン」場面カット 京都・瑠璃光院(C)2018 PEACE NIPPON PROJECT LLC


日本人でも知らない景色や歴史が詰まった本作。中野監督は日本に対しての興味を抱いてもらえることがとにかく嬉しいと話す。前代未聞ともいえる「国」をテーマに本作の話題性は海外にまで飛び火した。「北海道や屋久島の作品をつくろうと思えばできるんですよ。でも、ひとつにまとめたものって今までなくて。日本という国を題材にした映画自体が初めて。国をテーマにした映画って世界にもないんです。海外の大手動画ストリーミングサービスから『そのフォーマットが欲しい』って言われたときは驚きました」

本作を観ると、四季の移ろいなど私たちの生活に馴染むすべてのことが愛おしく感じる。もう一度、日本に恋してほしいと中野監督は願う。「日本には自慢すべき自然や豊かな土地がある。それって大事なことで誇らしいはずなのに、日本人はそれをすごく浅く見ている。この作品は完全に日本人に向けてつくった作品です。この作品を観れば、日本人に生まれてよかったと感じてもらえるはずです」

映画「ピース・ニッポン」場面カット 栃木・華厳ノ滝(C)2018 PEACE NIPPON PROJECT LLC


映画「ピース・ニッポン」は、7月14日(土)より梅田ブルク7、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸ほかにて全国ロードショー。

山根翼

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