米国大手たばこメーカーのフィリップ モリス インターナショナル(以下、PMI)は7月18日、加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」の最新臨床試験結果を都内で発表した。気になるその内容だが、紙巻たばこからIQOSへの切り替えが循環器疾患や呼吸器疾患、がんなどに関する“生体応答が改善する”であるというものだった。
リスクを低減する可能性のある製品“RRP(Reduced-Risk Products)”として、2014年11月の発売以来、紙巻たばこに変わる選択肢を愛煙家に提供してきたIQOS。PMIでは、これまで7年以上に渡り実に3000億円を超える資金を投じ、17の非臨床試験と10の臨床試験を行うなど、IQOSに関する科学的実証を進めているのが現状だ。
今回、発表された曝露反応試験(ERS:Exposure Response Study)は、2015年3月から2016年9月にかけて、米国内の20施設にて数回実施された6カ月間の追跡調査で、日常的に紙巻たばこを喫煙する成人喫煙者984人が参加して行われたもの。
平均すると、年齢が45歳、1日の喫煙本数19本、喫煙歴26年の被験者らを2つのグループに分け、紙巻たばこを吸い続けた場合(496人)と、試験開始以降IQOSに切り替えた場合(488人)を比較。喫煙による疾病の8割を占める循環器系、呼吸器系、がんという8つの主要臨床リスクエンドポイントに対して、IQOSがどのような影響・変化を与えるかを検証した。ちなみに、煙が出ない製品のリスク低減の可能性を問うために、この規模で臨床試験が行われるのは世界で初めてのことだという。
その結果、IQOSに切り替えた場合、脂質代謝に影響するHDL-C(善玉コレステロール)や、酸欠状態により頭痛・めまい・嘔吐などの中毒症状を引き起こすCOHb(一酸化炭素ヘモグロビン)、発がん性物質のTotal NINAL(たばこ特異的ニトロソアミン総量)などの主要臨床リスクエンドポイントに対する数値の改善が確認され、禁煙した場合と同じ方向に向かって変化しているとのこと。加えて、8つの主要臨床リスクエンドポイントのうち、HDL-Cなど5つの項目で、紙巻たばこの喫煙を続けた場合と比べて統計的に有意な差が見られたという。
これらの検証結果を受けて、「IQOSに切り替えた場合、喫煙疾病に関与する主要臨床リスクエンドポイントにおいて改善する傾向にあることが分かりました。この結果は、IQOSへの完全な切り替えが社会全体に与える悪影響や病気になるリスクを低減できる可能性の証明に向けて一歩前進できた」と、PMI サイエンス&イノベーション、R&Dサイエンティフィック・メディカル・アフェアーズ、ディレクター兼医師のパトリック・ピカベット氏は語った。
今回の臨床試験結果は、PMIがIQOSの米国販売に向けてFDA(米国食品医薬品局)に申請しているIQOSに関するMRTP (リスク低減たばこ製品)の科学的エビデンスの一部として6月8日にすでに提出済み。だが、FDAによるIQOSのMRTP及びPMTA(販売前申請)についての最終判断はまだ明らかにされていない。ただし、1月に行われたPMIが提出したMRTPのエビデンスについて議論するFDAの外部専門諮問委員会では、複数ある設問のうちIQOSが体内への有害成分の侵入を減らしたかという問いに対して、9人の委員会メンバーのうち8人がYESと投票するなど、米国でのIQOS販売を目指すPMIにとって心強い結果を得ている。
世界中で進む禁煙への流れの中、紙巻たばこに変わる代替アイテムとして、日本国内ではすでに500万人以上が愛用しているIQOS。今回得られた検証結果は、世界中でさらなるIQOSへの切り替えを促す=社会全体に与える悪影響や病気になるリスク低減につながるきっかけになるのではないだろうか。
安藤康之