神楽坂の目抜きどおりから、横道を少しはいったところにその小さな店はある。この地で17年、昔に比べて随分とカジュアルになりつつあるこの街の変遷を見守ってきた神楽坂 貞だ。
神楽坂といえば、料亭も多く大人な街のイメージ。そんな場所にある店はさぞ敷居が高いのではと思ってしまうが、こちらは初めてでもふらりと立ち寄りやすい。オープン当初はまだまだ大人の街のイメージが強く、この辺りに雑貨を扱う店ができることはあまりなかったそう。
“街のイメージ”を大切にしたラインナップ
そんな先駆けの店を手掛けた店主の日野貞明さんは元々この辺りのご出身。靴の会社を退職後、自分の店を開くにあたって、幼い頃から親しんだ神楽坂を選んだ。「せっかくここに店があるから、街の雰囲気に馴染むようなもの、それを意識して選んでいます。ベースはやっぱり大人の街なので」と店主。
ピアスやハイヒールに混ざって、注染の手ぬぐいなど和の小物が並ぶのも、神楽坂らしいポイントの一つ。共通するのはどれも人の手で作られたものであり、あたたかみを感じる“作品”とも呼べそうなものばかり。また、ベーシックな色のものだけでなく、遊びがきいた明るい色の小物や服があることも、神楽坂の華やかなイメージを連想させる。
特に大阪の履物店、菱屋に別注したオリジナルの履物はご近所の方にも人気で、神楽坂の居酒屋などはみんなこれを履いてくるので、どれが誰のものかわからなくなることもあるそう。
新しいものを取り入れ続けるから、人が絶えない
そのほか、店の一角ではテキスタイルやキャンドルなどさまざまなジャンルの作家をゲストに月ごとに展示を開催。7月はイラストレーターでフォトグラファーのキタムラノリチカさんのTシャツ展示が行われている。
今ではオープン当時からのお客さんが息子さんと訪れ、親子2代でのお客さんになったという方もいるそう。そんな風に愛されるのも、街のイメージを守りながら店づくりをしてきたからだろう。ここに来れば何かある、そんな風に思わせてくれる神楽坂のハブのような存在なのだ。
東京ウォーカー編集部