映画「キャタピラー」の若松監督と寺島しのぶが戦争について語る!

関西ウォーカー

戦場で四肢を失った夫・久蔵と、彼の世話をする妻・シゲ子の姿を通して、戦争の恐怖とおろかさを描き出す「キャタピラー」。シゲ子を演じ、ベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀女優賞)に輝いた寺島しのぶと、メガホンを取った鬼才・若松孝二監督が本作、そして平和への思いを語ってくれた。

─沖縄では全国に先駆けて、6月19日に公開されましたね。

若松「6月19日は65年前、ひめゆり部隊が塹壕の中で自害をした日なんです。なので、どうしてもその日から沖縄で上映をしたかった。日本の権力者が本土を守るために、沖縄を捨てた日でもありますから」

寺島「この作品をやっとみなさんに観てもらえる。この映画を代表して、私がベルリンで賞をいただき、それをきっかけに観てくださる方が増えるといいなと思います。監督の思いが全面につまっている映画なので、日本人として1人でも多くの方に観ていただきたいです」

─今回、シゲ子役に寺島さんをキャスティングされた理由は?

若松「次に映画を撮るなら『キャタピラー』だと決めていました。シゲ子役には映画の大画面で存在感があり、ノーメイクで役を引き受けてくれるのは寺島さんだけだと思ったんです。夫婦役の俳優が決まった瞬間“絶対いい映画になる”と自信がつきました」

─寺島さんは本作でかなりの体当たり演技を披露されていて、驚きました。

寺島「身を削ってまでやらなければと思った作品は久々でした。みんなが楽しめる娯楽映画も大切だとは思いますけど、そうじゃなくインディペンデントで監督の思いがこんなにつまった映画に出られることはうれしかったです。ベルリン国際映画祭の銀熊賞も、登場人物1人1人の姿が丁寧に描かれたすばらしい脚本を持ってきてくださった監督のおかげだと思っています」

─シゲ子は“お国のために…”と表向きでは言いながらも、本心はそうではないさまざまな思いが渦巻いています。そんな複雑な役を演じる寺島さんに、演出上で言われたことはありますか?

若松「特には話をしていませんね。ほとんど寺島さんにおまかせです」

寺島「台本を読んで準備をしていましたけど、自分でできるのはそこまでで…。あとは撮影現場で監督の考えを聞いたりして、お芝居をするといった感じでしたね。いかんせん、監督はリハーサルをされない方で、現場に入った瞬間に“本番お願いします!”って言われて(笑)。リハーサルなしでいきなり本番なので、すぐにテンションを上げなきゃいけないという現場は初めてでしたね。でも、夫の久蔵と一緒にいると、自然とシゲ子の気分になりました」

─では最後に、この映画で観客に感じてほしいことを教えてください。

若松「私は1カットでも、自分の思いを伝えることのできるのが映像だと思っていて、前作「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(’08)はすごく上映時間が長かったですが、今回は時間を短くし内容も凝縮しました。なので、最後まで眠らないでしっかりと観てほしいなと思います」

寺島「自分自身、ここまで戦争の恐怖を感じたのはこの映画だけ。なので“戦争は怖い”という漠然としたことでもいいので、感じてほしいです」

【取材・文=リワークス】

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