今年1月に企画発表がなされた周防正行監督の映画最新作『カツベン!』(仮)が、いよいよ9月18日にクランクインし、9月21日には東映京都撮影所にて、出演者や概要が明かされ、若手注目俳優の成田凌、若手実力派女優の黒島結菜、竹中直人、渡辺えり、周防監督が登壇、現場会見が行われた。
今回の映画のテーマは「活動弁士」。大正時代、映画がまだ無声映画(サイレント映画)のころ、日本では映画にあわせて一人数役、女子供まで巧みに声色を使い分け、独自の"しゃべり"で物語を作り、雰囲気を盛り上げた活動弁士、通称"活弁"がいた。映画を見に行くというよりも、活動弁士のしゃべりを聞きに行くことが主流になるほど熱狂的であった。
本作は、そんな時代を舞台に、活動弁士を夢見る青年が、とある小さな町の映画館に流れついたことから始まるお話。超満員の映画館、隣町のライバル映画館、再開を果たした初恋相手、大金を狙う泥棒、ニセ活動弁士を追う警察までをも巻き込み【活弁アクション】×【恋】×【笑い】の要素満載のノンストップエンターテイメントとなる。
主演の成田凌は本作が映画初主演!
成田は、活動弁士のトレードマークであるフロッグコートに身を包み、ヒロインの黒島は若々しいハイカラな和装と、二人とも少し緊張した面持ちで登場。一方、周防組ではお馴染みの竹中、渡辺がリラックスした表情で、監督と若い二人を挟んで会見がスタートした。
まず、本作を撮ろうと思ったきっかけはという質問に「映画の始まりの物語をエンターテイメントとして、皆さんに見てもらい、映画の歴史を感じてもらえたらいいなという気持ちが強かった」と監督。
そして、主演・ヒロインのキャスティングについては「日本映画の最初のように皆が初々しいところが残っている若い俳優さん」と焦点を絞り、男女ともに100人ずつ、3か月にわたってオーディションが行われ結果、二人を選んだ。「成田さんは、実を言うと、この時代には背が高いんですけど、会った時の素直な感じと、キチンと弁士として映画を解説できる感じを知りましたので、彼の才能を信じてキャスティングさせてもらいました」と打ち明け、続けて「黒島さんもやっぱり初々しいところ」とし、「この映画の中でも駆け出しの女優というか、本当に女優になれるかどうか分からないという役柄でしたので、彼女の初々しさと可愛らしさですね。そこは一番の判断基準でした」と明かした。
成田は、活動弁士を夢見る青年・染谷俊太郎役を演じる。周防組での初主演について「この世界で働いている人間としては誰もが羨むようなことだと思うし、共演の方々も誰が主演でもおかしくない方々で、もちろんプレッシャーを感じる部分はあるんですけど、それより安心感と信頼があるので、僕は何があっても、這いつくばってでも真ん中に立っていようと思っています」と真っ直ぐ前を向き、これからの意気込みを語った。弁士については、講師となる弁士によって特徴が異なり、そこが見所。成田は役作りにあたり、現在活躍中の活動弁士 坂本頼光さん(39)指導のもと、2か月半練習中という。昔っぽい喋り方の練習や、煙草を絶ち、高音が出やすいようにと毎日備えているという。しかし、「監督には、褒められたこともけなされたことも未だになく、ただ、無言で写真を撮られ続けています」と笑いを誘う場面も。
黒島は、俊太郎(成田)の初恋相手・栗原梅子役。会見日が、黒島の撮影初日で、役どころについて「凄く純粋で一途な女の子、活動写真(映画)をみて女優になりたいっていう夢もあって、その時のちょっとした恋心みたいなものを、ずっと大人になっても純粋に持っている女の子なので、これから演じるのがとても楽しみなんです」と期待を寄せていた。オーディションについては、今までの経験上受かることが少なかったようで「不思議な気持ち」と表現し「今後、私の女優人生の中でも、すごく貴重な経験になるんだろうなという気持ちで、撮影を頑張りたいです」とフレッシュな気持ちを聞かせてくれた。また、周防監督の前作のオーディションも受けて落ちたことを明かし、その時の寡黙なイメージから、一変、「穏やかで優しくて、一緒に話して、同じ空間にいると安心する。とっても心地いいです」と、二人からは初々しさが溢れていた。
『Shall we dance?』と役名が一緒!?
周防監督の作品に、竹中は今回で6作品目、渡辺は3作品目となり、なくてはならない存在の二人。そんな二人は『Shall we dance?』の際は、天敵役として共演。そして、今回は、映画館である青木館の館主・青木富夫役に竹中、その妻・青木豊子役で渡辺えりが夫婦役として出演する。二人が話し出すと渡辺のマシンガントークが始まり、笑いが止まらない。
渡辺は過去作を振り返り「23年前にやった『Shall we dance?』は、(竹中が)青木富夫って名前なんですよ。私の(高橋)豊子ってのも『Shall we dance?』の名前で、それが今回は青木豊子。おんなじ名前になって夫婦になってるってのが面白くて」と遊び心に感動。更にホテルにチェックインした際には「青木豊子様」となっていたエピソードを披露。「監督の遊び心が面白い」と話したが、すかさず監督が「知らない」と吐露。「え!知らなかった?」と驚く渡辺に、「監督が取るわけないだろ、ホテルを。制作のスタッフだろ、取るのは」と竹中が諭しながら「制作部だよ!何言ってんの」と鋭い突っ込みを入れ、現場を沸かせた。
そんな二人を見て、成田は「こんなこと言ったら失礼に当たるかもしれないんですけど、昔っから見ていた方々なので、絶対に共演したいと思っていた二人でもありますね。そこは一緒にやるとやっぱり面白いな、流石だな。って思う部分ばかりなので、普段会話してる時も、『Shall we dance?』が23年前とか。僕はまだ1歳」と聞いた途端、竹中と渡辺は驚きの表情で「まだ、24だもんね?はぁー」と大きく力が抜け、頭を抱える。しかし、成田にとっては「一線で活躍されている方なので、この場にいても本当に流石だなとしか思わない。もう大船に乗った気持ちで、この期間中は、這いつくばってしがみついていければな」と改めて決意。
黒島は「日本映画界の中でもオリジナルで、凄く珍しい作品になるんじゃないかな」と期待を込め、「皆さんの足を引っ張らないように、しっかりついて行って演っていきたい」と両手でマイクをしっかり握りしめ、日本映画の歴史の話でもありますし、たくさんの方に見ていただけたらすごくいいな、絶対見ていただきたいと締めくくった。
もはや脇役じゃない!実力派俳優陣が勢ぞろい!
もちろん、登場人物は会見の4人に留まらない。永瀬正敏、高良健吾も活動弁士に挑戦する。その他、青木館のライバル・タチバナ館の社長に小日向文世、その娘役に井上真央、大金を追う泥棒に安田虎夫、ニセ活動弁士をいう警察に竹野内豊と役柄からも活動弁士とは別のコメディーチックなアクション性もうかがえそうだ。
撮影は年内の予定。公開は2019年12月を予定している。
森田直子