新たな商品開発やお店を立ち上げる際に、クラウドファンディングを活用するケースが散見される昨今。パン店でもその実現例は少なくない。今回紹介するのはそんなプロジェクトから誕生した「神田川ベーカリー」だ。その背景と、人気メニューを中心に紹介していこう。
地域の憩いの場を目指したパン店づくりに有名シェフも賛同
同店のルーツは、雑司が谷にある「あぶくり」というサンドイッチとコーヒーのカフェ。ここは店主の嶋田玲子さんが「地域で暮らすお母さんたちに、ほっと一息つく場に使ってもらえるように」という思いでオープンした経緯がある。そのネクストステップとして考えたのが、より多くの人が気軽に利用しやすいパン店だった。
ただ、パン店の開業は設備投資がほかよりやや大変。そこで活用したのがクラウドファンディングだ。「あぶくり」のファンを中心に多くの賛同が集まり、ついに2017年の2月22日にオープン。なお、立ち上げに尽力したキーマンの一人が、鳥取の名店「ル・コションドール」の倉益孝行シェフだ。「あぶくり」のスタッフが現地で倉益シェフからパン作りを学び、開店初日にはシェフ自身も駆けつけて「神田川ベーカリー」はスタートしたのである。
毎日食べたくなるおいしさの真骨頂が「塩パン」だ
同店の生地の特徴は、嶋田店主と縁があった岩手県紫波(しわ)町産の「ゆきちから」を小麦の一部に使っていること。酵母はフランスの伝統的なルヴァン種を使い、自然なおいしさに仕上げている。メニューで一番人気が高いのは「塩パン」だ。卵は使わず、バターと脱脂粉乳で仕上げた食パン系の生地がべース。これで有塩バターを包んで焼き、最後にヒマラヤのピンクソルトをあしらう。
日々、約30種類のパンが並ぶ同店。大きな特徴の一つが、カンパーニュというフランスの郷土パンが種類豊富なこと。定番の「パン ド カンパーニュ」ホール1047円、ハーフ475円のほか、細長い形が斬新な「3種ナッツとホワイトチョコのカンパーニュ」270円をはじめ、オリジナリティの高いタイプもラインアップされている。
本場のカンパーニュを目指すなら、食感は硬めで酸味の効いた味わいに仕上げるのが一般的だろう。ただ同店は住宅街にあり、子供からお年寄りまで日常食として食べられるパンがモットー。そのため、ずっしりとしていながらもやわらかく、それでいてもっちりとした豊かな弾力を楽しめるのだ。
そんな、毎日食べたくなるおいしさの真骨頂が、同店の場合「塩パン」なのかもしれない。香りが芳醇で、ほんのりした甘さと豊かな塩味が調和。さらにはメリハリのある食感で、飽きることのない味わい。たまには都電にのって、同店を訪れてみてはいかがだろう。
東京ウォーカー編集部