「蜩ノ記」で直木賞を受賞した葉室麟(福岡県出身)の名作「散り椿」を、日本映画界の巨匠・木村大作が映画化。本作で主人公・瓜生新兵衛を演じた岡田准一と木村大作監督が公開直前の9月25日(火)に来福し、舞台挨拶に登壇した。
舞台挨拶が行われたのは公開直前の9月25日(火)。この日の前夜は緊張して一睡も出来なかったという木村大作監督は「精神的に、とても弱っています(笑)。昨日は、一睡も出来ませんでした。封切りを迎えて、ワクワクする気持ちもあるんですが、たくさんの方に観ていただけるか心配。ワクワクさせてくれるのはみなさんの力なんです」と今の心境を吐露。
主演の岡田准一は「最近は大作さんと一緒にいることが多いですが、特にこの1週間くらいはセンチメンタルになってて、本当にしおらしいんです(笑)。やはり全身全霊をかけて映画を撮られているのを僕らは間近で見ていますし、全部の責任を負うつもりで映画を撮られていますから、緊張されていると思うんです。驚くほど、しおらしいですよ」と語り、監督の緊張をほぐす一面も。
また、本作は福岡県出身の小説家・葉室麟が原作。岡田は前作『蜩ノ記』でも葉室作品で主演を務めている。「僕自身、葉室麟さんに特別な思いがあります。前作『蜩ノ記』で日本アカデミー賞を獲らせていただきましたし、撮影現場にも来ていただいて、『岡田くんだったら、自分の作品はどれでも映画化していいよ』と、冗談でも言ってくださったりして。とても応援してくださっていた作家さんでした。実はこの作品も観ていただいていたんです。一緒に食事をした時にも、映画が完成したことをとても喜んでくださっていたので、福岡でそのご報告させていただけるのは、すごくうれしいです」と葉室麟との交友についても語った。
木村大作監督は、今作の映画化の決め手について「映画のラストシーンで、瓜生新兵衛役の岡田さんが言う『大切なものに出会えれば、それだけで幸せだ』という言葉は、原作にあったセリフです。自分の実生活も、18歳で映画界に入って、最初に出会ったのが黒澤明監督、そして高倉健さんという名優にも出会う事ができました。今、79歳になっていちばん新しく出会った大切な方は葉室麟さんです。自分自身にも共通する思いがあったからこそ、このセリフで映画化を思い立ちました。高倉健さんも葉室麟さんも福岡の生まれですからね。その福岡で上映できるというのは感無量です」。
本作ではエンドロールに出演者・スタッフが直筆で名前を書いている。その意図について木村大作監督は「みんなで作った映画ですから、それぞれに自筆でサインをしろと(笑)。僕だけが責任を取るのじゃ無くて、俳優さんもスタッフも全員で責任を取ろうという思いでやりました。ですが、スタッフも俳優さんもみなさん喜んで、自筆のサインをしてくれました。そういう細かいところまで考えながら映画一本一本を丁寧に作っています」。直筆で名前を書いた事について岡田は「主演としての気持ちを込めて書きましたが、今回は(エンドロールに)何回も名前が出てくるので、それを見て習字を習おうかと思いました。大作さんのサインはカッコいいんですよ。僕もそんな風に書けたらと(笑)」
最後に一言挨拶を、と求められると監督は「観たらみんなに宣伝してください!(笑)」とまさに一言。岡田准一は「大作さんと一緒に仕事ができて良かったとスタッフ、キャスト一同が思いながら、撮影に臨んでいました。若い僕たちに対して、大作さんからたくさんのものを投げかけられているような現場でした。それが映画に出ていればいいなと思っていますし、感じてもらえるとうれしいです。沁みる映画なので、じっくりと観ていただけたらうれしいです」と舞台挨拶を締めくくった。
映画『散り椿』は、現在全国公開中!
文乃