選手を支えるキラリと光る“最高のマネージャー”を発掘する連載。今回は“マネージャー”としてではなく“プレイヤー”として空手道部の女子選手たちをまとめている九州産業大学空手道部の女子キャプテン・川野えりさんが登場です。
空手道部にも当初はマネージャーを置いていましたが、『どうしても甘えが出てしまう。自分たちで出来ることはやろう!』という目標のもと、現在は選手たちが自主性をもって部を運営しています。
「監督コーチのいる・いないに関わらず、自分たちで率先して考えて取り組んでいこう、という考えがあります。監督から『自分たちでメニューを考えてやってみろ!』と言われる時があるので、男子のキャプテンとも話しあって、今、女子チームに欠けている部分とかをみんなで出し合いながら練習しています」
道場内に響きわたる『押忍!』
空手道部の部員は男子23人・女子12人。川野さんは女子キャプテンとして、女子選手たちをまとめています。活動は毎日、大学内の格技室で行われています。この日は18時から練習開始。アップに続けて2人1組になり、ミット打ちが始まりました。
ミットを打つ激しい音と選手たちの気合いのこもった叫び声が響きます。組み合う相手が変わる際には、必ず一礼し「押忍!」と声をかけ合います。ほとんど切れ目なく続く激しい練習とその気迫に圧倒されました。
空手道とは?
空手道は、沖縄にルーツをもつ武道。試合の際には防具をつけ、直接打撃せず寸前で止めるいわゆる「寸止め」でポイントが入ります。
九州産業大学空手道部は強豪として知られ、3年生の片山花女さんは世界大学空手道選手権大会の女子組手で優勝。世界チャンピオンとなっています!川野さんも九州大会を制し日本一を決する全国大会にも出場しています。
幼い頃から歩んできた空手道
川野さんの空手との出会いは幼稚園のころ。「兄が空手をしていて、自分も強くなりたいなぁと思って始めました。小学校の一時期、辞めたいなぁと思ったこともあるんですけど、そのまま続けていたら高校に入ってからもっと楽しくなって。大学でも続けています」
川野さんは高校生のころから杉野友厚監督のもとを訪ね、入部を志願したといいます。杉野監督から見た川野キャプテンは...?
「今年は彼女も4年生ですし、勝負の年です。選手としても素晴らしいですし、努力家ですし、リーダーシップも申し分ない。あえて欠点をあげるとしたら...何かなぁ、天然パーマ(笑)?普段はチョット抜けてるところもある、チョットだけ天然なところかな。ただ、間違いなく彼女は、九産大空手道部女子チームの魂ですね」
女子キャプテンとしての自覚
しばしの給水をはさんで、グローブとシューズを着用し組手(くみて)の練習が始まります。選手たちの動きにもさらに熱がこもります。時折、川野さんが練習を止め、他の選手たちへ指示やアドバイスをしていきます。「思ったことや気付いたことは言うようにしています」
練習中は、率先して大きな声を出し周囲を鼓舞し、さらに自分を磨いていく川野さん。「今は、まったくイヤになったりはしないです。強い選手の試合とかを見ていたら、うわスゴいなぁ、と勉強になりますし、自分もこういう技を試してみよう!という楽しみになります」
キャプテンとしての『極意』『ひみつ道具』
《キャプテンの極意》
「自分自身がブレないという事。練習中にもポイントを取られたり、負けたりするとブレてしまう部分がある。気持ちのゆらぎ、それはもう絶対にここでは見せないようにしています。自分がブレてしまったら後輩にも伝わってしまうので、それは強く意識しています」
《ひみつ道具》
「いつも練習前には、気持ちを上げるために音楽を聴きながら来ます。それから、道場には自分の私生活を持ってこない!というのを意識しています」
川野えりさんの『ここが最高!』
マネージャーのいない環境の中で、全体を気にかけ、後輩たちへの心づかいを忘れない、その姿勢が最高です!練習を離れても、積極的に後輩たちへの声がけを欠かさないそうです。
「自分のことでいっぱいいっぱいにならずに、ちゃんと周りを見ます。練習やりながらでも見ていれば『今、この子こういう考えしているのかなぁ』と気付くので、落ち込んでいる子がいれば声をかけるようにしています」
ブレない心
川野さんの成長を杉野監督はこう評します。「1、2年の頃は本当にもう揺れ動いていて。気持ちがブレることもありましたけれど、今はないですね。1年生の時からチームを引っ張ってきて、彼女を慕って後輩たちも入部してきてますし、彼女のおかげで今のチームがあります」
「ブレない」気持ちを持って、毎日の鍛錬に励む川野さん。11月の大会まで、空手道を突き進む川野えりさんの毎日が続きます!
山本真己