2019年3月に再始動する福岡市美術館の見どころをいち早く解剖!

九州ウォーカー

1979年の開館以来、福岡市民などに親しまれてきた「福岡市美術館」(福岡市中央区大濠公園)が、2016年9月の休館から満を持して、2019年3月21日(祝)にリニューアルオープンを果たす。改修部分や新たな注目ポイントなど、誰も知らない美術館の内部をひと足先に紹介しよう。

ロゴやシンボルマークを新たに設定。手書きの線は大濠公園のシルエット、ボックスは美術館を表している


リニューアルの目玉は、新設された公園側からのアプローチ


福岡市美術館は、日本近代建築界の巨匠・前川國男が手がけた建物(通称“前川建築”)として知られる。老朽化により、改修費用約55億円を投じて2016年9月からリニューアル工事に着工。建物自体の魅力は損なわず、“つなぐ・ひろがる美術館”をテーマに、今まで以上に魅力的なスポットへと生まれ変わった。最大の特徴は、庭園だったスペースにアプローチを新設し、公園側から1階への入館が可能になったところ。設計の意図を生かしながらも、今までよりも館内への入りやすさを意識している。夜間のライトアップも見逃せないポイントの一つだ。

【写真を見る】前川建築を踏襲しつつも、新設した大濠公園側からのアプローチによって、より入館しやすくなったサブカット撮影:(株)エスエス 上田 新一郎


美術館の2階への北口ルートは変わらず健在。ところどころにアート品が展示されており、人気の高い草間彌生の作品をはじめ、いくつかのアートを見られる。

公園側から2階ロビーへと続くエスプラナードは、以前と変わらない


木内 克の「エーゲ海に捧ぐ」と大濠公園を一緒に眺められる


日本でも有数の展示環境


建物だけでなく、館内にある展示スペースの拡充や機能が充実。特に古美術を中心に展示するコレクション展示室のライティングには目を見張るものがある。すべての照明のLED化や展示ケース内の色温度の調整など、国内でも最高水準の展示環境を実現。

新しくなった東光院仏教美術室。展示する重要文化財の仏像を360度から鑑賞できる


九州屈指の企画展を開催するフロア


国宝級の文化財から現代アートまで、多彩な企画展を実施する特別展示室。部屋全体を均一に照らすことで光のムラをなくし、作品本来の美しさで鑑賞ができるようになった。

特別展示室の一部。ガラスケースが大きくなり、光の透過性もアップ


LEDを採用した天井のベース照明。移動壁のレイアウト変更にも適応する


抜群の景観×一流ホテルがプロデュースする料理に満足


大濠公園を一望できるおしゃれなカフェやレストランで、食事が楽しめる。いずれもホテルニューオータニが運営する予定で、クオリティはホテル品質。展覧会が終わった時間帯でも営業しているので、鑑賞後の余韻に浸る場所としてもピッタリだ。

大濠公園を眺めながら食事ができるオシャレなレストラン。20時30分まで営業している※サブカットはイメージ


入りやすいオープンな雰囲気のカフェ。1年を通じてテラス席を設ける。19時まで営業※サブカットはイメージ


館内の1階中央に鎮座するグッズコーナー


オリジナルグッズを購入できるショップが2階から1階へと移動。江戸時代に味わいのある絵や書を完成させた聖福寺の禅僧・仙厓さんをあしらった付箋4柄セットや、所蔵品をモチーフにしたステーショナリーグッズなど、ここでしか手に入らないアイテムを数多く販売する予定だ。


伝統工芸品などをあしらったかわいらしいグッズ。みやげに最適だ※写真はイメージ


子供が楽しめるキュートなコーナー


久留米市在住の作家・オーギカナエ氏が制作したキッズスぺース。かわいらしいデザインは、美術館周辺の自然や所蔵作品にインスパイアされたもの。子供専用の休憩室などが充実したことで、子供連れでも安心して利用できる。

立寄りやすいキッズスペース。奥には授乳室もある


自然や所蔵品がデザインのモチーフ。マグネット式で取り外して遊べる


機能性に優れたホールの利便性がアップ!


180人を収容できるミュージアムホールも改装。今までは“美術”関連のイベントに制限してきたが、今後は講演会、演劇、コンサートをはじめとした“文化・芸術・学術”に関するイベント利用が可能になった。

向かって左手にあった花道を省き、各席にゆとりをもたせた


180席と車いすスペース2台分を設置。舞台照明や音響などの各設備を一新した


館内中央の階段を上がると現れる遊び心のあるコーナー


2階の中央部に情報コーナーを設置。館内にある約1万6000点の所蔵作品を検索できるパソコンを完備する。また、展示作品の細部や見どころをディスプレイするシステム「みどころルーペ」もおもしろい。リニューアル前の美術館を再現した模型を展示した前川國男メモリアルスペースもある。

アート関連の図書を収納しており、閲覧は自由にできる


鑑賞システム「みどころルーペ」。展示品の詳細を見ることができる


前川國男メモリアルスペースには、建設当時の美術館模型がある


多様な工作やイベントなどができるアートスタジオも


ワークショップやトークショーができるアートスタジオも一新。電気から水道まで多彩な機能が備わっており、幅広い用途に使用できる。高さを変更できる机やキッズ用のイスを設置しており、子供向けのイベントにも対応。

電気、音響、水道などを備えるアートスタジオ。大きな鏡があるスペースも


世界的にも価値のあるアートをこれからも展示する


リニューアル後の展示は現時点で未定だが、美術館が所蔵するバスキアやダリなどのコレクションを筆頭に、人気や価値の高い作品を展示していく予定だ。

古美術と現代アートを配置する和モダンな中庭。日光の入り方で見え方が変わる


来場者の多くが通っていた建物南側の入口


【九州ウォーカー編集部/文=川合知也(シーアール)、撮影=恵良範章】

川合知也

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