みつけだせ!僕らの最高のマネージャー!!「九州情報大学相撲部」

九州ウォーカー

選手を支えるキラリと光る“最高のマネージャー”を発掘する連載。今回は「九州情報大学相撲部」です。

九州情報大学相撲部マネージャーの曾根千枝さん


九州情報大学相撲部は、毎年、各大会で好成績を残す、西日本でも屈指の強豪校。大学のグラウンド脇に建つ少しくたびれたプレハブ小屋。扉を開けると、立派な土俵が姿をあらわします。まだ、部員たちの姿がない静まりかえった稽古場では、相撲部女子マネージャーの曾根千枝(そね・ちぐさ)さんが準備を始めていました。

相撲部は、上土俵と下土俵の2面の土俵を持つ


はじめて触れた“相撲”の世界


情報ネットワーク学科で学ぶ2年生の曾根さんは、山口県から進学のため福岡へ。中学高校と管弦楽部でヴィオラを弾いていたこともあり、大学でも続けるつもりでした。しかし九州情報大学には吹奏楽部しかなく、入る部活を決めかねていました。そんな時、新入生向けの合宿で曾根さんの班を担当していた先輩がたまたま相撲部。「もし入る部活ないんだったら、マネージャーやってみない?」と誘われます。「普段から、相撲は見ていなかったし、テレビつけたらたまにやってるなぁ、くらい」だった曾根さんの相撲への印象は、見学のために訪れた練習風景を見て一変します。

「女子マネが入って、華やかになったね」と言われることも多い


「最初は、まわし姿を直で見た事なかったので、ちょっとアッ...てなって(笑) 相撲自体も間近で見るのは初めてで、体がぶつかり合って、もう体当たりみたいな感じなんでスゴい!新しい体験だなぁ、と思いました。なんかもう、スゴい!という言葉しか出てこなかったです。でも、とても面白かったです」

相撲部内の総務の仕事として、会計や大会の申込申請なども行う


激しい稽古を見守る


部員たちが揃うと稽古の始まりです。準備体操のあと、土俵を囲み、回るような形で四股(しこ)が踏まれていきます。四股を踏むことはもちろんトレーニングの一環ですが同時に土俵を清めるための動作でもあります。神棚や塩がそなえられた稽古場にはどこか神聖な空気が漂っています。

一見すると簡単そうな「四股」だが、カラダのバランスが崩れてしまうと踏むことは出来ない


やがて、土俵上では選手たちが実際に肌を合わせてぶつかりあう稽古に。骨と骨、肉と肉がぶつかり合う鈍い音が響きわたります。軽い擦り傷や切り傷は日常的なことだといいます。先輩や監督からの厳しい檄も飛び交います。曾根さんは土俵のかたわらでメモを取りながら、ときおり選手へ声をかけます。

稽古中は片時も土俵のそばを離れない


「“番付”って言って部員が土俵にあがった回数を数えます。その時に5番ずつに区切って『〇〇さん10番です』という感じで伝えます。稽古中はみんな声を出しているので、負けないように大きな声を出すことを心がけています」

【写真を見る】まさに、益荒男(ますらお)の中に紛れてしまったような曾根さん


大きな体格の部員たちに囲まれた曾根さんは、ひときわ小さく見えますが、確かな存在感で稽古に付き添います。

マネージャーとしての『極意』『ひみつ道具』


《マネージャーの極意》

「稽古の場ではないんですけど、1年生でたまに『相撲取りたくない』とか悩んでしまう子がいるので、他の先輩たちにはなかなか言えない事でも、自分が聞いてあげることはできるので。技術的な面はわからなくても精神的なサポートを。というか、むしろそういう面しか出来ないと思っているので、ちゃんとやってあげたい。支えてあげたいです」

当然ながら相撲には神事という側面もある


稽古場の壁には、部員たちに並んで曾根さんの名札もかけられている


《ひみつ道具》

「学園祭とか地域のイベントで“ちゃんこ”を振る舞うことがあるんです。私以外にも、怪我をして稽古できない人たちと作ります。味付けは、基本塩で。肉団子と白菜とシメジとエノキと...いっぱい入ってますね。おいしいですよ!」

曾根千枝さんの『ここが最高!』


相撲部の監督、竹石洋介先生は曾根さんをこう評します。「部のために一生懸命やってくれるんで、他の部員も稽古に集中できています、おかげさんで。雰囲気も明るくなりましたし、下から部を支えてもらえたらクラブの成績も上がっていくと思います」

「この前は、九州場所をみんなで見に行きました。技術的な事はわかりませんけど、見るのは楽しいです!」


自身が2年生になったことで、後輩が入部し、後輩たちを指導する立場にもなった曾根さん。「自分なんか、全然相撲に関して何にも知らないのに部活にいていいのかな... 」と悩むこともあるそう。しかし、部員の方々は「稽古に集中できている」「曾根の頑張りに報いたい」と、マネージャー曾根さんへの感謝の言葉を口にします。その謙虚さで、縁の下からしっかり相撲部を支えている姿が最高です!

「先輩たちもすごく話しかけてくださるし、面白いので、どんどん仲良くなっていきました」


女子マネージャーを繋いでいく


これまで、女子マネージャーのいなかった相撲部。前任者のいない中、手探りで続けている曾根さんのマネージャーという役割。

稽古を離れれば、部員たちと連れ立ってボーリングや映画に行くこともある


「『相撲部のマネージャーとか変わってるね?』ってよく言われるんで、『うん、確かに変わってると思う』って答えてます(笑) でも、相撲は面白いし、先輩たちもいい人ばかりなので、ここに来てみんなと話すとやっぱり楽しいなぁ、と思います。選手も募集してますし、マネージャーも入ってくれると嬉しいです。一人じゃ寂しいので、優しい先輩マネージャーがいますので(笑)」

目標に向かう部員たちを支える


「西日本では近畿大学がライバルです。今年は負けてしまいましたが、去年は近大に勝って西日本一になりました」


毎年、西日本学生相撲選手権での優勝を目指している九州情報大学相撲部。竹石監督は「関東関西の大学には能力的には負ける部分もあるんですけど、入ってきた子をしっかり鍛え上げて、稽古を地道にやって行けば優勝出来るという実績もあるので。こうやって切磋琢磨して頑張れるのも曾根さんのお陰かな、と思ってます」と、曾根さんへの感謝を語ります。

マネージャーの他にも学友会やアルバイトもこなす曾根さん「しんどいなぁ、と思う事もあるんですけど、ここに来ると楽しいなぁ、と思います」」


明るいうちから始まった稽古も、気付けば外はスッカリ夜。汗と土にまみれた選手たちの身体に、今日の稽古の充実ぶりがあらわれています。女子マネージャー・曾根千枝さんが支えていく、九州情報大学相撲部の目標を見すえた毎日は続いていきます。

稽古場の熱気を冷ますように冬の夜が訪れる


山本真己

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