親友同士の作家のトークライブをレポート 西加奈子×山崎ナオコーラ

九州ウォーカー

注目の若手作家・西加奈子さんと、山崎ナオコーラさんが、福岡市・東区のカフェ「Tremolo cafe 」で11/22(土)、トーク&朗読会「説教してもひとり」を開催し、1部、2部合わせて80人のファンがカフェを満席にした。ともに2004年デビューの二人は、2006年に若手作家が集うシンポジウムで会って以来の親友。「初めて友達と一緒にトークイベントをするけど、すごくリラックスできる」と終始、肩肘張らない、ゆる〜い雰囲気。ファンの顔をニヤつかせたトークの、いくつかを紹介しよう。

―作家同士の友情ってどんな感じ?

山崎「作家じゃない友達と遊ぶのと、同じ感じです。一緒にお酒飲んだり、たくさん話すよね? 今日も、東京から福岡へ来る飛行機の中で、トークショー1回じゃ足りないくらい熱く、しゃべってきた。80歳になっても、こうやって小説のこととか、いろいろ語れればいいよねーって。この前は、上海を一緒に旅行しました」

西「そう!ナオコーラちゃんって、天然なところあるから、一緒に街歩いてたら笑いっぱなし! 上海では、ナオコーラちゃん、電車の切符と間違えてホテルのキーを挿して、自動改札を壊してた」

山崎「ははは」

西「ナオコーラちゃんは、カッコイイと思います。私は以前、小説がすべてだと断言することに抵抗があった。自分に自信が無いから、小説以外にも世界があるんだって強調していたかった。でもナオコーラちゃんに会って、その世界でしのぎを削る、ということはすごく格好いいな、と憧れた」

山崎「最近は、お互いの書いた本の感想を、メールで送りあうよね。私は、本を書くとき自分が女だということを忘れたいし、登場人物もなるべく性別の概念に囚われず書きたいんだけど、加奈子ちゃんの書いた『こうふく あかの』を読んだら、強烈な女性性を感じて、女はどこまでも、どこへ隠れても女なんだと思い知った。その感動をメールしたよね?同時代に、加奈子ちゃんみたいな本を創っている小説書きがいて、本当に嬉しいです」

―ずっと作家になりたかった?

山崎「うん。小さいころから、ずっと作家になりたいと思ってた。会社員をしながら書いた小説「人のセックスを笑うな」が受賞して初めて本になったとき、都内の書店を歩いて回って、自分の本を触ったな。正直、私は売れなくてもいいと思う、私の書いたものが、書店や、文学シーンが盛り上がる歯車のひとつになることが、とてもうれしい」

西「私は、作家になりたいと、25歳で突如思い立って、26歳で奇跡的にデビューできた。音楽も好きで、映画も好きで、だけど、ただの黒いブツブツの集合体である小説が、その二つを凌駕してしまう、なんてすごい威力なんやって、魅力に圧倒された」

―小説はどんなスタイルで書いている?

山崎「どんなスタイルかって、ネグリジェで、とかってこと?」

西「セクシーやな〜、それは、いいわ(笑)。書き方の話し。私の場合は、まず場面がパッと頭に浮んで、それを文章で書き留める感じ。読者の方からは、私の本を読んでたら映像が浮かぶってよく言われる。年配の方からは、昔からテレビ見て育った若い世代の書き方だねって。映画を見るように、この先どうなるんだろうって、ハラハラドキドキしながらページをめくってもらいたい」

山崎「なるほど。私の場合は、シーンじゃなくて、まずフレーズが浮かぶ。言葉の響きやリズムにこだわりたい。印象的なフレーズを1行目にもってきて、そこから次の行、次の行へと、引き込むように読ませたい」

西「詩に似ているね。同じ小説書くのでも、ぜんぜん書き方が違うなー」

―(ファンからの質問)本を書くとき、自分はどこにいますか?

西「本を書くとき、私は3人いる。特に一人称の場合、主人公にワーっと感情移入している私、そんな「作家」な自分に酔っている私、そして、酔っている自分を「あらあら、作家ぶっちゃってますねー(笑)」とバカにしている自分。今は、3番目の自分が一番いる状態。いつか、こんな自意識を取り払って、本の中に入り込んで、自分の書きたいものに没頭できるようになりたい」

山崎「私は、自意識すごく弱いよ。クラスで一番目立たないような子だったから、目立つのがまず好きじゃない。自分は本の中にさえいたくないと思う、本の裏側にいたい。自分の主張は本に書かないし、読者には、作家が何を意図して書いているか読み取らないで欲しい。読者ひとりひとりが自分の過去や思いをたどって、感じてくれれば、それでいい」

―(ファンからの質問)仮に、遠距離の恋人に恋文を書くとしたら、なんと書きますか?

西「インパクトが大切やね。一言。『帰ってこい!』」

山崎「好きな人がちゃんと生きてることが大切で、思いを伝えることはそんなに大切じゃないと思う。だから、『元気ですか?』の一言かな」

西「はー、深いなー。私なんか、そしたら、超自己中やん!」

【九州ウォーカー/城 理優亜】

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