1月26日放送の「嵐にしやがれ」(日本テレビ系)でおよそ2年ぶりに復活したコーナー「大野智の作ってみよう」が話題を集めている。この日はゲストとして段ボールアーティスト・島津冬樹が出演。大野と共に段ボール財布づくりに挑んだ。普段は美術館でも販売され、1万円程度の価格帯で売られているという段ボール財布について実際にその制作工程を体験した。その手間暇やできあがった作品の付加価値に「9万円の価値がある」とコメントした大野。さらに「わかんない人にはわかんない。俺はこういうのわかります」と大野が話した通り、その裏にはいま世界中で注目を集めている「アップサイクル」という新たな発想が息づいている。
アップサイクルとは?
リサイクルや再利用といった概念のさらに先を行く考え方が「アップサイクル」だ。サスティナブル(持続可能)なものづくりの新たな方法論のひとつである。 従来から行なわれてきたリサイクル(再循環)とは異なり、単なる素材の原料化、その再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを、最終的な目的としている。この発想を取り入れ世界で注目を浴びているのが今回テレビ出演した島津冬樹だ。
段ボールアーティスト・島津冬樹とは?
いま世界が最も注目する段ボールアーティスト、島津冬樹。本人は自身を段ボールピッカーとも呼ぶ。これまでに世界30カ国を巡り、なにげない街角から捨てられた段ボールを拾ってきた。もう8年間もの間、誰もが見向きもしない段ボールを、デザイン、機能性を兼ね備えた段ボール財布に生まれ変わらせている。こうして島津が生み出す段ボール財布は世界中を旅して、リサイクルや再利用といった概念のさらに先を行くアップサイクルの可能性を伝えている。
島津冬樹の活動を描いた映画が話題に
映画『旅するダンボール』は、世界30カ国の街角で捨てられた段ボールを拾って、お洒落な“段ボール財布”を生み出す、段ボールアーティスト・島津冬樹の活動に迫ったドキュメンタリー映画。2018年、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト) FILM・スポットライト部門に正式出品された。公開後、SNSでは「物作りの素晴らしさ、温かさに感動した」「価値観が180度変わった」など大好評。あたたかい感想がじわじわと広がり、1月11日(金)からは全国12館へと拡大公開し、さらに注目を集めている。不要なものから大切なものを生み出す彼の活動は、未来を支える楽しいアップサイクルへの気付きを与えてくれる。
段ボール界のアカデミー賞!?「カードボード・オブ・ザ・イヤー」
そんな段ボール愛あふれる彼が主催するイベント「カードボード・オブ・ザ・イヤー2018」が1月25日、YEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿ガーデンシネマ)で開催された。島津が2018年最高の段ボールを選出する本イベント。1枚ごとにその熱い思い入れと驚きのエピソードが披露された。
2018年の1位はオーストラリアから来た、カンガルーがデザインされたオレンジの段ボール箱。なんと三軒茶屋で見つけたという。オレンジを詰めるための箱にも関わらず、商品自体が全く描かれていない潔さと、なんともいえないカンガルーの合成写真の雰囲気に惹かれたという。
このほかにも、かわいらしいデザインに贈られる「キャラクター部門」や、日本ではあまり考えられない印刷に失敗した、しかしそこに味がある「ミス(Miss)プリント部門」の授賞が行われた
そもそも「カードボード・オブ・ザ・イヤー」とは?
島津冬樹が、その年に拾った段ボールの中で一番良かった段ボールを決める「カードボード・オブ・ザ・イヤー」は、2017年からスタート。デザインはもちろん、出会ったときのエピソードや、その段ボールへの思い入れがランキングに反映される。2017年の1位は、ブルガリアのソフィアで拾った“Syrian Arab Red Crescent”だった。通常、戦地や難民キャンプでしか手に入らない支援物資の段ボール。それがブルガリアの市内にポツンと落ちている意外性、そしてその貴重性を評価したとのこと。
島津の活動を見ていると、普段何気なく捨てているものにも価値があるのではないかと不思議な感覚に襲われる。みなさんも身の回りのもの、大切なもののベスト10を決めてみるのも面白いかもしれない。