「桜田門外ノ変」で無名の人物を演じた大沢たかおが感じたこととは!?

関西ウォーカー

いまから150年前の江戸時代末期、開国を推し進めた幕府の大老・井伊直弼が暗殺された事件“桜田門外の変”の背景と真相を描く「桜田門外ノ変」。襲撃の指揮をとりながらも、歴史的にはあまり知られていない“英雄らしくない”主人公・関鉄之介を演じる大沢たかおが本作への深い思い入れを語ってくれた。

─今回、この映画のお話をいただいた時はどんなことを思われましたか?

「主人公が無名の人物というのは、すごく挑戦的ですよね。しかも、この映画では普通なら“桜田門外の変”をクライマックスに持ってくるところを前半に持ってきていたりとか、すごく実験的なことに挑戦するのは、すごく意味のあることにも感じましたし。僕はあえて、みんながやらないようなことをやりたいと思っているので、演じるおもしろさがありましたね」

─ 本作で無名の人物を演じる意味は?

「水戸の下級武士がいまで言う総理大臣みたいなポジションの井伊直弼を暗殺したのが桜田門外の変ですけど、彼らを始め無名の人も国をよくしようと行動をしていたんですよね。いまはもう、英雄を通して漠然と歴史を感じるのではなく、僕らが歴史から何かを学んだりする時代だと思うんです。だから、偉人でも、なんでもない僕らも時代を見つめる責任があるということが観客の方に伝わればいいなと思いますね」

─演じる上で心がけられたことは?

「俳優を長くやっていると、脚本を読んだ時に“ここで映画を観ているお客さんは腰が痛くなっちゃうだろうな”とか(笑)、いろいろと余計なことを考えてしまいがちになるんです。でも、今回はそういう余計なものを自分の中から排除して、役の気持ちと素直に向き合うことだけを考えていました」

─本作でメガホンを取ったのは、「男たちの大和/YAMATO」(’05)などの巨匠・佐藤純彌監督。ずっと一緒にお仕事をされたかったそうですね。

「そうなんです。ようやく一緒に仕事ができてうれしい反面“自分はいままで何をやってきたんだろう?”って、気づかされることばかりでしたね。監督はいま、77歳なんですが撮影中に体調が悪い日があっても“オレはこの映画を撮り終えたら死んでもいいから”って言って、雪が降る中でずっと現場にいたんです。その姿を見て“映画を作るというのは命を懸けることなんだな”って思いましたね。自分もこの仕事をやるからには、もっと向上心を持たなきゃいけないんだって改めて気づかされました」

─まさに、大沢さんにとって俳優として1つのターニングポイントになった本作を通して感じたことは?

「この作品をご覧になった方から“(関たちは)無念ですね”という感想を聞くことがあったんですが、彼らの行動が無駄になるかならないかは、いま僕らがどう生きていくかにかかっていると思うんです。監督も『桜田門外ノ変』を通して昔のことを伝えているようで、アジアを始め、日本が諸外国とどう付き合っていくべきなのかとか、実は“いま”を伝えているんですよね。僕は政治家ではないから、俳優という仕事でもって、これからどう行動するのかという意識を持ちつつ、先人の遺産を活かして次の世代に負の遺産をのこさぬようにしたいです」

【取材・文=リワークス】

注目情報