定番なのに“シヤチハタ不可”のワケ…「インクが色褪せる」は誤解?

2019年3月13日 17:00更新

東京ウォーカー(全国版) 国分洋平

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ハンコ社会の日本において、誰もが一度は見たことのある「シャチハタ不可」の文字。この“シャチハタ”とは、シヤチハタ社が発売する「ネーム9」をはじめとするスタンプ印のことだ。朱肉が要らずどこでも手軽に押印できるのが魅力だが、使用NGとされることも多い。ネット上でも何故使用できないのか議論する声もたびたび上がっている。今回はシヤチハタにNGと言われるワケを聞いた。

スタンプ印の代名詞的存在「シヤチハタ ネーム9」

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“シャチハタNG”なのは「印鑑証明」

シヤチハタの広報担当者によると、いわゆる“シャチハタ”でできないのは、実印として自治体に届け出る印鑑登録だという。これは、スタンプ印の印面がゴムでできているため。金属や木材を加工して作る印鑑と違い、ゴムの印面は押し方によって、印影が太くなったりしてしまう可能性があり、登録した印影と異なる形になってしまう場合があるためだ。シヤチハタでは発売当初から「印鑑証明には使用しないでください。」とうたっているほか、各自治体も「ゴム、プラスチックのような変形・摩滅しやすい材質でないもの」と印鑑登録時に但し書きをつけている。また、銀行に印鑑を届け出る銀行印についても、同様の理由からシヤチハタ印を名指しで不可としている銀行もある。

インクも改良され、事務用ハンコとしてさまざまな場面で活躍している

“インクが色褪せる”は30年以上前に克服

【写真】現在は販売されていないシヤチハタの旧ネーム印

シヤチハタがNGとされる理由は上記の通りだが、SNS上では「朱肉でなくインクでの押印は経年劣化で退色してしまうから」という意見も見られた。これについては「現在販売しているシヤチハタのネーム印のインクは、朱肉と同じような色褪せしにくい顔料を使用しています」との回答。1968年に発売された現在のスタンプ印の原型とも言える商品「Xスタンパー ネーム」は、染料を使用したインクで確かに耐光性に劣っていたとのこと。しかし、1978年発売の「Xスタンパー ブラック11」、1981年発売の「Xスタンパー ブラック8」、1986年発売の「Xスタンパー ネーム9」からは、顔料系インクに改良したため色褪せしないのだという。

フルネームも作れる12ミリ角型サイズのネーム印「スクエアネーム 12」

スタンプ台から進化したシヤチハタ印

そんな「ネーム9」を含めたスタンプ印は、社会の変化を予見して生まれた商品だった。1965年、スタンプ台で売上を伸ばしていたシヤチハタは、高度経済成長期に入り事務の合理化が進み、いずれスタンプ台の需要が少なくなることを危惧し、スタンプ台のいらないスタンプ「Xスタンパー」を発売。当初は「請求書在中」「速達」などのビジネス印のみの展開だったが、三年後の1968年には現在のネーム印の原型である「シヤチハタ ネーム」を発売することになる。

「登録印は無理でも事務印なら問題はないし、マーケットは絶対にあるはず」という判断のもと生まれた「シヤチハタ ネーム」だったが、「従来の印鑑を脅かすような商品は扱えない」と、それまで取引があった印章店から反発が出たという。その際、「Xスタンパーはあくまでも事務印。高価な印章とは競合しない。印章業界の発展のためにも扱ってほしい」と印章店を説得し店頭に並ぶようになり、発売当時1本450円と認印や三文判より高価だったにもかかわらず、朱肉のいらない利便性が勝り、徐々に売上を伸ばし今やロングセラーの商品となったのだ。

電子化が進む現代でも、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末でも捺印できるサービスを展開するなど、シヤチハタでは承認・認証へのかかわり方を常に模索しているという。“シャチハタ不可”の記載は、こうした先見の明を証明する勲章とも言えそうだ。

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