11/26の“いい風呂の日”に、別府や黒川温泉など九州7県の温泉を巡るスタンプラリー「九州八十八湯めぐり 九州温泉道」がスタート。来年3月の九州新幹線鹿児島ルート全線開通を控え、九州の温泉をより多くの人に楽しんでもらいながら鉄道の利用の促進につなげようと、JR九州が中心となって企画した。
対象となるのはほかに、佐賀・嬉野温泉や長崎・雲仙温泉、鹿児島・指宿温泉など全120施設。いずれも、温泉チャンピオンの郡司勇氏や別府八湯温泉Gメンの斉藤雅樹氏、別府八泉温泉道初代名誉名人の土谷雄一氏など、温泉名人たちを中心とする「九州八十八湯選定委員会」が厳選した泉質にこだわる「ホンモノ」の湯だ。88か所すべての温泉を回ると、最高段位「泉人」の称号が得られるという。
スタート初日、大分県竹瓦温泉前で記念イベントが開かれ温泉名人たちが九州温泉道の開始を宣言。そのあと、土谷氏と斉藤氏の2人に、別府温泉の魅力を教えてもらいながら3つの湯を楽しむことにした。
まずは別府温泉の「竹瓦温泉」。明治創業で九州温泉道の伝道湯といわれ、古くから地元の方々に愛されてきた別府のシンボル的存在だ。天井の高いロビーや和風建築の浴舎など、昭和初期のイメージが残る共同湯の雰囲気を満喫。
昼食は「大黒屋旅館」で別府温泉名物の「地獄釜蒸し料理」を味わうことに。サツマイモやトウモロコシなどの食材を、ミネラル成分豊富な温泉の蒸気で一気に蒸し上げることで、うま味がぎゅっと凝縮されている。
次に訪れたのは鉄輪温泉の「ひょうたんの湯」。80年以上続く老舗の温泉で、昔ながらの湯治場の雰囲気を残すのどかで素朴な温泉場。露天、砂湯、瀧湯、むし湯、歩行湯、岩風呂、檜湯など多彩な湯がそろう。そのほか、源泉のよさをそのまま楽しめるように開発された「湯雨竹」という装置も見どころのひとつ。竹に通し空気に触れさせることで、98~100℃の源泉を数秒のうちに45~50℃まで冷ますことができる。
最後は明礬温泉の「明礬湯の里」。ここはなんといっても絶景露天風呂が魅力。別府一の高台に位置し、明礬大橋や鶴見岳、高崎山などを眺めながら乳白色の湯と硫黄の香りに包まれる感覚は、この上ない贅沢気分。敷地内には江戸時代から続く藁葺屋根の「湯の花小屋」もあり、湯の花の製造技術を学ぶことができる。湯の花とは、地下約30cmの温泉脈から噴き出す温泉の成分と、この土地特有の青粘土の成分が結晶になったもの。40~60日かけて採取、精製、乾燥して製品化される「薬用 湯の花」は、江戸時代の中期から約290年もの間、変わらぬ製法でずっと生産されており、いまでは入浴剤として多くの人に利用されている。
今回は別府温泉を中心に回ったが、それぞれに個性豊かな温泉があった。斉藤さんが「どの温泉にするか本当に悩みました。厳選した温泉にはそれぞれ違う特徴があるので、ぜひそこを楽しんでいただきたい」と話すように、温泉はもちろん、そこで出会う人々や風景など唯一無二の魅力を発見することができた。「いい温泉に入りたい!」という単純な気持ちがあれば、それが温泉道を極める修業の始まり。自分のペースで楽しみながら道を極め、そして目指すは泉人だ!
【福岡ウォーカー/近松優季】