2022年度中の開業を目指しプロジェクトが進行している、東京ディズニーシーの大規模拡張。5月21日には、起工式ならびにセレモニーが開催され、新テーマポートの名称が「ファンタジースプリングス(Fantasy Springs)」に決定したと発表された。記者発表後にオリエンタルランド代表取締役会長兼CEO 加賀見俊夫氏が取材に応じ、新エリア登場の狙いや魅力などを語ってくれた。
投資金額は2500億円!広大な新エリアは混雑緩和など最終的にたどり着いた結論
現在、東京ディズニーシーには、パークの玄関口に位置する「メディテレーニアンハーバー」をはじめ、20世紀初頭のアメリカをイメージした「アメリカンウォーターフロント」など、7つのテーマポートがある。今回名称が明らかになった「ファンタジースプリングス」は、東京ディズニーシーで8番目のテーマポートという位置付け。開発面積は約14万平方メートル(うちテーマパーク・ホテルエリア10万平方メートル)にも及ぶ。
テーマは“魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界”。テーマポート内に“魔法の水”が流れる滝や池を配し、その先にディズニー映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』を題材とした3つのエリアが広がる。新たに導入されるアトラクションの数は、全部で4つ。その他にレストラン3軒、ショップ1軒、さらには最上級ランクの部屋を有するディズニーホテルが誕生する。
21日に開催されたセレモニーの終了後には、オリエンタルランド代表取締役会長(兼)CEO 加賀見俊夫氏が囲み取材に応じた。報道陣からの質問に先立ち、加賀見氏は「ここ数年、3000万人以上のゲストがお見えなので、混雑緩和も含めてパークを拡張したいという想いがありました。最終的にたどり着いたのが、8番目のテーマポートになります」と経緯を説明。
さらに、既存施設への追加投資としては過去最大となる、2500億円という投資額について「2500億円は手元資金で借入は一切しないので、思い切った投資ができる。皆さんの期待通り、もしくは期待以上のものが出来てくるのではないかと思います」と自信をのぞかせた。
この他、インタビューの中では、新アトラクションの見どころなどに加え、入園料の値上げにも言及した。
「動員数は結果論」、来場者の満足向上こそが最大の目的
――新テーマポート「ファンタジースプリングス」の魅力や見どころを教えてください。
【加賀見CEO】今までにない近代的なファンタジーの世界にご期待ください。例えば『ピーター・パン』のアトラクションでは、ただ単に『ピーター・パン』のファンタジーな世界というだけでなく、浮遊感のある、まさに空を飛んでいるイメージのものを研究中でございまして、ほぼ目途がついたので発表しました。『塔の上のラプンツェル』のアトラクションは、あのロマンティックな世界に浸ることができます。『アナと雪の女王』に関しましては、映画上映直後から「いつアトラクションができるんですか?」とご質問が多かったのですが、ようやくここで目途がついてきた、というところでございます。
――新しく誕生するホテルでは、どのようなニーズに応えていくのでしょうか?
【加賀見CEO】舞浜エリアにはデラックスタイプのホテルはありますが、ワンランク上のラグジュアリータイプのホテルはなく、特に海外からのお客様は、都心で過ごして来られるケースもあり、それはもったいないということで、新しくホテルを造ることになったわけであります。ホテルは日本人と海外の方でスタイルが違いますので、それに応えていきたいと考えております。
――ゲストの満足度の向上や、入園者数の増加に弾みをつけていきたいという狙いはあるのでしょうか?
【加賀見CEO】私どもにとって入園者数は結果論でして、いかにゲストの満足を高めるか、を最大の手腕にしております。ニューファンタジーランド(2020年オープン予定の東京ディズニーランド大規模開発エリア)もそうですし、今年7月、東京ディズニーシーにオープンする「ソアリン」も、アメリカにある「ソアリン」とはまったく違うイメージです。ゲストの方にはご満足いただけると思います。新テーマポートも、エリア全体がまったく新しいディズニーのテーマパークという感じかと思います。
「3世代で楽しめる施設を」10年先を見据えて…TDLでも新エリアを思案中
――入園料に関してはいかがでしょうか?
【加賀見CEO】入園料については皆さん一番関心が強いかと思います。これについては常に研究しておりまして、いつでもGOをかけられる状態になっていますけれども、やはりゲストの満足度を見ながら判断していきたいと考えております。
――2500億円を投じパークを拡張する、熱い想いをお聞かせください。
【加賀見CEO】2500億というのは大変な数字だと思います。少子高齢化も進む中、ゲストの比率が低いところをどう掘り起こすかという部分で、単にリニューアルやアトラクションを新しくするだけでなく、全く新しいコンセプトのものを導入する必要があると考え、思い切って「ファンタジースプリングス」というイメージのものを造るわけであります。これは本当に10年先の話かと思いますが、東京ディズニーランドの方でも同じようなものをやっていければと考えているところです。
――これまで東京ディズニーシーは大人が楽しむ場所というイメージがありましたが、今後は客層にも変化が起こるということでしょうか?
【加賀見CEO】やはりお客様のメインは若い方でございます。しかし、「3世代で来ていただく施設が少ないのではないか」ということもあり、世代を超えて楽しんでいただけるものにパーク全体、リゾート全体を変化させていきたいと。あとは日帰りのお客様が多いのですが、滞在型にしていくことにより、ますます中身の充実が必要と判断したわけです。
水梨かおる