小島梨里杏「映画を観ている方にとっても“登場するとホッとする存在”になれていればうれしい」

東京ウォーカー(全国版)

100年前の実話を基に描かれた映画『ある町の高い煙突』で、ヒロインを演じた小島梨里杏さん


6月22日(土)公開の映画『ある町の高い煙突』で、ヒロイン・加屋千穂役を演じた小島梨里杏さん。物語は明治時代の終わり、工業化の進む日本で、実際にあった公害に苦しむ村と、公害をもたらす企業との対決と融和が描かれている。小島梨里杏さんは、村の代表・関根三郎(井手麻渡)と親しくなる一方で、企業の代表・加屋淳平(渡辺 大)の妹であるという難しい役柄に挑戦した。撮影中のエピソードや見どころについて、小島梨里杏さんにお話を伺った。

【画像を見る】「紅一点となるヒロイン像とは」独占インタビューで語る小島梨里杏さん


「持前の明るさで、登場するだけでパッと場面が明るくなるようなヒロインです」




――今回、出演される『ある町の高い煙突』は、ひと言で言うとどんな映画でしょうか。



【小島梨里杏】100年前の実話を基に描かれた、明治時代の人間ドラマです。現代だと、私も含めて誰もが自由にのびのびと生きていて、それもステキなんですけど、もっと人々が一丸となって国や地域のために生きていた時代の物語です。志を持った熱い男性たちのぶつかり合いがぎっしりと詰まっていて、そんな男性中心の物語のなかで、ヒロイン・加屋千穂を演じさせていただきました。

「可憐でありながら快活というか、言うところは言う性格です」小島梨里杏さん


――映画を拝見させていただいて、本当に“紅一点”という印象でした。



【小島梨里杏】台本を最初に読ませていただいた時から、紅一点感がありました。主人公の三郎にとっても、千穂と過ごす時間が唯一の休息時間というか、憩いの時間になっているのだろうなと感じながら演じていました。緊張感のある作品なので、映画を観ている方にとっても「千穂ちゃんが出てくるとホッとするな」と思っていただけるような存在になれていればうれしいです。

――加屋千穂はどのような役柄だと思われますか。



【小島梨里杏】可憐でありながら快活というか、兄である淳平との関係を見ても、言うところは言う性格です。いたずらっぽい面もあるのですが、男性との距離の取り方や、男の方を立てているところは、この時代に生きた女性だと感じました。三郎を笑顔にする明るい性格ですが、それは「明るくしてあげなきゃ」みたいなことではなくて、自然な持ち前の明るさで、彼女自身が天真爛漫に、その瞬間・瞬間を楽しんで生きていたということなんだと思います。

「自然な持ち前の明るさで、主人公の癒しとなっていく女性です」小島梨里杏さん


――衣装についてはいかがでしょうか。明治時代の着物の出演者が多いなかで、西洋風の衣装と髪型です。



【小島梨里杏】はい。最初に洋装になると聞いてはいたのですが、撮影前の衣装合わせの時に、思っていた以上にしっかりとした洋装で、しかも色がカラフルだったので「こういうことなんだ!」とびっくりしました。場面のなかに千穂が登場すると、それだけでパッと絵が明るくなるというか、衣装の色が映えていたので、そういう意味でも明るさをもたらすヒロインです。

馬に乗るシーンでは「実際に見たら『背が高い!』、乗ったら『さらに高いッ!』って(笑)」


――馬の背に、洋装で乗っているシーンもありました。



【小島梨里杏】ジェニーという、この映画以外でも活躍されているお馬さんだったのですが、本当にいい子でした。実は、私は乗るのがはじめてで…、馬自体は好きなので楽しみにしていたんですけど、いざ本番前に「練習しておこう」と会ったら、思っていた以上に「背が高い!」、しかも乗ったら「さらに高いッ!」って(笑)。本番では、ジェニーと呼吸を合わせて、一心同体になることを意識しました。

「衣装は、私だけしっかりと洋装で、色もカラフルでびっくりしました」小島梨里杏さん


――共演者の方々との思い出で、印象に残っていることはありますか。



【小島梨里杏】私の登場シーンの最後の方に、遠山景織子さんとのシーンがあるのですが、遠山さんが私のお芝居をずっと見守っていてくださったみたいで、「すごくステキだったから、その感覚大切にしてね」って言ってくださったんです。すごく印象深く覚えています。



――物語が進むにつれて、重たいシーンも多くなっていきます。



【小島梨里杏】そうですね。特に千穂にとっては三郎とも離れ、自分自身と向き合っていく時間が長くなっていきます。持前の明るさでもなんともならない心の葛藤を、繰り返し、繰り返し自分に問うようなシーンが続いていって…。クランクアップするまでは、私も気持ち的に少し重たくなっていたかもしれません(笑)。三郎に会えない日々が続いて、きっと三郎にとって千穂が休息できる癒しの場であったのと同じように、千穂にとっても三郎は希望だったんだと思いました。

「カラフルな衣装も映えて、登場するだけでパッと場面が明るくなります」小島梨里杏さん


「コメディ作品にも挑戦してみたい。誰かを笑わせるって、本当に難しいと思うんです」


――映画を観る方に、こう観てほしいという見方があれば教えてください。



【小島梨里杏】人と人との心のつながりみたいなものに、注目していただけたらうれしいです。千穂という役柄を通して感じたのは、当時は心の距離が近い分、物理的には遠かったのかなと。メールも携帯電話もない時代、ハガキで連絡を取り合ったり、愛する人に触れたくても、そこまでハッキリとは触れなかったり。気軽に触れ合えないからこそ、余計に相手を愛おしく思えたり、かげがえのない存在になっていったのかもしれません。そういうあたたかいエピソードや、史実に基づく物語なので、当時の男性の生き様みたいなものに注目してくださればうれしいです。

「馬に乗るシーンの本番では、呼吸を合わせて一心同体になるよう意識しました」小島梨里杏さん


――最後に(今回、少し重たい役を演じられた… ということも受けて)今後演じてみたい役柄などあれば教えてください。



【小島梨里杏】明るく!ですね(笑)。これからも映画や舞台には、ジャンルを問わずに関わらせていただければ幸せですが、そうですね、なんだろう。コメディ!やってみたいです。誰かを笑わせるって、本当に難しいと思うんです。ただネタをやればいい、振り切れればいいということでもないですし、間というか空気というか… 難しいですけどコメディ作品にも挑戦してみたいです!

「人と人との心のつながりに、注目していただけたらうれしいです」小島梨里杏さん


撮影=矢西誠二 取材・文=千葉由知(ribelo visualworks)

ウォーカープラス/野木原晃一

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