妻として更に母として、そして皇后としてという思いが3つあります。
昨年、出演された舞台『暁の帝~壬申(じんしん)の乱編~』シリーズ第二弾。舞台『暁の帝~朱鳥(あかみとり)の乱編~』にW主演で出演される佐藤美希さんにお話を聞いた。
――時代は飛鳥時代、前作に引き続き鵜野讃良(うののさらら)を演じられますね。どんな役なのでしょうか。
【佐藤美希】壬申の乱直後のお話になります。大海人皇子(おおあまのおうじ)、後の天武天皇の妻、皇后としての役柄になります。時代的には、壬申の乱3カ月後ぐらいから始まるのですが、前作から10歳ぐらい年齢も重ねた役です。前作は大海人さまだけを想う愛がテーマとなっていましたが、今作は草壁皇子という子どもがすでにいますので、妻として更に母として、そして皇后としてという思いが3つありますので、またレベルが結構上がっています。演じる年齢は30~40代後半です。
――昨年、出演された舞台『暁の帝~壬申(じんしん)の乱編~』はどのような気持ちで演じられたのでしょうか。
【佐藤美希】冒頭は、まだ10代で子どもでしたので、ふだん通りの声の出し方で、かわいらしい少女らしさがある感じで演じていました。今作は、30~40代後半ですし、皇后という立場でもあります。ですから、より責任感のあると言いますか、私の言葉は天皇と同じくらいの言葉を意味するというような台詞もありますので、説得力のある話し方、佇まいというのを意識しています。声を低めにしたりとか、力強く発したりしています。
寝る前も「大海人さま!大海人さま!」と言いながら愛を感じていました(笑)。
――舞台稽古は順調ですか。
【佐藤美希】はい。順調に進んでおります。
――昨年、演じられた時に、どんな風に演じられましたか。役柄にのめり込んだりされたのでしょうか。
【佐藤美希】飛鳥時代ですので、話し方や佇まい、所作とか仕草とかもちろん違いますので、舞台を下りると切り替えられます。ですが、「大海人さまを愛し過ぎている、大海人さまLOVE、大海人さまがいなかったら生きていけない」というぐらい、好きで好きで仕方ない役柄でしたので、家族以外で、実際にそこまで人を好きになるというのはどういう感情なんだろうかと、これまで経験したことがありませんので、先輩方に聞いたりしながら、ひたすら大海人さまのことだけを考えていました。稽古中も本番中も「大海人さま大好き!大海人さま!大海人さま」と想い、寝る前も「大海人さま!大海人さま!」と言いながらやってましたね(笑)。
――今作は、更に草壁皇子という子どもがいますので、また演じ方が変わりますよね。
【佐藤美希】はい。もちろん子どもに関しては、実体験はありませんが、私の周りは同年代で子どもがいる友達も多いので、会って話を聞いてみたりしました。また、何かを愛でるとか育てるとかという気持ちを知るために、動物を見たりして「かわいいな」と想ったりして、試行錯誤しながらがんばっています。
――先ほどもお話されていた、話し方や佇まい、所作とか仕草では苦労されましたか。
【佐藤美希】台詞も日常的に今の時代では使わないような言葉や言い回しが多いです。ですが、気持ち的には今の時代と共感するものが多いですので、時代を意識せず、何かを感じる部分は多い作品だなと思います。
鵜野讃良の感情の変化を表現するのが本当に難しいです!
――舞台のセットはどんな雰囲気なのでしょうか。
【佐藤美希】シンプルな舞台です。前作も今作も、袖がないので、次の出番の役者が待っている様子も客席から見えるのです。そのあたりも合わせて楽しんでいただけると思います。あまり詳しくはお話できませんが、前作よりはかなりレベルアップしています。演出の伊藤靖朗さんによる、神話の世界だったり、神秘的な世界観が表現されています。万葉集を読むシーンの演出はとくに楽しみにしていただきたいです。
――衣装ははどんな雰囲気なのでしょうか。
【佐藤美希】赤いお着物になります。裾が長くて引きずって歩いていますし、立ったり座ったりするシーンも多いですので、裾を踏まないように注意しながら演じています。お着物に慣れていないということもありますので、浴衣を着て練習したりしています。
――演じてみていちばん大変だと感じたことがありましたら教えてください。
【佐藤美希】今作は、自分の命以上に大切な夫も息子も亡くなってしまい、ひとりでは生きていけないと思いつつも、国を治めていかなければいけないという、鵜野讃良の感情の変化を表現するのが本当に難しくて、今必死で稽古しています。だからこそそこが見せ所だと思って、おもいきり全力を出し切ります!
人間性を表現している部分が多い作品だと感じています。
――こう観て欲しいというおすすめの観方があれば教えて下さい。
【佐藤美希】前作を観ていない方でも十分に楽しめる内容になっています。キャストも変わっていますし、全くの新作という気持ちで臨んでおります。主演として、チームをまとめていかなければいけないという立場ですので、「私のこの作品にかける思いを、一緒に演じるキャストの皆さんに見せていかなければいけない」というのはいちばんにあります。
Wキャストというのもありますので、負けたくないという気持ちも多少ありますし、同じ作品を一緒に作り上げるというのも刺激になります。こちらのチームも、団結していい作品を作っていきたいと思っています。
人間性を表現している部分が多い作品だと感じています。女性としての生き方がかっこいいなと共感していただけたらうれしいです。強い女性ですが、最愛のふたりをなくしたときの女性ならではの弱さもあるので、そこも人間らしさかなと思います。観てくださったお客さんが何かを感じとっていただければありがたいです。
――最後に、舞台の魅力について教えて下さい。
【佐藤美希】いちばんは、生のお芝居で表現できる、もちろん張り詰めた緊張感はあるんですけど、だからこそ、もう一度きりしかない、時間、そして空間ですので、舞台に立っている役者もお客さんも一体感になって楽しめるというのが魅力です。もちろん、私たちがいい雰囲気を作って作品を成功させければならないんですけどね。
撮影=下田直樹
ウォーカープラス/野木原晃一