ラグビーW杯開幕!世界を制した名将が分析する日本代表の展望とは?

東海ウォーカー

1987年の第1回から、今年で9回目を迎える「ラグビーワールドカップ2019」。ラグビー世界一を決定する4年に一度の大会が、日本を舞台に初めて開催される。全国12都市で9月20日(金)からスタートする大会を目前に、世界の頂点と日本ラグビー界の双方を知るジェイク・ホワイト監督にインタビュー。2007年大会で南アフリカを優勝へと導き、現在は愛知県豊田市に本拠を持つ「トヨタ自動車ヴェルブリッツ」の指揮官として3年目を迎える名将は、今大会の見所や展望をどう読むのか?

2007年ラグビーワールドカップフランス大会で南アフリカを優勝へ導いた名将、ジェイク・ホワイト監督


強豪が日本に集う!注目のワールドカップ


――愛知県の豊田スタジアムでラグビーワールドカップの試合が開催されます。その見どころを教えてください。

4試合すべて、それぞれのチームがチャレンジする試合になります。まず日本対サモア戦(10月5日(土))は、日本にとって大一番ですね。サモアはプレーオフで、20チーム中18番目にワールドカップ出場を決めたチームですが、決して弱いチームではありません。多くの人は簡単な相手と思い込んでいるようですが、ベストメンバーがそろったサモアは本来強いチームです。

――日本代表がリーグ戦を勝ち上がるためには、強豪スコットランド戦(10月13日(日))が重要な試合だと思いますが。日本は勝てそうですか?

その可能性は高いと思います。なぜかと言うと、日本という環境を一番理解しているのは日本の選手達だからです。ホームのサポーターもついていますしね。南アフリカが1995年にW杯で優勝できた理由は、ホスト国だったからです。ニュージーランドが1987年、2011年に優勝したのも同じ理由です。ホームでプレーできるのは、非常に大きなアドバンテージになります。

――今一番勢いのあるウェールズ代表に注目が集まっています。

ウェールズ対ジョージア戦(9月23日(祝))は、両チームにとってタフな試合になるでしょう。ウェールズは2019年のシックス・ネイションズ(ヨーロッパのラグビー強豪国6か国による対抗戦)で優勝し、テストマッチで現在連勝中です。ウェールズ史上最高のチームで、ワールドカップ優勝に値するチームのひとつとして名前が挙がります。一方のジョージアは、常にシックス・ネイションズのメンバーに入りたがっています。今回そのチャンピオンチームと対戦するわけですから、ジョージアとしてはこの対抗戦で十分戦えることを世界に示すチャンスだと思います。

――優勝候補のニュージーランド、南アフリカも登場します。

ニュージーランド対イタリア戦(10月12日(土))も、非常に興味深い試合ですね。ニュージーランドは世界のどこで戦っても、多くのラグビーファンが観たいと思うチームです。もう一つの優勝候補チームがいる試合といえば、南アフリカ対ナミビア戦(9月28日(土))ですが、ナミビアにとって南アフリカは強すぎる相手ですね。しかし、ナミビアの多くの選手は南アフリカでプレーしているので、この試合でいいプレーをして、よりよい契約を結びたいと考えているはずです。

――今大会の南アフリカ代表をどのように評価されていますか。

決勝に進むでしょうね。その理由は、プールBの初戦であたる優勝候補筆頭のニュージーランドと試合をして、次にニュージーランドと対戦する可能性があるのは決勝戦だけだからです。準々決勝でも準決勝でも対戦しません。そのため、南アフリカが決勝に進む可能性が高いと思います。決勝カードは南アフリカ対ニュージーランドになるでしょうね。

【写真を見る】ワールドカップへの展望を熱く語る、ジェイク・ホワイト監督


始動初日から遂行したワールドカップ優勝へのプラン


――2007年のワールドカップで南アフリカを指揮して優勝しました。当時のことを振り返ってください。

チームが始動した一番初めのミーティングで、「ワールドカップで優勝する」と皆に言いました。どういう選手と契約を結び、選手をいつ休ませるのか。選手のコンディションをどう保ち、各選手の最適なポジションはどこなのか。さまざまなことを考え、初日からすべての日をワールドカップ優勝に向けて費やしてきました。決勝前日には、全員が決勝でプレーするにふさわしい準備ができていて、体調も万全でした。

――大会前にエディー・ジョーンズ氏(前日本代表監督。2003年のワールドカップでオーストラリア代表を率いて準優勝)をアドバイザーとしてチームに招きました。

ワールドカップは、プレッシャーがほかの試合とまったく違います。4年間かけて準備をしてきたことが正しかったのか、大会の7試合で評価されます。そのため、ワールドカップを経験した人物として、ぜひ南アフリカのコンサルタントをしてほしいと彼を呼んだのです。

1995年のワールドカップにて、優勝カップを掲げる南アフリカ代表の主将フランソワ・ピナール氏


ワールドカップ開催後も、ラグビーが盛り上がるように


――ワールドカップが日本で開催される意義をどのように感じていますか。

日本だけではなく、アジアでラグビーワールドカップをホストする初めての機会になります。すばらしいことですね。日本と、日本の文化を世界に発信する、とてもいい機会になると思います。しかし本当に大切なのは、ワールドカップ後の過ごし方です。

――大会期間中は盛り上がるのは当然で、大会後もラグビー熱を維持する必要があるということですね。

例えば、南アフリカが自国開催で優勝した1995年のワールドカップの時はどうだったか。当時マンデラ大統領が、ピナール主将の番号である6番のジャージーを着て選手を称え、それを見た南アフリカの人々は皆ハッピーな気持ちになりました(白人の象徴でもあったラグビー南アフリカ代表のジャージーを、マンデラ大統領が着用したことが人種差別撤廃、人種融和の象徴になったと言われる)。

アパルトヘイトが廃止され、民主主義が導入されたので、大会後もそのいい流れを利用してラグビーを宣伝するべきでした。つまり、若者に対して「スプリングボクス(ラグビー南アフリカ代表の愛称)」になれるということをもっと宣伝すべきでしたが、それができませんでした。日本は今回のワールドカップ開催を、ラグビーを愛する若者達の裾野を広げる機会にしてほしいと思います。

世界の強豪チームのプレーを観戦できるチャンス!


ジェイク・ホワイトprofile/1963年生まれ。南アフリカ・ヨハネスブルク出身。教師を経てラグビー指導者となり、U-21南アフリカ代表を率いて2002年U-21ワールドカップで優勝を飾る。2004年、ノンキャップホルダーとして初めて南アフリカ代表監督に就任。2007 年ワールドカップフランス大会で、南アフリカを2度目の優勝に導く。プロコーチとしてオーストラリア、南アフリカ、フランスのクラブを指導し、2017年からトヨタ自動車ヴェルブリッツ監督に就任した。

(情報提供「aispo!web」)

中野幸信

注目情報