Twitterの牽引者・津田大介が、音楽の“過去と未来と現在”を語った!

関西ウォーカー

「Twitter社会論」で日本のTwitterの牽引役となった津田大介さんの今度の著書「未来型サバイバル音楽論」は日本最初のフリー音楽プロデューサー、牧村憲一さんとの共著だ。TwitterやUSTREAMといったIT関連で注目される津田さんだが、実は音楽との関わりは深い。今回は、ITと音楽に対して造詣の深い津田さんに“音楽業界の未来”について、話をうかがった。

—まずは津田さんと音楽の関わりを教えてください。

「小さいころは普通に歌謡曲が好きで、小学校の時初めて買ったレコードは小泉今日子さんの『渚のハイカラ人魚』。中学2年頃にバンドブームがやってきて、最初は王道のBOOWYから入って、後はTMネットワークとか、爆風スランプとか、当時元気だったラフィンノーズなんかを聞いていく中でフュージョンやテクノ、プログレ、洋楽などにも手を広げていきました。

大学のサークルではシーケンサーで音楽を作っていたのですがこれが面倒で、たまたまもらった古いPCで曲を作るようになりました。するとPCがおもしろくなって、パソコン通信を始めたりしました。ちょうどインターネットの商用提供も始まった時代です」

—転機になったのは?

「ライターになって2年目、99年にNapsterが登場して、これは音楽業界すべてに関わる話だと思いました。インターネットがどんどん普及してデジタル化していったら、自分の仕事もなくなるという危機意識も芽生えたのですが、これこそ自分の取材すべきポイントではないかとも考え、コンテンツ、デジタルがどう業界を変えていくのかを最前線で見てみようと、3年ぐらい音楽配信関連などを積極的に取材しました」

—非常に危機感を持たれた、と。

「自分の名前を売って、この方面の仕事を得たいという下心もあったんですが、、何より3年間集中して取材してきたものをアウトプットしようと、2002年頃からブログを始めました。程なく人気ブログになって、編集部の人から単行本の話をいただき、ファイル交換や音楽業界の本を立て続けに2冊出版、講演依頼なども来るようになったのでIT音楽ジャーナリストを名乗って活動するようになりました」

—今回の本は牧村憲一さんとの共著で、対談と文章を交えた特殊な構成ですね。

「僕は音楽の未来を書いたけど、それだけではたぶん重みが出ない。日本最初のフリー音楽プロデューサーという牧村さんが、音楽業界の歴史があった上で、同じことを繰り返しているんだと言ってくれているおかげで、結果的にさまざまなもの、過去と現在と未来がつながる本になりました。

ネットなど周辺環境の変化によって音楽業界が厳しくなり、すべてがデジタル化していく中で、アーティストは直接好きなファン層に売ってしまえばいいという安易な議論になりがちだけど、中間業者、ミドルマンはやはり必要だというものです。ただ、いままでの中間業者とは役割が変わる、一人になるかもしれないという、新しいミドルマン論がこの本のテーマです」

—これからの音楽業界をどのように見ておられますか?

「いままで新しい音楽業界の可能性を考えようという人は坂本龍一さんや佐野元春さんなど既にエスタブリッシュされた人しかいませんでした。中堅や新人の人はそんなことを考える余裕もなく音楽業界の構造の中で翻弄されてきました。それがようやく直販で売るまつきあゆむ君みたいなボトムアップの成功例が出てきました。

広瀬香美さんもある種一般の人からは表舞台から去ったようなイメージがありましたけど、Twitterを通じて再ブレイクしたのはとてもよかったと思っています。いまはそういう人がどんどん表舞台に立っていけるチャンスに満ちた時代。僕が本の中で一番いいたかったのは『これからはいい時代になりますよ。お金は重要ですが、お金しか考えられない人は退場せざるを得ない。逆に言うと、音楽がおいしいビジネスではなくなる』という一節。著作権を握るだけで何億も生み出していたようなビジネスはもう成り立たないでしょう。その代わりいろいろなおもしろい試みが出てくると思っています」

【取材・文=鳴川和代】

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