8月16日(金)公開の映画『イソップの思うツボ』は、昨年大ヒットした『カメラを止めるな!』のクリエイター(監督:上田慎一郎、助監督:中泉裕矢、スチール担当:浅沼直也)が再集結して、3人共同で監督・脚本を務めた夏の話題作。そんな予測不能のオリジナルムービーで、主演に抜擢された石川瑠華さんに、物語や役柄、撮影中のエピソードについて、お話を聞かせていただきました。
爆弾みたいな映画。皆さんに観てもらうまではドキドキです
――『カメラを止めるな』のクリエイターによる次回作ということで、その前評判は大きいと思いますが、出演が決まった時の気持ちを教えてください。
【石川瑠華】トリプル監督ということで、それがすごく新鮮で、新しいことだなと思いました。その主演を務めさせていただけるのは本当にうれしかったです。
実は、演じた亀田美羽(かめだみわ)という人物については、オーディションの段階では“地味な大学生”というくらいの情報しかなくて。なので、役が決まって台本をもらった時にはぶわっとイメージが広がって、「この役を自分ができるんだ、うれしいな」と思いました。
――『イソップの思うツボ』は、ひと言で言うとどんな映画でしょうか。
【石川瑠華】“爆弾みたいな映画だ”と思います。この作品のなかで描かれている決断や結末が、良いのか、それとも悪いのか、それは観た人にゆだねる… みたいな映画です。たぶん、つくった人たちにもわからなくて、3人の監督で、3人の演出で、いびつな作品だと思いますし、新しい試みですし、皆さんに映画を観てもらうまではドキドキです。
――ポスターなどのイメージ写真や文言だけでは、どんな作品なのか掴みにくい映画だと思いました。
【石川瑠華】はい。ポスターのメインビジュアルが着ぐるみですしね(笑)。ネタバレになってしまうので、あまり詳しくお話できないのが歯がゆいです。
――演じられた主人公・亀田美羽と、石川瑠華さんとの共通点はありましたか?
【石川瑠華】亀田美羽は地味な娘で、私も派手なことをあまり好んでしないので、地味な方だと思います。美羽は、本当に自信がなくて弱い子です。でも、作中でどうしようもない状況になっても逃げなかったので、弱くもあり、強い娘ですね。
――観ていると、人間関係の“どんでん返し”や“裏切り”も多い作品だと感じました。演じる上ではいかがでしたか?
【石川瑠華】とても難しかったです。違和感なく、映画を観ている人たちに“勘違い”してもらわなくちゃいけないということで、気を付けて演技をしていました。
観る時の気持ちによっても、感情移入の仕方が違ってくる映画かもしれません
――共演者の方たちの印象はいかがでしたでしょうか。
【石川瑠華】渡辺真起子さんは、あれだけ強く母親像を残せるのはすごいなぁと思いました。初めてお会いした次の日が撮影で、その後は別の出演者とのシーンに移行していったので、実質お会いしていたのは2日くらいしかなかったのですが、撮影が終わるまで、ずっと真起子さんのことが頭にあって。真起子さんのおかげで“亀田美羽という人間”ができていたんだと思います。
――ロケは、どちらで行われたのですか?
【石川瑠華】クライマックスのシーンは群馬で、ホテルなどの室内は東京で撮影しました。
――石川瑠華さんの思う、映画の見どころを教えてください。
【石川瑠華】ポスターにも登場する3人の女の子、それぞれに家族がいるんですけど、私は3回目に観た時に、作中では全然絡まなかった家族にすごく惹かれてしまって。あぁ、こういう家族もあるんだなって。観る時の気持ちによっても、感情移入をする家族が違ってくるのかもしれないので、それが見どころです。
それと、“究極の選択”みたいなものを迫られるシーンがあるのですが、そのシーンを見た知人から「自分だったらどんな選択をしたか、すごく考えちゃったよ」と言われたり、別のある人からは“私には思いつかない考え方”を感想で言われたり、いろんな見方がある映画だなぁと思いました。
――映画を観る方に、こう観てほしいという観方があれば教えてください。
【石川瑠華】これは上田監督もおっしゃっていたのですが、いったん "カメ止め" を置いてたのしみに観に来てほしいです。難しいかもしれませんが、フラットに観てほしいなって思います。
――映画の構想自体は“カメ止め”以前からあったとも聞いています。
【石川瑠華】そうなんですよね。でも、『イソップの思うツボ』は3人の監督さんがいて、皆さん“強くて”“曲げない”方たちなので、最後までどうつくるのかが固まらなかったのかもしれません(笑)。私も最近知ったのですが、ある期日までにまとまらなかったら、企画が白紙に戻ってしまうくらいギリギリだったみたいです。
――期日があったから、結果的に映画が完成したんですね。
【石川瑠華】まとまらざるを得なかったんでしょうね(笑)。
私は私で、ほかの人と同じものは持っていないと思います
――石川瑠華さんは、この後も続々と映画の出演作(2019年 劇場公開「左様なら」、同「闇國」、2020年公開予定「猿楽町で会いましょう」 ほか)が控えていますね。読者の皆さんも、注目の石川瑠華さんの魅力を知りたいと思っています。
【石川瑠華】出演が次々と決まっているのはなぜなんでしょうね。私には何もないのでそんなに期待はしないでもらいたいです(笑)。ただ私も含めて皆さんもそうですが、私は私で、ほかの人と同じものは持っていないと思いますので、ほかの女優さんと自分を比較はしていないかもしれません。私が主演を務めさせていただくからには、絶対にそれがプラスになるような作品にしたいですし、自分の魅力はわかりませんが、自分なりにできればと思っています。
――オーディションで話される(石川瑠華さんの人となりを表すような)エピソードはあるのでしょうか?
【石川瑠華】私、オーディションで自分のことを話したり、伝えたりすることはほとんどないんです。それを、あまり大切だとも思っていなくて、私というよりは役のままでオーディションには臨んでいます。役のなかに、私の色が出てきてしまうのが嫌なんです。私よりも、役を見てほしいって。
――ということは、パッと切り替えのスイッチが入るタイプということでしょうか。
【石川瑠華】いや違います。パッとスイッチが入らないので、オーディション前には一度カフェなどに入って、イメージに近い音楽を聞いて感情のスイッチを入れています。
――試合前に集中力を高めるスポーツ選手みたいですね。
【石川瑠華】そうなんですよ! 映画って、音楽とすごいつながると思っていて、音楽でスイッチを入れているんです。こういう何気ない普段の自分の行動の意味もわかって、インタビューって自分自身を改めて知ることができておもしろいですね。
――最後に、今後に向けて、演じてみたい役があれば教えていただきたい… とも思ったのですが、『イソップの思うツボ』のなかだけでも、かなり色々な役を演じられていましたね。
【石川瑠華】本当にありがたい映画でした(笑)。設定も演出も、どんどん切り替わっていくので。今後は“映画だからこそ演じられる”みたいな役を演じてみたいです。最近、映画館に行って思ったのは、作品に深く入って何かを感じたいという人もいれば、もっとラフに映画館を訪れて、純粋に娯楽を楽しみたいという人もたくさんいるのだということ。そんなラフで、少しぶっとんだ役にも挑戦してみたいです。
撮影=石塚雅人 取材・文=千葉由知(ribelo visualworks) ヘアメイク=七絵 スタイリスト=小宮山芽以
ウォーカープラス/野木原晃一