東武動物公園(埼玉県宮代町)のコースターアトラクション「レジーナ」が、2019年8月9日(金)をもって営業を終了する。世界初の水上木製コースターとして2000年に登場以来、同園の看板アトラクションとして人気を集めた。突然の営業終了にファンからは惜別の声が上がり、SNS上でも多くの反響が寄せられている。名物コースターとして19年間愛されたレジーナを振り返る。
2000年3月にオープンしたレジーナ。全長1334メートル、最高部37メートルのコースを支えるのは、ボルトとレール以外全て木でできた骨組みだ。木製独特の横揺れやきしみ、木組みの中を走り抜ける臨場感が、時速90kmという数字以上のスリルを演出した。また、イタリア語で「女王(regina)」を意味するその名の通り、水上にそびえるレジーナの外観を女性が横たわった姿になぞらえたTVCMが放映されるなど、コースが持つ独特の造形美も魅力の1つだった。
「世界初の水上木製コースター」誕生のきっかけは、東武動物公園の立地に由来する。東武動物公園の周辺にはかつて笠原沼という沼があり、園内にはその沼に由来する広い水辺が多く存在する。現在レジーナが位置する場所も以前はボート池として使われており、新コースター建造の際、スリルや美しさを演出するために豊富な水辺を活かしたという。レジーナに限らず、現在営業中のコースター「カワセミ」や、「マウントロッキーコースター」(現存せず)も水上に建てられており、水上コースターは東武動物公園の伝統とも言える。
当時、唯一無二のコースターとして鳴り物入りでデビューしたレジーナは、初年に約55万人が乗車する大ヒットを記録。以来19年間で延べ380万人が乗車した。東武動物公園のテーマソングにもレジーナの名前が登場するなど、名実ともに同園を代表する人気アトラクションの地位を確立。コース上にある照明を落とし真っ暗なコースを走行する「暗黒レジーナ」「ホラー・ザ・レジーナ」などの期間限定イベントも人気を集めた。
だが、今年7月1日からの定期点検の結果、車両の経年劣化が判明。安全を優先し、点検終了日の8月9日に営業を終了することを発表した。点検後の営業はないため、2019年6月30日が事実上のラストランとなった。同園の公式Twitterアカウントでの営業終了告知のツイートは1万3000件以上リツイートされ、「大好きでした」、「木製コースターの美しさに惚れ惚れ」、「最後にもう一度乗りたかった」と営業終了を惜しむツイートが多く寄せられた。
SNS上では車両の入れ替えての営業継続を望む声も聞かれたが、東武動物公園の担当者は「コース自体には問題はないのですが、コースターに予備車両がなく、新規調達にはかなりの時間や費用がかかってしまうため今回の決定となりました」と、営業終了の理由を話す。プレスリリースにも「突然のお別れとなってしまいましたが、これまでご利用いただいたお客様に感謝いたします。」とあり、同園としても断腸の思いでの選択だったことがうかがえる。
日本の木製コースターでは、2018年にナガシマスパーランドの「ホワイトサイクロン」が営業を終了。跡地には「ホワイトサイクロン」の木材の一部を活用したスチール材とのハイブリッドコースター「白鯨」がオープンした例がある。東武動物公園では今後、レジーナに代わる新コースターの導入を検討していくとするが、レジーナの解体、あるいは構造物の活用については未定だという。
全国に数ある絶叫アトラクションの中でも、独自の存在感で来場者に愛されたレジーナ。平成を代表するコースターが惜しまれながらその役目を終えた。
国分洋平