流されやすい私は、光とは逆。
就職活動にもスパートがかかる秋。日本では珍しい“ビジネスをテーマにした青春映画”「スタートアップ・ガールズ」が9月6日(金)から公開される。上白石萌音と山崎紘菜がW主演を務めるこの作品は“スタートアップ”=新規事業の立ち上げを描く。
今回は上白石にインタビュー。上白石が演じるのは、大学生のうちから天才的なひらめきと頭脳を生かして新しいビジネスでの起業を目指す小松光。山崎演じる生真面目な大手起業の新米社員・南堀希と組んで、共に紆余曲折しながら新規事業を立ち上げていく…。
――髪をメッシュに染めて、過激なファッションで学内を闊歩する自由人・光をとてもリアルに演じていました。映画が出来上がっての感想は?
山崎紘菜ちゃんとはオーディション当時からの同士で、支え合って助け合ってやってきた間柄なんです。だから、本当に今回の共演は嬉しくて。この二人だからこそ、映画の中に出てくるバチバチ言い合うお芝居も遠慮なくできたんです。
――今回演じた光という役柄は、ご自身から見るとどんな子ですか?
光って傍から見たら破天荒で傲慢で、何を考えているか分からない。でも、根っこはやりたいことがすごく明確で。そのために他を排除しているだけなんですよね。やりたくないことは絶対やらない、信用してない人とは絶対組まない、シンプルな子だなと思って。最初は、口も態度も悪いので理解するまでに時間がかかったけれど、そこに気づけてからはバーッと役がつかめて…。「あの人、やりたいようにやってるな」って見える人って、その人自身がやりたいことを自分の思うままに追い求めている人なんですよね。
――光の自由な生き方を演じたことで、自分自身がプラスの影響を受けましたか?
私自身はすごく流されやすいタイプなので、光みたいな一途さって素敵なことだなって思いました。私は、みんなに賛成して生きてるようなタイプなんです(笑)。だから、絶対に譲りませんという核となるものを持っていることは、すごく魅力的だなと思いました。彼女のように生きられたら、きっと充実しているんじゃないかな。
――光がものを考えている時に小刻みにふるえていたり、リアルなお芝居に引き込まれました。
ありがとうございます! でも、光の立ち上げようとしている新規事業の世界がITと医療だったので、意味の分からない言葉が多くて。たくさん資料を読みました。起業家さんにインタビューもたくさんしましたね。百戦錬磨のこなれた感じは出したくて、黒板に書いてプレゼンする練習も何回もして…。脚立を駆使して、登ったり降りたり。監督からは「なるべくチョロチョロしてください」って言われていたんです。だから、“しゃべっていなくてもうるさい”を目指しました(笑)。
――成長物語としても爽やかで素敵でした。今は女性もみんな働いているので、共感してもらえそう。
きっと皆さん、常識的な希ちゃんのほうに思いを寄せると思うんですけど、希ちゃんも光に振り回されながらも「自分は何をしたいんだろうな?」っていうことをすごく忠実に考えている女性なので。見てくださる方にとっても何かしらの後押しになったらいいなって思います。
最近はどんどん自我が薄れてきて…
――働くことに前向きになれる映画ですね。ご自身は中学1年生でオーディションに受かって、そこからずっと女優として働いていますが、幼いころと比べてご自身のプロ意識に変化はありますか?
どんどん自我が薄れている感じがあるんです。最初は「目立ちたい」という気持ちもありましたし「撮られてうれしい」とか「セリフがいっぱいある」とか、そういうことが喜びだったんですけど、最近はどんどんそれが薄れてきていて…。それよりも「作品の中でどういたらいいのかな?」とか「監督は何を求めているのかな?」とか、「この作品がちょっとでも良くなるために私はどうすればいいのかな」っていうほうにベクトルが向いてきました。個人から集団へ目が向いたというか。音楽でも、歌う時に「ここでこういう楽器が鳴っていて、ここでちょっとフォルテになっていくからこういう声で歌おう」とか。そういうことは少しずつ考えられるようになってきたかなって思います。
――自分個人のことではなく、全体の調和を考えるようになった?
そう言うとなんか大御所みたいですけど(笑)。周りを見なきゃって思い始めていますね。今までは自分のことでいっぱいいっぱいで「私、どうしよう!」ってなっていたんですが、ちょっと落ち着いて見渡そうっていう意識を持ち始めました。
――経験を積んだ分、余裕ができた?
どうなんでしょう。自分としては、他の作品を見ていて、そういう風に立ち振る舞っていらっしゃる方に惹かれるというか。私自身も主役と脇役のどちらも経験したことによって、見え方が変わったというところもありますね。それに、先輩方のそういう姿もたくさん見ているので。「どういう風にいたら現場が明るくなるんだろう」とか「ピンと張り詰めた空気をどうやったら弛緩できるんだろう」とか。そのやり方を先輩たちが間近で見せてくださるので、「私もこうなりたい」って思い始めたというのが一番大きいですね。
――ご自身は、ちょうど大学4年生。同級生は就職活動中で、自分だけじゃなく社会のことも目に入ってくる年齢ですよね。そういう環境の変化がご自身を大人にしてくれるということもあるのでは?
ありますね。最近、「あ!」って思ったんですが、同い年のスタッフさんが増えてきたんです。今まではみんな年上だったのに、もはや年下のスタッフさんもいたりして。それを感じた時にここまできたか!って思ってうれしくなりました。同世代のスタッフさんが頑張っている姿を見ると、私も頑張ろうって思いますから。ようやく同じ目線のスタッフさんができた、分かち合える人が現れてくれたなって思います。私自身は社会人と学生の二足のわらじでしたが、卒業後には学校の友達ともきっと、ちょっとずつ同じ目線で話ができるようになってくるんだろうなって思うとうれしいですね。「仕事って辛いね」とか、飲みながら話せるようになれたらいいですね(笑)。
映画「スタートアップ・ガールズ」9月6日(金)公開
日本初の“スタートアップ”をテーマにした映画。大学生にして起業を目指すひらめき型の自由人・小松光(上白石萌音)と、大企業に務めるキャリア志向の女性社員・南堀希(山崎紘菜)。正反対の二人はIT×在宅医療の新サービスを立ち上げるため、ビジネスパートナーに。だが、ぶつかり合ってばかりで、計画も頓挫の危機を迎えてしまう。
●上白石萌音(かみしらいし・もね)プロフィール
1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年の大河ドラマ「江 〜姫たちの戦国~」でデビュー。2016年にはヒロインの声を演じたアニメ映画「君の名は。」が大ヒットを記録した。10/6から舞台「組曲虐殺」に出演。
取材・文=本嶋るりこ/撮影=中川容邦/スタイリスト=嶋岡隆(Office Shimarl)/ヘアメイク=冨永朋子(アルール) ©「就職ウォーカー」
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