地ビール工場を併設した和食料理店「和食 たちばな 道頓堀大阪松竹座」

東京ウォーカー(全国版)

大阪・道頓堀は、歴史ある歌舞伎劇場・大阪松竹座の地下に“道頓堀ビール”なるクラフトビールを製造する店がある。通りにはたくさんの巨大看板がひしめき、国内外問わず多くの観光客でにぎわうこの街の中心で、まさか地ビールを作っているとは思いもよらないだろう。

店内に道頓堀ビールの工場を併設する。歌舞伎公演の幕間や前後に来る客も多い


従来、味の濃い料理とともに供されてきたビールだが、ここは刺身やしゃぶしゃぶ、鶏料理など、れっきとした和食を提供する和食店。なぜ、地ビールと和食が共存しえたのか、地ビールの誕生秘話、徹底的に選び抜かれた食材で作る料理へのこだわりについて、話を聞いた。

なんばの中心で作られてきた“道頓堀ビール”


定番はフルーティーな大阪ケルシュ(写真中央)、軽やかな苦みが魚料理と合うなルビー色の大阪アルト(同右)、濃厚で深い味わいの黒ビール・大阪ポーター(同左)の3種


「和食 たちばな 道頓堀 大阪松竹座」を経営するのは、大阪・神戸を中心に関西で40店舗の飲食店を展開する立花エンターテインメント・ワン株式会社。発祥が大阪市内の鮮魚店ということもあり、独自のルートで新鮮な魚や野菜が手に入るのだという。

地ビールを作り始めたのは1996年。世の中は、地ビールブーム真っ只中で、近隣の神戸や京都でも、次々と地ビールを作るブルワリーが産声を上げていた。このような風潮の中、大阪でいち早く地ビールを作り始めたのが「道頓堀麦酒醸造所」だった。

コンセプトは “和食と相性のいいビール”と、いたってシンプル。そこで設立されたのが、「道頓堀麦酒醸造所」(道頓堀ビール工場)だ。大阪松竹座の建物が改築されるタイミングで、地下の店舗に大きなタンクを設置し、道頓堀の地下での地ビールづくりがスタートした。

麦芽100%で麦の味はしっかり残しつつ、自然発酵による炭酸ガスだけを使用。ゆえに、のどごしが優しく、だしの効いた和食とも相性抜群


「たちばなで提供しているのは、刺身や豆腐、天ぷらなど上品な味わいの和食。料理のおいしさを消さないよう、主張が強すぎてもいけない。軽めでかつ、口当たりのいいビールの開発に奔走しました」と、「道頓堀麦酒醸造所」で長年ブルーワーを務める高宮敦さん。

道頓堀ビールを提供するのは店舗のみで、小売販売は一切していない。絶えず発酵しているため、1週間ほど経つと白濁してしまうという。そのため、常に発酵状態を見ながら、温度の調整が必要になる。手間はかかるが、フレッシュ感を保つには欠かせない作業だ。髙宮さんは「季節ごとにホップの量を調整して、夏はさっぱりした味わいにしたり、冬はアルコール度数を上げたりと、同じビールでも飽きずに飲んでもらえるように工夫しています」と話す。また、定期的にビールイベントを主催し、お客さんの生の声を聞くことも忘れない。ほかのブルワリーとの交流も活発に行っており、「大阪の地ビールをもっと盛り上げていきたい」と語ってくれた。

全国各地から仕入れる新鮮な素材を贅沢に


料理は徹底的に素材にこだわるのが「和食 たちばな」流。大阪市中央卸売市場から仕入れる海鮮は、とにかく新鮮。刺身はもちろん、握りたての寿司や、海鮮鍋も好評だ。

大阪中央卸売市場で仕入れた旬の魚は、「お刺身五品盛り」2300円で


鮮魚のほかに、A4・A5クラスの黒毛和牛を使用した、しゃぶしゃぶも名物。産地にこだわらず、そのとき一番おいしい牛を仕入れて提供する。「季節の素材をふんだんに使った料理は、老若男女問わず好評です。松竹座の地下にあるので、幕間のお料理や弁当も提供しているんですよ」と店長の楠部貴史さん。「生樽のできたて地ビールと一緒に、たくさんのお客さんに楽しんでもらっています」。

自家製で作りたてを提供する「ざる豆腐」490円は、濃い旨みが魅力


海鮮料理のほか、人気なのが店内で仕込む天然にがりの「手づくり豆腐」だ。創業当時から提供し続けるこの豆腐は、鳥取の雨滝の水と、鳥取県産大豆サチユタカで作る。圧力をかけず、自然に水気を切る生絞り製法で作るため、旨みが凝縮した濃厚な味わいが特徴。これもまた、ビールと相性抜群というから驚きだ。

テーブル席や座敷席のほか、個室も用意。「さまざまなシチュエーションで使っていただければ」と楠部さん


楠部さんは「松竹座に来られたお客さんはもちろん、ちょっと一杯ビールを飲みたいというお客さんにも気軽に立ち寄ってほしいですね。和食とビールの意外なマリアージュを堪能していただければ」と朗らかに話してくれた。

※和食 たちばな 道頓堀大阪松竹座はAmexとJCBの地元を応援するプログラム「SHOP LOCAL」参加店です

【構成=CRAING/取材・文=高島夢子(エディットプラス)/撮影=鈴木誠一/ウォーカープラス編集部】

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