NHKの朝ドラは現在「スカーレット」が好評放送中だが、早くも来年後期の作品にも注目が集まりそうだ。10月30日午前、大阪市中央区のNHK大阪放送局で、2020年度後期連続テレビ小説の制作とヒロインが発表された。
制作統括の櫻井壮一CPから発表されたタイトルは「おちょやん」。「おちょやん」とは「おちょぼさん」がなまった大阪言葉で、茶屋や料亭などで働く小さい女中さんを意味する。大正から昭和の大阪・道頓堀を舞台に、芝居茶屋の女中から松竹新喜劇の前身の松竹家庭劇に参加し、2代目渋谷天外の妻となって喜劇女優としての道を歩む浪花千栄子をモデルにしつつ、大胆に再構成したフィクションとして届ける。浪花千栄子をモデルにした理由について櫻井CPは「NHKのアーカイブスにある浪花千栄子さんのラジオドラマを聞いて、とても温かい気持ちになって関心を持ったのがきっかけ」という。
脚本はNHKでは「1942年のプレイボール」「ミス・ジコチョー天才・天ノ教授の調査ファイル」などのドラマを手がけたほか、TBSの「半沢直樹」「陸王」「下町ロケット」などのヒット作を担当している八津弘幸。八津は「大変名誉なことになりまして、本当にありがとうございます」と感謝を述べる一方で「正直今の心境は恐怖しかない。NHKの朝ドラをやるプレッシャーを感じていて、ほかの方が入院したとか、7キロやせたとかも聞いている。やせるのはいいけどプレッシャーと戦うことになりそう」と正直な感想を吐露した。その一方で「王道中の王道の朝ドラになると思いますが、その一方で僕なりの遊び心、進化した朝ドラをお届けできたら」と意欲を燃やしていた。
ヒロインの竹井千代を演じるのは現在大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」に出演中で、連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でヒロインの妹役を演じたこともある若手実力派の杉咲花。櫻井CPは「女優の話なので、ヒロインの演技力が大事になってくる。大正から昭和の長い期間を描くにふさわしい人を選んだ。演技力のすばらしさはいうまでもないが、チャーミングで力強い点も決め手となり、8月にオファーした」と杉咲の起用理由を語る。
杉咲は「みんなの大事な朝の15分を明るくパワーあるものにできるよう、一生懸命頑張ります」と長丁場に臨む決意を語る。モデルの浪花千栄子については「自伝を読んだり、出演したラジオドラマを聞いたりしているが、覚悟を感じる人。波瀾万丈な人生だがそれを前向きにとらえている。勇気や元気をもらえるヒロインを演じたい」と話す。
「おちょやん」は4Kで制作され、来年秋の放送予定。
鳴川和代